去る4月26日、東京のセシオン杉並で開催された「STOP SLAPP! 高江 プレゼンツ『法律のつくりかた講座』~反スラップ法を日本でも!~」。会場はほぼ満員で、関心の高さを窺わせた。
主催した「STOP SLAPP! 高江」は、沖縄県東村高江で進むヘリパッド建設に絡んで国が起こした裁判はスラップ(SLAPP)であるとして、この問題に関するさまざまな活動を行っている。
なお、SLAPPの概略については、小欄その8)を参照していただきたいが、一言で言えば、「国民の言論の自由を、訴訟を起こすことによって封じ込める、法システムの悪用」だ。
最初のお話は、写真家の森住卓さん。福島からの取材後そのまま駆けつけたという。高江の自然の美しさと住む人々、隣り合う米軍北部訓練場での米兵の訓練、そして造られようとしているヘリパッドを、自身の写真をスライド投影しながら丁寧に説明した。
ついで、高江ヘリパッド訴訟弁護団弁護士の小園恵介さんと、高江に住む「ヘリパッドいらない住民の会」の石原岳さんから、裁判経過やその現場からの報告が行われた。
次に登壇したのは、ジャーナリストの烏賀陽弘道さん。その11)でも書いたが、自身もオリコンからSLAPPを起こされた被害当事者でもある。「反SLAPP」の先進国である米国を取材した烏賀陽さんは、今回も詳細にSLAPPの異常さと、現地での対策を述べたが、その内容に会場からは驚きの声が上がっていた。
休憩を挟んで、最後に弁護士の宇都宮健児さんのレクチャーとなった。宇都宮さんは早くから多重債務やサラ金・闇金問題に取り組み、その運動は遂には貸金業法改正にまで漕ぎつけた。力強い語り口は、そうした経験に裏付けられてのことだろう。
2006年の貸金業法改正運動は、実に目配りの利いたものだった。運動自体を広げるとともに、世論を動かし、これを踏まえて政党・国会議員対策を行う。当時は郵政選挙で自民党が圧勝し、小泉チルドレンといわれた1年生議員が大勢いたが、逆に言えばサラ金業界の手垢がついていないため、説得できたようだ。
また、国会対策の際の注意点もなるほどと思わせた。各政党の特徴をつかみ、議員同士の仲の良さ悪さなども調べて活用する。院内集会を開くにしても、与党議員に会場をとってもらう。そうしないと集会が野党議員ばかりになってしまうからだ。地方で集会を行うなら「金帰火来」の議員に合わせて土日に、などのきめ細かさだ。
宇都宮さんはこうも語った。「法律を制定したり制度を改革するには、国会で多数派にならなければならない」。確かにSLAPPの認知度はまだまだ。他のスピーカーからは「STAP細胞くらい注目を浴びてほしい」との冗談も出たほどだ。
市民が結集し多数派を構築するには、さらにその輪を広げていくためにはどうしたらよいのだろうか。問題を知った人が知らない人に伝えていくことから始まる、少しずつの、地道で粘り強い運動が反SLAPPについても求められている。多くの示唆に富んだ催しだった。(中津十三)
シンポジウム終了後の登壇者の皆さん。右から、森住卓さん、小園恵介さん、石原岳さん、宇都宮健児さん、烏賀陽弘道さん
※ 「STOP SLAPP! 高江」のホームページに、この催しを記録した動画がありますので、ぜひご覧ください。