東京都知事選挙の選挙戦もたけなわ、各候補の訴えも日ごとに熱を帯びているようだ。そんな中、私は某候補のボランティアを行なってみた。
雑居ビルの一室にある選挙事務所に特に連絡もなく、ふらりと訪れてみた。ポスターや為書きがベタベタと貼られて、もっと雑然としているのかと思ったが、部屋の中は意外ときれいだ。想田和弘監督の映画『選挙』に出てくる事務所のイメージが強かったようだ。
名前と連絡先を用紙に書き込み、名札をぶら下げる。聞くと、いま手が足りていないのは、ビラを折ることと電話掛けだという。こういったことは初めてなので、ビラ折りをやることにさせてもらった。
このビラは、証紙ビラと確認団体ビラ(法定ビラ)の2種類がある。証紙ビラには選管発行の証紙が1枚1枚に貼られ、候補者の名前や写真が載っているが、その候補が近くにいるときにしか配れない。枚数も制限されている。確認団体ビラは枚数やポスティングなども自由だが、名前も写真も載せられない。
どうにも合点の行かぬ制度だが、これに従う以外に選挙は出来ない。候補の名前も写真もないビラを3つ折りにする。隣の女性ボランティアが、「大きな文字のこの辺りで折るときれいになりますよ」と教えてくれた。なるほど、確かに。
1束が50枚ほど、これを黙々と折る。仲間同士で参加している方々はおしゃべりしながら、しかし手は休めず、どんどん折る。いったい何万枚あるのだろう、と思うが、こうした作業は人海戦術だから、ボランティアが多ければ多いほどすぐに終わるはずなのだ。
事務所の方に伺うと、ボランティアにお願いしているのはこうした作業のほか、先述の証紙ビラへの証紙貼り、はがきの宛名書き、ビラのポスティング、さらには候補者の演説している街頭に行って応援することもあるという。言ってみれば「サクラ」だが、やはり人数が多いと盛り上がるので、ボランティアといわず、ぜひお出かけください、と言われた。
3時間ほど作業を行い、事務所を後にした。この人を全面応援! というわけでもなく軽い気持ちでのボランティアだったが、事務所の雰囲気もよく、この候補の人となりも少し分かったようで、選挙が身近になった気がした。他の候補のところにも行ってみようかな。(中津十三)