4月22日、東京・練馬文化センターで、李一河(イ・イルハ)監督『ウルボ 泣き虫ボクシング部』を観てきた。東京朝鮮中高級学校ボクシング部を追ったドキュメンタリー映画だ。
そう聞くと、堅苦しい映画を連想してしまうかもしれない。確かに最初のほうではヘイトスピーチが流れ、不穏な空気が漂う。しかし、清々しくも面白い青春映画と言っていいだろう。
ウルボとは、朝鮮・韓国語で「泣き虫」のこと。勝ったと言っては泣き、負けたと言っては泣き、試合に出られないと言って泣く生徒=ウルボたち。観ている私も泣いた。
実はこの東京朝鮮中高級学校ボクシング部、卒業生にはWBC世界スーパーフライ級チャンピオンの徳山昌守さんもいるほどの強豪だ。しかし、部の空気は温かい。部員の一人は「ボクシングが好き、というよりボクシング部が好きなんです」と話していた。
その生徒たちは実に個性的だ。もちろんひたむきにボクシングに打ち込んでいるのだが、将来の夢を聞くと昆虫博士やチーズ職人など、思わず微笑んでしまう。
しかし彼らの置かれた環境は厳しい。心ないヘイトスピーチに晒され、朝鮮学校の無償化除外問題が立ちはだかる。大学進学するにも、各種学校扱いの朝高生は高等学校卒業程度認定試験を受けなければならない。
チラシに以下の文言が書かれていた。
「彼らも一生懸命に生きています」
「夢があります」
「家族がいます」
「友達がいます」
「あなたと同じように」
そう、頭の中でイメージした「朝鮮学校の生徒」ではなく、私たちの隣にいる多様な人間の一人ひとりとして立ち上がってくる。「在日」として生きる誇りと葛藤を胸に、部活はもちろん、勉強し、家族と話し、友人と交流する高校生として。
ラストシーンで、これまた心揺さぶられたのだが、ここでは言わないでおこう。泣いて、笑って、感動を呼ぶ快作だ。
(中津十三)
※ この作品は、大阪・東成区民センター大ホールで6月18日(土)に上映会が行なわれます。詳しくはこちらのページの「上映案内」をご覧ください。