マガ9備忘録

5月14日、東京の法政大学ボアソナード・タワー26階スカイホールは、沖縄から訪れた作家・目取真俊さんの講演を聴こうという人でいっぱいだった。

作家の中沢けいさんと精神科医の香山リカさんがつくった「路上で抗議する表現者の会」(講演後に正式発足)が主催し、講演は「辺野古の今を訊く」と題して行なわれた。中沢さんによると、会場を急遽広いスカイホールに変更したそうなので、注目されていたことが分かる。

目取真さんは今年4月1日、海上での抗議活動中に米軍キャンプ・シュワブの制限区域に入ったとして米海兵隊に拘束。その後第11管区海上保安本部に身柄が移されたが、翌日那覇地検が処分保留として釈放した。今回の講演は、その後初めて沖縄県外で行なわれたものだ。

こうした経過の報道も、実は警察発表のみに依拠したもので、実は、抗議中のカヌーメンバーの腕をつかもうとした米軍の警備員に抗議したところ、無理やり引きずられて拘束されたのだという。米軍の警備員は日本人で、目取真さんの本名を呼んだというから、計画的なものだったのではないだろうか。

米軍に拘束中は弁護士の接見すら許されず、治外法権の恐ろしさを身をもって感じたという。目取真さんは、適正な手続きを取っておらず違法な拘束だとして、国に慰謝料などを求め、那覇地裁に提訴している。

抗議活動については、目取真さんが自身で撮影した写真や動画を放映しながらの講演となった。海の美しさと、海保の取り締まりの暴力性のあまりの対照に、くらくらする思いだった。

何の実害がなくともラインを越えれば外国軍に拘束されたり、国家権力による暴力にさらされている状況に対し、目取真さんは「沖縄人は別に反戦運動のために生まれてきたわけではない」と悔しそうに語り、「権力側は逮捕して萎縮させようと思っているようだが、勇気を持ち続け、怯んではいけない。努力を怠ればこれからどうなるか。踏ん張って闘わないといけない」と続けた。

しかし、作家として運動に参加することについては、「作家としてではなく一人の人間として」と規定した後、こう述べた。「文学や芸術はこの世界の複雑さと多様性を表現するためにある。文学と政治が自分の中で共存することに矛盾はないが、政治的な文学を書かないし、文学的な政治もしない。そう自分自身を戒めている」

現場で国家権力と対峙しつづけてきた目取真さんの発言は、文学者としての重大な覚悟が感じられた。

(中津十三)

 

  

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その131)権力と対峙する目取真俊さんが語った
「文学」と「政治」への覚悟
」 に1件のコメント

  1. 多賀恭一 より:

    沖縄で米軍兵による殺人事件が起きた。今後、米軍追放運動が強くなるだろう。
    ここで重要なのは米国債だ。
    米国債が暴落すれば、米国政府は信用維持のため、「日本政府保有の米国債」と「在日米軍基地施設」の交換が必要になる。つまり、沖縄から米軍基地を追い出したいなら、米国債の信用を暴落させれば良いのだ。

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