マガ9備忘録

次の日曜、17日は、大阪市を廃止し、5つの特別区に再編するいわゆる「大阪都構想」の賛否を問う住民投票が行なわれる。この投票結果は、大阪市民にとってはもちろん、日本全体への影響必至だ。

いま「都構想」と書いたが、実はこの表現は正しくない。まるで大阪市が「大阪都」になるかのようだが、5つの特別区に再編するための「特別区設置協定書」に賛成か反対かを問うのが、今回の住民投票である。

これで賛成が多ければ大阪市は解体され、24区は5区に再編、例えば「大阪市北区」などが「大阪府北区」になる。東京特別区のようだが、これについては保坂展人東京都世田谷区長が喝破したように、特別区の権限は市町村以下なのだ。

大阪市の分の税収は府に吸い上げられる。権限も収入も縮小されるとなると、住民サービスの低下は避けられないだろう。推進側は二重行政を専ら批判するが、府と特別区の間に調整組合をつくるため三重行政になってしまう。

府市統合効果は当初4000億円と言われたが、大幅に下がって2700億円の財源が生まれると修正。しかし、都構想を話し合う法定協議会で市大都市局が示した資料によればその効果は1億円であり、逆に特別区に5分割するため600億円かかる。

なぜこのような「都構想」への賛否が拮抗しているのか理解に苦しむが、哲学者の適菜収さんが取材した、推進のためのタウンミーティングの様子を見ると、まるで催眠商法のようだ。マガ9でも中島岳志さんが解剖した橋下徹大阪市長の弁舌テクニックが遺憾なく発揮されている。

そして何より恐れるのは、反対と思いながらも棄権してしまう人が続出してしまうのではないかという点だ。先日のMBS「ちちんぷいぷい」でも、「たぶん行かない」と答えた人のうち、賛成派は4.4%、反対派は47.1%だった。

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確かに「都構想」自体が論外である代物なのだが、そのアホらしさのあまり投票に行かないのは、賛成しているに等しい。この住民投票は投票率がどれだけ低くても、「有効投票数の過半数」によって決まるのだ。

接戦の住民投票をテコ入れするため、橋下市長は安倍政権に接近している。地元の自民党大阪府連が反対しているにもかかわらず、政権はこれを突き放して側面支援する構えだ。これは、安保法制や改憲での協力というバーター取引だとの指摘がなされている。

こうなると今回の住民投票は一自治体の問題にとどまらず、今後の国政にも大きな影響を及ぼすものであると捉えるべきだろう。

ともあれ、「やってみたらいい」で進めたら、後戻りが利かないのが「都構想」だ。大阪市民の良識ある判断を、心から期待する。(中津十三)

 

  

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