毎週金曜日に行なわれるSEALDs主催の安保法制反対国会前抗議。筆者はできる限り参加しているが、9月4日にスピーチに立った丹下紘希さんの言葉に感銘を受けたので、紹介したい。
丹下さんは1968年生まれの映像作家。ミュージック・プロモーションビデオでは、Mr.Childrenや桑田圭祐、CHEMISTRY、MISIAなどの作品を手がけ、また映像作家集団「NOddIN」(ノディン)で、トルコへの原発輸出に反対する『あなたを心配する手紙』などを発表している。現在ではアニメーション『戦争のつくりかた』を制作中だ。
3・11をきっかけに「NOddIN」を始めたという丹下さん。今までと違う視点を持って生きていきたいと願う「心の集まり」であるという。なるほど、「NIPPON」を天地逆さまにすると「NOddIN」になる。まさに今までと違う視点だ。
さて、この日のスピーチで丹下さんは次のように話し出した。「自分がいつの間にか加害者になってしまうことが怖い」
「戦争はビジネス。一番危ないのは、戦争は皆の仕事を奪うということ。しかも、知らない間にそうなってしまう可能性がある」
「2013年8月、シリアのアサド政権が化学兵器のサリンを用いて自国民を虐殺したとされる。そのとき、ヨーロッパの多くの国がアサド政権への非難を表明したが、そもそものサリンの原材料を売ったのは、そのヨーロッパ諸国だった」
「いくつか中間業者を挟んでいるうちに、自分たちが戦争に加担していることが分からなくなる。実感なく戦争に突入しているという時代。武器製造・輸出のビジネスに間接的に皆が関わりだしたら、もう抜け出せなくなってしまう。生活の糧を得るためだからと、カネに言論を奪われ意思を剥奪されていく」
このくだりを聞いて連想したのは、原発に雁字搦めになっている地域だ。ほかに主たる産業もなく、原発に依存せざるを得ない。先日の九電川内原発再稼働のときも、地元の薩摩川内市民には歓迎の声が少なくなかった。こうした声を伝える記事は、次のように続く。
原発立地で活性化した街の経済は、ひとたび原発が停止すれば大きな打撃を受ける。市は1、2号機の運転停止後の平成24~26年度、緊急経済対策として計約1億2千万円の予算を組んで商業振興を図ったが、街に活気が戻ったのは再稼働に向けた安全対策工事が始まってからだった。(産経新聞8月12日付)
“それ”なしでは立ち行かなくなる地域経済。イヤだと思って声を上げても、強固なシステムに組み込まれた“それ”を終わらせ、なくすのは実に困難だ。
“それ”は原発であったり、基地であったり、そして、戦争でもある。その場合、地域経済でなく、国の経済だ。とすれば、“それ”が始まる前にやめさせなければならない。
国防をヒロイックに語る危険性や、「国」のためではなく「人」のために頑張る政治家についても、熱っぽく語る丹下さんの言葉に、深くうなずいた金曜の夜だった。
(中津十三)
※ 丹下さんのスピーチはこちらで見ることができます。