雨宮処凛がゆく!

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小熊英二さんと、首都圏反原発連合の面々。

 ふと、6月頃に自分が書いた原稿を読み直してみると、なんだか懐かしい気持ちがこみ上げる。

 官邸前に1万人が集まったことにビビりまくっている自分。

 それが4万5000人になった日の、全身が震えるほどの感動。

 そして20万人によって官邸前が埋め尽くされた日。

 「さようなら原発10万人集会」に17万人が集まった衝撃。

 今の私は、数万人の人を前にしても、もうあまり驚かなくなっている。

 そして全国各地で、デモや抗議行動が、当たり前の光景となっている。

 多くの人の感覚は、きっとこの1、2ヶ月でかなり「麻痺」し始めている。デモが当たり前にある社会。そういう社会は、なんて息がしやすいだろう。多くの人が、直接民主主義を実践している世の中。メディアでそれが当たり前に報じられる社会。

 そうして7月31日、私は「直接民主主義」の歴史的な瞬間を目の当たりにした。というか、その場に立ち会った。

 それは「首都圏反原発連合と脱原発を目指す国会議員との対話テーブル」。

 全編はこちらに映像があるので見てほしい。このような「対話の場」が実現した経緯は、慶応大学教授の小熊英二氏の呼びかけによって。出席したのは、現在、毎週金曜夜の「官邸前行動」を呼びかけている「首都圏反原発連合」と、脱原発を目指す民主党国会議員によって作られている「脱原発ロードマップを考える会」、そして脱原発を目指す超党派の国会議員によって作られている「原発ゼロの会」。

 なんとこの「対話テーブル」に、私も「首都圏反原発連合」の個人有志として出席させて頂いたのである! ちなみに「首都圏反原発連合」とは、様々なデモなどを主催しているグループや個人によるネットワーク。

 そんな対話テーブルに出席したのは、菅直人元総理や辻元清美議員、江田五月議員など総勢十数名。対する「首都圏反原発連合」からも十数名が出席。動画を見て頂ければわかる通り、Misao Redwolf さんはタトゥーも鮮やか、他のメンバーも「国会議員と会うからスーツ」などという発想からはまったく自由な人たちで(もちろん、ちゃんとスーツの人もいたが)、そんな「反原連」が衆議院第一議員会館(またそういう場がことごとく似合わない。いい意味で)に集まり、国会議員と対話するという事実に、なんだか気が遠くなるような「歴史の不思議」を思ったのだ。

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テーブルの向こうには菅直人元総理大臣はじめ国会議員の方々。

 なぜなら、私はこの1年5ヶ月、彼らがどれだけ頑張ってきたかを知っている。そして今も、どれほど大変かを知っている。仕事の合間をぬってデモ申請をし、継続的にデモを行い、そして毎週金曜日の官邸前行動のためにどれほどのスタッフが寝食を削って奮闘しているか、いつも頭が下がるような思いで見ている。もちろん、そんな活動は1円にもならない。この日も夜勤明けでこの対話に駆けつけたメンバーもいる。そんな彼らの呼びかけに応じて、今、官邸前には毎週10万人以上の人が集まる事態となっている。そんな状況が、この日の「対話」を実現させたのだ。

 この日、小熊英二さんも言っていたが、この場の「真の主催者」は、毎週官邸前に集まる人たち、そしてその背景にいる脱原発を望む人たちだ。そのために、日々様々な取り組みをし、デモに参加し、声を上げている人たち。

 対話の冒頭、小熊さんはこのような場は「日本近代史上、初めてのこと」と言った。組織でもなんでもなく、まったくの民衆の動きからこのような場が持たれたということはこの国の近代史上、ないことらしい。

 先週の原稿で、私は以下のように書いた。「私たちは今、この国の民主主義を、一から問い直しているのだと思う」「そして一から、この国のあり方を作り変えるという壮大な試みの中にいるのだと思う」。

 一人一人がデモに参加し、官邸前に集まり続けるという行動が、今、政治を大きく動かし始めている。多くの国会議員を動かし始めている。

 この日、首都圏反原発連合が国会議員の人々に要請したのは、大飯原発の即時停止、他の原発を再稼働しないこと、原子力規制委員会の人事の撤回、そして野田首相への申し入れだった。

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臆せず突っ込む首都圏反原発連合。

 それから、数日。なんと野田首相が首都圏反原発連合と会う意向があるということが報道され、そうしてバタバタと事態は動き、本当に8日午後、会談することが決定!!

 組織でもなんでもなく、直接民主主義的な抗議行動で広まった「官邸前」の動き、うねりが、一国の総理大臣を「対話の場」に引きずりだすことに成功したのだ!!

 ちょうどこの原稿がアップされる頃、これまで「官邸前抗議行動」をしていた首都圏反原発連合は、「官邸内抗議行動」という、「日本近代史上、初めて」の取り組みのただ中にいるはずだ。

 もちろん、この日は私も応援に駆けつける。

 とにかく、たった300人から始まった抗議行動が、今、やっとここまでこぎつけた。それを思うと、私たちって、全然無力じゃないじゃん、と思うのだ。

 だってこの一ヶ月と少し、全国で100万人くらいの人が脱原発の行動に参加しているのだ。

 今、私たちは、「世界で一番アツい夏」のまっただなかにいる。

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対話のあと、菅さんと。

 

  

※コメントは承認制です。
第239回「脱原発を目指す国会議員との対話テーブル」の巻」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    雨宮さんから原稿が送られてきた後、
    首都圏反原発連合と野田首相との会談は、官邸側の申し入れにより延期! というとの知らせが…。
    「官邸内抗議行動」、ここからどうなるのか?
    もちろん官邸前行動は続けつつ、こちらも注目です。

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雨宮処凛

あまみや・かりん: 1975年北海道生まれ。作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。若者の「生きづらさ」などについての著作を発表する一方、イラクや北朝鮮への渡航を重ねる。現在は新自由主義のもと、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材、執筆、運動中。『反撃カルチャープレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)など、著書多数。2007年に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、「週刊金曜日」編集委員、、フリーター全般労働組合組合員、「こわれ者の祭典」名誉会長、09年末より厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員。オフィシャルブログ「雨宮日記」

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