朝日新聞の「voice1819」は、先日の参議院議員選挙から導入された18歳選挙権をきっかけに、若者に政治、選挙、そして私たちの社会について考えてもらおうという企画だったようだ。「ようだ」としたのは、この企画のツイッターアカウントが多数の匿名デマをリツイートして批判が殺到するという大失態を演じたからだ。
8月16日、ツイッターアカウント「朝日新聞x18歳19歳(@asahi1819)」はSEALDs解散について意見を募集していたが、翌17日、次のようにツイートした。
これに対し、ツイートやDM(ダイレクトメール)が寄せられ、そのままリツイートやコピペ(コピー・アンド・ペースト)してツイートしたものだから、SEALDsに対するデマや誹謗中傷、流言が、このアカウントから発信されることになったのだ。
8月18日のツイート。
#SEALDs解散 意見募集について 「若者たちとの対話」をきっかけに始めたアカウントでもあり、 同世代の活動として賛否の声を偏りなく、広く紹介してきたつもりです しかし、それが逆に批判につながってしまいました
#SEALDs解散 意見募集について 今の状態では建設的な議論を提供する「場」を維持するには難しく 一度、意見のRTを停止し、方法を見直します これまでご意見を投じていただいたみなさま 関心を寄せていただいたみなさま ありがとうございました
「方法を見直し」たところで、何が問題なのか分かっていないこのアカウントにはさらに抗議が殺到した。
8月19日にはお詫びのツイートがなされた。
#SEALDs解散 お詫び致します 今回の企画をめぐり、多くのご批判をいただきました。 企画は、8月15日にSEALDsが解散することから、SEALDsの活動を同世代の若者たちはどのように受け止めたのか、ツイッター上で意見を募ろうと始めました。
これまでも別のテーマで意見を募っており、その延長線上のつもりでした。 多様な意見に耳を傾けようと、ツイッター上に議論の「場」をつくるのが目的でした。
全てがオープンになる場所で、あえて評価を加えず、編集をせず、寄せられた意見をリツイートするのが望ましいと考えました。DMの転載は、「政治的なことを発言しづらい」という意見があったためです。
「若者たちとの対話」を目指して始めたアカウントでもあり、 同世代の活動をどう見るのかを、幅広く紹介するつもりが、逆に配慮を欠くことになってしまいました。企画を中止するとともに、関係者のみなさんを傷つけ、 不愉快な思いをさせたことを心からお詫び致します。
「(SEALDsと)同世代の活動として賛否の声を偏りなく、広く紹介してきたつもりです」「全てがオープンになる場所で、あえて評価を加えず、編集をせず、寄せられた意見をリツイートするのが望ましいと考えました」という言い訳も片腹痛い。
その投稿者が実際に対象としていた年齢であるかは分からないのがツイッターだ。さらに、その内容に検証を加えず意見を羅列するなら、2ちゃんねるなどの匿名掲示板と同じではないだろうか。ネットリテラシーがないにも程がある。
ネット言論は裏取りをしないものがほとんどで、ゆえにその信憑性への疑問は必ずついて回る。新聞のような既存メディアは、ネットにない「信頼」がある。しかし、今回の失態はその「信頼」を自ら捨て去ってしまったようにしか思えない。
ちなみにこのアカウントはまだ閉鎖されていない。
(中津十三)