ジュンク堂書店渋谷店でのフェア「自由と民主主義のための必読書50」が「偏っている」などの批判を受け、選びなおされたフェア「今、民主主義について考える49冊」が13日から始まった。
もちろん「選書」はどのように選んでもよいのだが、何より一度始まったフェアを中止して選びなおしたのだから、何が選から漏れ、何が入ったのかを見ると、失望を禁じえない。
“落選”は『SEALDs 民主主義ってこれだ!』(大月書店)、想田和弘『日本人は民主主義を捨てたがっているのか?』(岩波ブックレット)、長谷部恭男『憲法とは何か』(岩波新書)など40冊。ほかカントやプラトン、J・S・ミル、アーレントなど古典的な書も外された。
逆に入ったのは、池上彰、北岡伸一、長谷川三千子、佐伯啓思、京極純一らの著書。保守派の本を入れて「中立」を装ったということだろうが、その内容よりも外部からの圧力によって変更されたという点が何よりも不気味だ。
外された中には、統制された社会を描いたディストピア小説の古典、オーウェル『一九八四年[新訳版]』(ハヤカワepi文庫)もあり、実に暗喩的といえよう。
しかし、心ある書店はこれを早速逆手に取った。大阪・梅田の清風堂書店は、SEALDs選書フェアの棚にこの外された40冊を加えたという。お客からも好評のようだ。
また、今度の日曜日に開催される「東京大行進」に向けた「東京大行進2015のための反差別選書リスト 基本20冊」が、差別と排外主義に加担しない出版関係者の会(BLAR)によって選ばれ、このリストに基づいた選書フェアを展開する書店を募集している。
そもそも、選書フェアを開催する以上、選者の意向で偏るのは当たり前だ。公正無私などできるわけがない。今回ジュンク堂に向けられたような有形無形の圧力によって、「自粛」「忖度」させられた先に行き着くものは何だろうか。
本を選ぶということの根本と、それに対して「偏っている」という批判の無意味さ。書店は、恐れずに「読んでほしい本」を並べ、勇気を持って売ってほしい。そして支持する読者は書店に足を運び、本を買おう。
(中津十三)