一見、思わずたじろいだ。そのくらい迫力のある「DAYS JAPAN」10月号の表紙だ。ワイネムさん、1925年生まれ。かつて日本軍の「慰安婦」だった女性だ。正面をきっと見据えた表情に怒りと悲しみが滲む。
「DAYS JAPAN」2004年の創刊時からずっと編集長を務めてきた広河隆一さんから、公募に応じた丸井春さんに、この号から交代した。2人の年齢差は40歳近くだという。広河さんは10年間も編集長を務めたのか…と感慨が湧いた。
創刊号は衝撃的だった。表紙は、男性に抱きかかえられる少女。微妙にトリミングされているので分かりづらいが、ページをめくった中にはその写真の全体が掲載されている。少女はイラク戦争で米英軍が投下したクラスター爆弾で右足が吹き飛ばされていた。
それから10年。戦火が絶えることはなく、弱者がさらに弱くあることが強いられ、差別や排外主義が大手を振ってのし歩く世界は続く。それでも、「人々の意志が 戦争を止める日が必ず来る」という信念のもと、経営も決して楽ではないだろうが、フォトジャーナリズム月刊誌として発行を続けてきた。
写真は雄弁だ。何万言を費やしても伝わらないことが1枚の写真で通じることがある。表紙に必ず入れられる言葉「1枚の写真が国家を動かすこともある」とはそういうことだろう。
この雑誌は、数々の写真が常に弱いものの視点に立っている。戦争、さまざまな差別、核被害、自然破壊…。そこで虐げられた人々や自然が上げる悲鳴が、聞こえてきそうな写真の数々に目が吸い寄せられる。
広河さんは、東京電力福島第一原発事故で被害を受けた子どもたちの保養施設「球美(くみ)の里」を沖縄・久米島につくり、その理事長も務めている。
核被害から最も守られなければならない子どもの保養施設の建設運営も、広河さんの志の延長線上にあるのだろう。しかし、健康不安があるうえ、社長と編集長を務めながらではあまりにも多忙だ。
この号からの編集長・丸井さんは編集後記でこう書いている。「人間や自然の尊厳が奪われることについて告発すること。DAYS JAPANは、それをジャーナリズムだと考えています。同時に、人間や自然の尊厳を讃えること、それもジャーナリズムだと思っています」
若き新編集長に心からエールを送ろう。(中津十三)