路上文学賞については、マガジン9でも何度か取り上げたが、このたび「第4回路上文学賞受賞作品集」が編みあがった。54ページの小冊子の、中身は実に濃い。
この賞は、ホームレス状態にある人、またはその経験者が書いた文学作品を対象としている。立ち上げたのは写真家の高松英昭さんと作家の星野智幸さんで、星野さんは賞の選者も務めている。また今回には、クラウドファンディングで協力した人もたくさんいたという。
大賞には、川岸生男さんの「ネコと一人の男と多摩川」が選ばれた。河川敷“多摩川村”に暮らすホームレスの人々の生活を淡々と、そして丁寧に描写している佳編だ。
また、佳作には雀遊さん「春子さん物語」、河野開司さん「東京路上生活マニュアル2 ~マイナンバーをぶっつぶせ~」、コスモポリタン ロッカリアンさん「海外でも ホームレス」、尾崎日菜子さん「蜂蜜の海を泳ぐ」、けんいちさん「無題」の5編が選ばれた。
以上の受賞作品は、路上文学賞のHP上で読むことができるが、印刷されたものとなって読むと、軽い小冊子ではあるが、「持ち重り」を感じさせる。それぞれの作品は10ページ以下であっても、重みがあるのだ。
「“ホームレス”という人がいるわけではない。家をなくした“ホームレス状態の”人がいるだけだ」という言葉がある。いつの間にか「見ないようにしていた」ホームレスの人々の生活。作品を通して彼らの日常を垣間見ることで、生きているひとりの人間として捉えられるだろう。
第3回以前の過去作品集も準備中だそうだ。こちらにも、期待したい。
(中津十三)
※ 作品集はビッグイシュー販売者を通して今月1日から無料でお渡ししていますが、冊数数には限りがあり、また、すべての販売者が作品集を持参しているとは限りませんので、販売者とご相談のうえ、作品集をお受け取りください。