マガ9備忘録

先月20日、京都市上京区の同志社栄光館で行なわれた同志社大学卒業式での大谷實総長の祝辞が話題となっている。

大谷総長は祝辞の中で、「個人主義こそ民主主義、人権主義、平和主義を支える原点である」と語り、自民党改憲案を「これまで明確に否定されてきた全体主義への転換を目指していると言ってよい」と批判した。

個人主義と利己主義が混同され、権利の主張がわがままと受け取られかねない日本で、「個人であれ」と訴える祝辞は、近代社会・近代国家を目指した新島襄が創立した同志社らしいと感心した。

また、25日に和歌山市民会館で行なわれた和歌山大学学位記・修了証書授与式(卒業式)で山本健慈学長(3月末で退任)は、「『学ぶ自由』への抑圧の危惧を強く持つ」「卒業する皆さんには、これから市民として、自らの幸福を追求するとともに、『自由の抑圧』に抗し、民主主義の発展のために尽力して頂きたい」と式辞で語りかけた。

ともに、民主主義、人権、平和、自由、そして個人の尊厳といったものが失われようとしている現状に対する危機感が痛いほど伝わってくる。

ここで思い出すのが、昨年8月、広島・長崎での平和祈念式典における安倍晋三首相のコピペあいさつ。小欄では「コピペあいさつによって式典自体の無意味化、陳腐化を図っていると思わざるを得ない」と評した。

かつて「綸言汗の如し」と言われた政治の言葉は、今や鴻毛より軽い。

○安倍首相「(閣僚の政治献金問題に関して)知らなければ違法行為じゃない」(2月27日、衆議院予算委員会)
○中谷元防衛相「(文官統制規定が入った経緯に関して)その後生まれたわけで当時どういう趣旨かどうかは分かりません」(2月27日、記者会見)
○竹下亘復興相「正直ストロンチウムのことは私はよく分からんのですが、ストロンチウム測定は必要ないと私の答弁書には書いてあります」(4月6日、参議院復興特別委員会)

耐え難いほどの政治の言葉の「軽さ」を横目に、2大学のスピーチを、もう一度読み返したい。(中津十三)

 

  

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その78)政治の言葉の「軽さ」が蔓延する中
発せられた2大学の卒業式スピーチ
」 に1件のコメント

  1. 島 憲治 より:

     素晴らしい大学の卒業スピーチに触れたのは何十年ぶりだろう。「言葉の力」は凄い。前記高齢者であるが涙が出てきた。                                                               両大学の卒業生に申し上げたい。諸君は聞いた以上伝える使命がある。私達は今、望みもしない歴史の分岐点に立たされているのだ。「人は、年を重ねるだけでは老いない。理想や情熱や希望を失ったときに、はじめて老いが来る」。私はこの言葉が好きです。一緒に頑張ろう。 掲載ありがとうございました。

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