マガ9備忘録

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沖縄の劇団「チーム・スポット・ジャンブル」と、「劇団スーパー・エキセントリック・シアター」がコラボした舞台『SELECT!』(脚本:榎本由紀、演出:八木橋修)が3月18、19日の両日、座・高円寺2で上演され、全公演満席の盛況だった(3月11、12日は沖縄市民小劇場あしびなーで上演)。

コザ暴動を背景にしたこの芝居を、筆者は2011年に沖縄・南城市のシュガーホールで観て、深い感銘を受けたことを思い出す。それから6年たってどう変容したかも興味深かった。

ロビーには、元沖縄タイムスの大城弘明さん、元琉球新報の山城博明さんが撮影したコザ暴動などの写真が展示され、当時を振り返ることができた。

現代に無気力に生きる青年翔吉(末吉功治さん)は、何をしたって変わらないという諦観が心を支配している。精霊(島袋寛之さん、小渡俊彰さん)によってタイムスリップした彼は、日本復帰前、1970年のコザ(現沖縄市)に暮らす大城家の人々らに出会うことで少しずつ変わっていく。

大城家は、ラジオDJの幸太郎(津波信一さん)、復帰運動に熱心な大学生の一春(与那嶺圭一さん)、ちょっと頭の弱い信平(比嘉恭平さん)、おしゃれに敏感な末っ子の舞美(宝眞榮日也美さん)の4きょうだい。懸命に暮らす彼らの周りでも、復帰を前に米軍がらみのさまざまな事件が起こる。

ある日、信平が“拾ってきた”晴子(ナツコさん)に幸太郎は一目惚れ。しかし晴子は心を閉ざしたまま。その原因も米兵からの仕打ちだった。頻発する事件や事故。その鬱屈がある日…。

当時のラジオ音声や写真などが効果的に挿入され、暴動にいたるまでの臨場感を高める。本来ならば鎮圧しなくてはならない琉球警察官(蔵元利貴さん)の「もっとやれ!」という叫びは、まさにその鬱屈からのものだったのだろう。

シリアスな題材だが、軍雇用員下地(村山靖さん)の宮古島方言などの笑いや、音楽に乗ってのストンプなどを織り交ぜ、エンターテインメント性も充分だ。

最後に沖縄の人々が選択(=セレクト)する未来に「期待」しつつ劇は終わる。しかし、自身が選択しても拒否される、その繰り返しがずっと続いている沖縄。復帰前というよりさらに射程の長い近代の沖縄が置かれた境遇を思い、涙が止まらなかった。

6年前よりも筋が整理され、メッセージ性が強くなっていたように感じたのは、この6年間での沖縄をめぐる情勢の変化によるものと考えるのは穿ち過ぎだろうか。

「暴動」とは言っても略奪もなく、アフタートークの志ぃさー(藤木勇人)さんによれば、沿道に被害が及ばないよう道の真ん中まで移動させて車を焼いたそうで、虐げられていた黒人兵への配慮もあったという。非暴力を貫く沖縄の抵抗の姿をそこに見る。

私が観た18日、約5カ月にわたって勾留されていた山城博治・沖縄平和運動センター議長が保釈された。

(中津十三)

 

  

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