金融機関のディスクロージャー(情報開示)も、すっかり定着しているようだ。1998年の銀行法改正以来広がったこの制度によって、取引先の経営や財務の状況を簡単に知ることが出来るようになった。
先日発行された城南信用金庫(本店・東京都品川区)の今年度ディスクロージャー誌は、店頭で入手できるほか、同金庫のホームページからPDFやe-bookでダウンロードして読める。
城南信金といえば、吉原毅理事長が脱原発宣言をしたことでも知られる。彼は「近くに城南信金の支店がなくても各地の信金を応援してほしい。なぜなら信用金庫はその地域を守る金融機関だからだ」と、メガバンクとは違う点を訴えている。
さて、このディスクロージャー誌と一緒に店頭に置かれている「マンガでわかる城南信用金庫の経営内容」がなかなか面白いので紹介したい。こうしたマンガによるディスクロージャーは2006年から行なっているおり、毎年好評だそうだ。
中身は「経営内容のご紹介」として8項目に分かれ、ルーツと基本理念、健全なコミュニティづくりや企業支援への方策、業績・自己資本比率・不良債権の状況がマンガで分かりやすく説明されている。
中でも見開き4ページにわたって展開されている「原発に頼らない安心できる社会の実現をめざして」は読み応えがある。「電力は不足している」「原発は安い」と言う原発推進派が実は人を化かすタヌキなのだが、彼らに対する反論は要点を押さえ、説得力あるものだ。
また「東日本大震災に対する取組み」でも、登場する子どもが「最近、テレビも新聞も東北のこと、あんまり取り上げなくなっちゃった」と思うように、昨今の風潮に疑問を呈するなど、通り一遍のものになっていない。
マンガを用いたディスクロージャーはほかの銀行や信用金庫にもあるが、これほど主張がはっきりしているものはほかにあるまい。ちょっと縁遠く感じられる金融機関の「見せる努力」が感じられる小冊子だ。(中津十三)
※ マガジン9では、2012年にマガ9学校「原発とグリーンとお金のはなしをしよう」で、いとうせいこうさんとともに城南信金理事長の吉原毅さんに登場していただいています。