雨宮処凛がゆく!

 今週から、参議院で安保関連法案の審議が始まった。
 なんとか廃案にしたい。

 そんな思いを募らせていたところ、この連載にも何度も登場している山本太郎議員が、安保特別委員会に入ったという話を聞いた。ということは、安倍政権に、ガンガン質問できるのである。
 山本太郎議員と言えば、これまで委員会での質問作りを手伝ったことがある。貧困問題に関してだ。ならば今回も勝手に手伝えないだろうか。しかし、安保関連法案への質問を作る能力など私にはない。ただ、衆議院での審議を見ていて、ずっと歯がゆかったことがある。それは「戦場の現場の話」があまりにも少なかったことだ。漢字だらけの「○○事態」などの言葉を出して語られる文字通りの「机上の空論」と、時々刻々と変わる現場の実態はあまりにも乖離している。そこに行かされる人たちのことを考えると、政権はあまりにも無責任なフィクションの議論に終始している気がした。

 誰か、戦場に詳しい人はいないだろうか?
 そう思っていて頭に浮かんだのは志葉玲さんだ。志葉さんは、パレスチナやイラクなどを数多く取材しているジャーナリスト。最近では様々な戦場の実例に触れながら、安保関連法案を批判する原稿を精力的に執筆している。そのどれもが現場の臨場感に満ちていて、説得力に溢れている。
 ということで、山本太郎氏に「志葉さん推し」をさせて頂いたところ、ぜひ話を聞きたいとの返答。今度は志葉さんに「一緒に声を安倍政権に届けましょう!」と打診したところ、ふたつ返事で快諾して頂いた。そうして、打ち合わせ当日、志葉さんはなんと川口創弁護士も誘って下さったのだった。
 川口創弁護士とは、「イラク派兵差止訴訟」で2008年4月、名古屋高裁において「航空自衛隊のイラクでの活動は憲法9条1項に違反」という画期的な違憲判決を勝ち取った人である。
 思いがけず、最強のメンツが揃ってしまった…。これが私のこの日の感想だ。なんだかほとんどぽかんとしていた。

 この日、どんな話し合いがなされたかは、これからの山本太郎氏の質問を見てのお楽しみだが、今、私は「本当に止める」ことができる手応えを感じている。
 衆院特別委員会での強行採決の日、私はうっかり絶望しそうになっていた。そんな自分を今、心から恥じている。そしてめげそうな私を動かしたのは、毎日Twitterで流れてくる、そして国会前のプラカードに書かれた無数の「本当に止める」という言葉だった。本当に、本当に、廃案にする。そのために、できることはなんだろう? いろいろ考えた。

 この日、Twitterで「山本太郎安保特別委員会対策チーム、立ち上がりました! 質問作りに志葉玲さん、川口創さん、そして私もお手伝い☆ 本気で止める! 総がかり行動!」とtweetすると、凄まじい反響があった。
 「市民の『音』が、ようやく『声』となる瞬間がやってきた」「鳥肌立ちました!」「めっちゃ感動してる!」などなど。
 それらの言葉を見て、国会前やデモでのSEALDsのコール、「民主主義ってなんだ?」を思い出した。
 今、この国の民主主義は機能不全に陥っている。だからこそ、私たちの声は届かない。世論調査でどんなに「説明不足」と言われようとも、どんなに反対意見が多かろうとも、その声は鮮やかにスルーされる。だからこそ、「私たちの声を届けてくれそうな人に声を届ける」ことを実践したかった。私にとってはこれもひとつの「民主主義ってこれだ!」と言えるものだ。民主主義の実践って、いろんな形でできると思うのだ。

 山本太郎氏の質問は、今週から始まる。ぜひ、ネット中継などでご覧頂きたい。
 そして私自身、これだけ諦めが悪くなれたのは、やっぱり最近の若者たちのパワーに圧倒されているからだ。講演などで週末はどこかに行く生活だが、ここ最近はどこに行っても「若者に負けてられない」という声を多く聞く。少し前までは「若者は何やってるんだ」だったのに。そして地方に行くたび、各地で実際に行動を始めた若者たちと出会う。そんな彼らを見ていると、「本当に止める」ために大人として、そして無駄に活動歴が長い者として何かやらなければ、と奮い立たされる。若者だけじゃない。国会前で暑い中、長時間声を張り上げる人、座り込みを続ける年配の方々、全国で凄まじい勢いで広がっているデモ、そんな光景にいつも勇気を貰う。

 私たちの声を直接、安倍政権にぶつける機会がやっと巡ってきた。
 あとは山本太郎議員、元俳優の演技力もフル活用してよろしくお願いします!!

左から山本太郎議員、志葉玲さん、私、川口創弁護士。

 8月3日、新宿のロフトプラスワンで開催される『14歳からの戦争のリアル』出版記念イベントには、山本太郎議員も出演! 安保特別委員会での最新報告など、いろんな話を聞きたいと思います!
 そしてなんとSEALDs(奥田愛基さん他)、元自衛官の泥憲和さんも出演! 本当に止めるための作戦を立てましょう!
  詳細はこちら!

 

  

※コメントは承認制です。
第345回 戦争法案、♯本当に止める。の巻」 に4件のコメント

  1. magazine9 より:

    ちょうど、このコラム更新がある29日(水)15:48~16:22(予定)に、山本太郎さんの質問が予定されています。参議院での審議の様子はインターネット中継で観られます。
    また、川口創弁護士が以前マガジン9で連載していた「憲法はこう使え」の第1回に、自衛隊イラク派兵違憲判決までの経緯が紹介されています。「9条を『守る』のではなく、『使う』」。この言葉はいまの状況にも生きてくるのではないでしょうか。あわせてご覧ください。

  2. むしろ私は、法律面で議論すべきであろうと思います。実際の戦場での体験を持ち出すと「そんなもの情緒論だ」と鼻の先でせせら笑われるのは目に見えています。我々の敵は、はるかにしたたかなのです。安倍さんの目指すところはなんとなくですが「富国強兵」を目指しているように思えます。技術論で議論するなら、徹底して防衛の技術で論破すべきでしょう。日本は世界第6位の海岸線の長さを持っています。こんな国、どんなに軍備を拡張しても守りきれない、ということをハッキリと国民の前で堂々と「共通認識」にすべきなのです。だから敵対する勢力とも「対話」「外交」で折り合いをつけてゆくことが大事なのだと思います。

  3. kataru より:

    こんにちは。時折、このブログに立ち寄っては毎回興味深く拝見しています。人それぞれの解釈で、同じ言葉でも立場を変える。雨宮さんの記事を読ませて頂いて深く実感する事の一つです。

    ただ、一つ質問があります。是非どこかでお答えしてくれると幸いです。
    雨宮さんは、戦争にて「誰が」傷つく事が嫌なのでしょうか?全人類ですか?世界中のどの戦闘員もですか?日本の自衛隊ですか?日本国民ですか?雨宮さんの大事な家族やお友達ですか?それとも雨宮さんご自身ですか?

    この質問は雨宮さんの「行動を否定する為のものでは無い」という事だけ、ご理解して頂けると幸いです。この質問の回答によって、雨宮さんの行動理念を理解したく質問させて頂きました。もし気を悪くされる様な事がありましたら、先にお詫び申し上げます。

    長文、乱文失礼いたしました。

  4. とろ より:

    横から失礼します。
    どんなに軍備を拡張しても守りきれない→対話と外交は必ずうまくいくとは限らない→その時に備えて軍備だ→一国で守るのは難しいから他の国に協力してもらおう→自分の守備だけってのは不公平だから,相手の場合も協力しよう→じゃ集団的自衛権だねって結論なりませんか?
    対話と外交でけりがつけばいいですけど,けりがつかない時の為の備えは必要ですから。
    話してもわからない人っていつの時代もいますからね。ましてや相手は文化の違う外国人ですし。

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雨宮処凛

あまみや・かりん: 1975年北海道生まれ。作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。若者の「生きづらさ」などについての著作を発表する一方、イラクや北朝鮮への渡航を重ねる。現在は新自由主義のもと、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材、執筆、運動中。『反撃カルチャープレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)など、著書多数。2007年に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、「週刊金曜日」編集委員、、フリーター全般労働組合組合員、「こわれ者の祭典」名誉会長、09年末より厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員。オフィシャルブログ「雨宮日記」

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