大手書店に行くと、平積みの目立つところに、『高橋源一郎×SEALDs 民主主義ってなんだ?』(河出書房新社)と、『SEALDs 民主主義ってこれだ!』(大月書店)が並べて置いてあることが多い。どちらも売れ行き好調のようだ。
装丁が、前者は白、後者は黒っぽく、タイトルも「なんだ?」「これだ!」とコール&レスポンスのように好対照。しかし内容はともに、SEALDsの活動を通して、民主主義を正面から問うている。
『民主主義ってなんだ?』では、作家高橋源一郎さんとSEALDsのメンバーが対論を重ねていく。高橋さんは、70年安保闘争の自身の経験を語ると同時に若い彼らに問いかける。民主主義とは何であるかを。
民主主義の定義、歴史、立憲主義との関係、そしてその実践。若いSEALDsメンバーが高橋“先生”の講義を受けているように見えるが、この生徒たちがおとなしく聞いているわけもない。そのやりとりは、知的スリルに満ちている。
対して『民主主義ってこれだ!』は、ビジュアルが重視されており、国会前などで行なわれた彼らのスピーチや座談会、各地に広がっていった地方のSEALDsの輪などが、写真とともに掲載されている。
中でもメンバーのツイッター画面がそのまま収録されているページは臨場感に溢れ、デジタルネイティブである彼らが、そのとき何を考え、何を発信していたかを示す象徴的なページに映った。
こちらにも高橋さんが登場し、SEALDs奥田愛基さんと対談しているのだが、強行採決前に収録していたものを没にして行なった新たな対談だという。話題はさまざまに転ぶが、言葉になる以前の「沈黙」についての会話が印象に残る。
その「沈黙」は、『民主主義ってなんだ?』のあとがきでSEALDs牛田悦正さんが書いている「簡単に言葉にはならないもの」と通じる。そして彼は、それこそが「ひょっとして民主主義なんじゃないか」と続けた。
民主主義への思索の内向性と、表現することで獲得した身体性が両立するSEALDsの2冊、どちらも大いに読ませ、読後に元気が湧いてくる好著だ。
(中津十三)