マガ9備忘録

2025年万国博覧会(万博)の大阪誘致に向けて、政府が立候補の検討に入ったというニュースを聞いて、一瞬耳を疑った。果たして今は21世紀なのだろうかと。

そもそもこの構想は、大阪府・市特別顧問の堺屋太一氏が一昨年に主張したもの。堺屋氏が通産官僚時代に1970年大阪万博の企画や実施に携わったことは有名だ。夢よもう一度、ということだろうか。

この発想の貧困さは、まるで1964年東京オリンピック、東海道新幹線(1964年開通)、大阪万博で胸躍らせた子どもが老人となり、それを再現しようとしているようだ。いつまで高度経済成長の夢にしがみつこうとしているのか。

しかし、この計画を見ていくと妙なことに気づく。堺屋氏は1970年の会場である吹田市の万博記念公園での開催を掲げたが、府が作成した基本構想素案によれば、いつの間にやら大阪湾岸部の人工島「夢洲(ゆめしま)」での開催となっている。

ここは大阪への2008年オリンピック誘致を目的に先行して造られた埋立地。埋め立ては現在も進行中で、完了すれば390haにもなる広大さだ。しかし同年のオリンピック誘致を目指していた北京に敗れて、その使い道は迷走している。

持ち上がっているのがカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致。大阪維新の会など維新勢力はカジノを推進したい考えだが、これだけではイメージが悪いと、万博を後付けで押し込んだのだろうか。

維新勢力が推す万博構想を政府が後押しすることで、憲法改定への協力を得やすくする安倍政権の目論見も見え隠れする。

オリンピック後はどの国でも経済の後退や停滞が見られるので、2020年東京大会の5年後、さらに大イベントを開く…まるでカンフル剤を打ち続けているようだ。福島や沖縄を覆い隠す「サーカス」としての“効果”も計算しているに違いない。

早くも経済効果がどうこうという観測気球も飛び始めたが、ノスタルジーに塗れた「空疎な祭り」の果てにあるものは一体…。

(中津十三)

 

  

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