東京メトロ銀座線と半蔵門線の三越前駅をつなぐ地下通路で、「地図展2015 首都東京1945」という写真展覧会が開催中だ(11月30日まで、無料)。
地下通路の柱をパネルで覆い、そこに写真や地図の数々が大パノラマとなって展示されている。
この展示は、米国国立公文書館所蔵、米軍撮影の写真が中心。空襲の前にも米軍は偵察機で航空写真を撮影し、それをもとに陸軍地図局(AMS)が地図を作成しているのだが、その精密さにも驚かされる。
日本側は、軍事的な重要施設を偽装して地図に示す「戦時改描」をしており、これが施された地図も展示されているが、何とも虚しい。
1945年、空襲にさらされた後の東京はまさに廃墟だった。空襲前の写真からはさまざまな建物が小さくても確認できる。ここに人々の暮らしがあった。しかし、それは大空襲によって灰燼に帰した。瓦礫の街と化した写真を見つめていると、本当に悲しくなる。
また、ほかに展示されている「建物疎開」や「人々は逃げることを禁止されていた」といったパネルも、実に興味深い。
水島朝穂さんと大前治さんの共著『検証 防空法 空襲下で禁じられた避難』(法律文化社)によれば、空襲は怖くないという情報操作と、隣組を通じた相互監視によって、国民が「逃げたいと思わない」、または「逃げたくても逃げられない」という体制がつくられたという。
自由を奪われ、国策に従うしかなかった時代の恐ろしさが我が身に迫ってくる。
百聞は一見に如かず。70年前の東京で起きたことを追体験できる写真展だ。
(中津十三)
この展覧会に関連した講演会が、八重洲ブックセンター8階ギャラリーで行なわれます(参加費無料・事前登録なし)。
11月19日(木)「地図でたどる太平洋戦争前後の東京」:今尾恵介(日本地図センター客員研究員、地図・地名エッセイスト)
11月20日(金)「米軍の日本空襲をめぐる幾つかの疑問点」:島方洸一(日本地図センター学術長)
11月26日(木)「国土地理院の前身―陸軍参謀本部陸地測量部」:星埜由尚(日本地図センター研究顧問)
時間はすべて、17時から18時までです。詳しくはこちらをご覧ください。