「オーマイニュース」選挙特番で司会をされた下村健一さんと。
市民記者の皆さんの「失うもの」のなさからできる
過激なインタビューは素晴らしかったです。
都知事選が終わった。また石原都政が始まる。がっかりだ。
なんで? 一体誰が石原を支持しているんだ?
開票の時間、「オーマイニュース」の選挙特番に生出演していた。番組が始まってすぐに、石原当確が報道された。既に諦めムードは漂っていたが、やはり激しく失望した。
番組では、石原の選対本部長・佐々淳行氏へのインタビューも流された。それを見て、愕然とした。彼は北朝鮮のテポドン、テロ、大地震、治安の悪化、鳥インフルエンザなどなどを持ち出してとにかく恐怖を煽りまくるのだ。そして「安心、安全」を強調する。そんなやり方の石原が圧勝した。
みんな不安なのだろうか? だけどその不安は本当に「地震」や「テロ」によるものか? 「治安の悪化」によるものか? 「治安悪化」という言説そのものが「神話」であることは「犯罪不安社会」(光文社新書)に詳しい。著者の調査では、「日本全体で犯罪がとても増えている」と回答したのは49・8%、しかし、自分の住む地域でとても増えていると回答したのはたった3・8%だった。日本隅々まで行き渡った「体感治安の悪化」。また、「子供が犠牲になる事件の急増」という言説も正しくはない。警察庁の統計では、90年以前と比べ、小学生が殺害される事件は大幅に減少したまま安定している。
なぜ、こういったプロパガンダが力を持つようになったのか。こうした形で不安と恐怖を煽り、結果的に得をするのは誰なのか。以前、歌舞伎町を視察した石原氏は、なんと「迷彩服」に身を包んでいたという。よっぽど怖かったんだろうな・・・。ちなみに私は今から10年ほど前、歌舞伎町のキャバクラで働いていたが、特にあの街に迷彩服を着ていく必要性を感じたことはない。
データのない「治安悪化」、実態のない「若者のモラルの低下」(だいたいどうやって「モラルの低下」を数値化する?)、そしてある日突然外部からもたらされる「巨大な不安」としてのテロや北朝鮮、地震。
みんな不安なのだろう。
浅野勝手連に誘われて渋谷でやった演説。
マンガ家の山本夜羽根さんと。なんかもうすっかり「過去」感・・・。
将来どころか、近い未来さえ予測できない層が大量に生み出されている。しかし、その不安の正体はなかなか当人にも意識されない。自分の不安の理由がわからないことは、更に不安をかきたてる。そこに、これこそが不安の元凶だ、というモノが提示されると思わず飛びつきたくなる。そうすれば、自分の足元にある不安は軽減される(ような気がする)。考えてみれば、私もそれをやっていた。右翼団体にいた頃だ。自分の不安、将来への不安がすべてごちゃまぜになっていて、毎日毎日不安で仕方なかった。そこで持ち出したのは、やっぱり北朝鮮や中国、アメリカなど外部からもたらされる「巨大な不安」だった。それは「今、ここ」にある自分の不安から目を逸らせてくれるものだった。だからといって当時石原支持だったかと言えば、まったくそんなことはない。
ネット上で「売国奴から日本を守るのは石原くらいだ」という言葉を見た。弱肉強食を地でいく石原氏を支持する若者の一票は、ある意味、外山恒一氏への一票より「やけっぱちの一票」ではないのか。石原氏と対談した際、「ワーキングプア」の話をした。その直前にNHKで放送された「ワーキングプア」という番組を観たと石原氏は言った。それなら話が早いと、ワーキングプアに対する答えを待った。石原氏は、その番組に登場した、自営業で食べていけなくなった夫婦のことを「同情はする」と言ったあと、続けた。「でも、ビジネスモデルが悪い」。番組には、妻の葬儀費用に向けた貯金があるために生活保護を受けられない老人、ホームレス状態の若者など、多くの「餓死」予備軍と言えるような人たちが登場した。「ビジネスモデル」などという次元の話ではなかった。それでも、彼らが困窮してしまったのは、ビジネスモデルが、もっと言うと人生設計が悪かったという本人の「自己責任」で、そんな人達は飢えて死んでも仕方ないということなのだろうか。
同じく渋谷でぬりえ。しかも雨。
10年ぶりくらいにぬりえをして妙にハマりました。
数日前、役所のケースワーカーの人と話をする機会があった。彼は私に、生活保護の相談に来た若者が面談中に血を吐いたことを話してくれた。家を失い、ネットカフェを転々としていた若者は結核だったという。漫画喫茶、ネットカフェで結核が集団発生しているという話は昨年夏から聞いていた。都庁の聳える新宿は、巨大な寄せ場と化し始めている。しかし、都はまったく放置している。
が、そんな実態を知ったら、石原氏は彼らを救済するどころか、迷彩服姿で歌舞伎町ごと焼き払うのではないかと思えてしまう。これが妄想でありますように。今はそれくらいしか願えない。