10日、東京・渋谷のアップリンクで、映画『レイシストカウンター』(わたなべりんたろう監督)を見てきた。この日は終演後のトークゲストが参議院議員の有田芳生さんということもあってか、ほぼ満席の盛況だった。
映画は、レイシストが行なうヘイトデモに対して、敢然と「NO!」の意思表示をした20人へのインタビューによって構成される。そのどれもが、貴重な証言・発言だ。
2012年8月頃から、在特会のメンバーらが、東京・新大久保のコリアンタウンで「お散歩」と称して、韓流の店に対する嫌がらせと営業妨害を始めた。さらにその翌年1月12日、同じ新大久保でのデモが、本格的なヘイトデモの最初だといわれる。
これらヘイト行動に対して、まず現れたのが「レイシストしばき隊(通称しばき隊、現C.R.A.C=Counter-Racist Action Collective)」である。目的は「お散歩」を阻止すること。2月9日、またも行なわれた新大久保でのデモ後の「お散歩」は、しばき隊によって行く手を遮られた。
このしばき隊を呼びかけたのが、映画での最初のインタビュイー、野間易通さんだ。さらに、次のヘイトデモにプラカードを掲げて抗議したのが木野トシキさん。2人に続き、さまざまな人々が、カウンター行動に出る考えを吐露する。
思いはさまざまだ。K-POP好きな女子高生、社会的正義から立ち上がった人、セクシャル・マイノリティであるLGBT、サッカーの右傾化を憂えるサッカーファン、右翼・保守の立場からヘイトに異議を唱える人、そして在日コリアン…。
一見しただけでは、罵倒しあうレイシストとカウンターの両者を「どっちもどっち」と捉える人もいるだろう。また、実際にヘイトを受ける当事者とそれ以外では違いがある。しかし、ヘイトは差別を煽動することで社会を崩壊させる。言わば、誰もが「当事者」たり得るのだ。
チラシで、東京学芸大学教授の成田喜一郎さんは「多様な人々の存在が描かれることによって、《レイシスト‐傍観者》という短絡的な構図ではなく、《レイシスト》と《傍観者》との間に《カウンター》にかかわる多様な人々が確かに存在するという事実が浮かび上がってきます」と評している。
ラストの、スタッフロールと協力者やクラウドファンディングに応じた人々の名前が流れる中、軽快な音楽に乗って踊る、性も人種も国籍も違う若者の姿に、希望を見る。
映画では、カウンターを「排外主義デモに対して路上で向き合う人たち」と位置づけている。彼らの思いを汲むこの作品は、むしろ「どっちもどっち」と考える人に見てほしい。(中津十三)
※ 渋谷アップリンクでの再上映は、4月25日(土)から5月1日(金)の21時からです(予定)。詳しくはアップリンクのHPをご覧ください。
※ 上記の再上映に使える映画『レイシストカウンター』のチケットを8名の方にプレゼントします。
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(当選の発表は発送をもって代えさせていただきます)