マガ9備忘録

今年も8月がやって来た。カレンダー記事などと揶揄されながらも、「あの戦争」を振り返る記事が新聞には溢れる。しかし、安倍政権の集団的自衛権行使容認の解釈改憲などで、近年にないほどきな臭い8月だ。

先日、『戦争の教室』(月曜社、1800円+税)が出版された。表紙の、子供の軍服姿にどきりとさせられる。1929年の七五三での写真だそうだ。そして、筆者80人が小さな文字で記された背にも驚かされる。

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1900年代生まれから1990年代生まれまで、筆者の生まれた年代順に並べられている。年齢、性別、民族、国籍、職業のさまざまな人が、文章が主だが、ある人は写真で、またある人はイラストで、戦争と平和について論考している。その内容は多種多様で深い。

何らかの形で実際に戦争を経験した人の言葉はさすがに重い。が、それを取材した人や、3・11を戦争に重ね合わせた人など戦争を知らない世代の文章も、それに匹敵するものを感じる。

「おわりに」で、編者のひとりである臺宏士さんはこう書いている。「戦争の世紀と言われた二〇世紀が終わり、二十一世紀に人類が実現を目指したはずの人権と平和の世紀が遠のきかねないという、人々の危機感は小さくない」

だからこそ、みな真摯に考えている。合わない意見もあるだろう。だが、これだけ多くの人々が「戦争」に向き合い、それを一堂に会する形で読むことができる貴重な本だ。

500ページ近いが、それぞれが長くても13ページほどなので、私は座右に置いて少しずつ読んだ。戦争について考えることは、平和について考えることでもある。きな臭いこの夏だからこそ、お勧めしたい。(中津十三)

 

  

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