雨宮処凛がゆく!

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26日、秋葉原の献花場。秋葉原事件を考えるイベント前に
みんなで献花しました。

 あまりの暑さに体調を崩し、先週は休んでしまった。北海道人の身体は東京の暑さに適応できるようにできていない。だけど、本当は暑いのは好きなのだ。インドやタイ、イラクの猛暑なんかは気持ち良くて大好きだ。でも東京の暑さは気持ち良くない。せめて少しでも東京の夏を快適に過ごすため、最近は昼間からビールを飲むようにしている。体調管理も大変なのだ(そういうことなのか?)。

 さて、少し前、また新刊が出た。「またか?」と突っ込まれそうだが、今回はなんと哲学者の萱野稔人さんとの対談集!
 タイトルは『「生きづらさ」について 貧困、アイデンティティ、ナショナリズム』。第1章は「『生きづらさ』はどこからくるのか?」、第2章は「貧困とアイデンティティ」、第3章、「認められることの困難とナショナリズム」、第4章「『超不安定』時代を生き抜く」。

 各章のタイトルで、どんな感じかわかって頂けると思う。今まで、「非正規労働」や「貧困」という大きな切り口から書いたり話したりしてきたわけだが、今回はそれらの問題と「承認」や「精神的な生きづらさ」「リストカット」「ハイパー・メリトクラシー」「高度すぎるコミュニケーション」「ナショナリズム」なんかについて掘り下げた対談となった。そうして「生きづらさ」全般について語った一冊となったわけである。

 もともと、00年に25歳で一冊目の本を出してから06年に「プレカリアート運動」と出会うまでの6年間、ずーっと私は「生きづらさ」の問題にかかわってきた。が、精神的な生きづらさや自殺、自傷の問題にかかわるにつれ、「個人の心だけではなく、構造の問題なのでは?」という認識に辿り着き、プレカリ運動に大きな突破口を見い出したわけだが、今回ひとまわりするような形で社会や経済の問題を背景とした「生きづらさ」に戻ってきたという、何か自分にとってはとても思い入れの深い本である。そしてそれは不思議と現実の動きともシンクロしている。現在、プレカリアート運動にひきこもりやメンヘラーと呼ばれる心の病を抱えた人々が参加していることはここでも書いてきた。そんなふうに「生存」の一点で、労働運動とメンヘル系の人たちが繋がり出していることは、私にとってはものすごく大きな「希望」なのだ。まさかメンヘラーの人々と、ここ(デモや労働組合の事務所)で再会するとは思わなかったぜ!
 というような。「人民新聞」1317号は、そんな現実をいち早くフォローしている。巻頭座談会のタイトルが「『声なき者』の反撃と連帯の可能性 どうやって生きのびるのか?」。ここ最近のフリーター運動を追ってきた同紙は、今年のフリーターメーデーを経て、ニートやひきこもりなど、従来の労働運動からこぼれ落ちる人々からの告発に注目している。そしてそんな若者たちが「野宿者予備軍」であることも指摘する。フリーターが野宿化してもまだ日雇いなどでなんとか生きられるだろうが、家から出られないひきこもりはどうなるのか?
 数年前、親が死んでひきこもりの兄弟が餓死したという事件も実際に起きている。

 ということで「どうやって生きのびるか」という一点でフリーターとニート、ひきこもりの人々はつながり出し、座談会では様々な当事者、活動家たちが意見を述べている。熊本KYメーデー実行委員の馬野骨介さんは「親が死んだら、野宿か餓死か、生活保護か刑務所しかありません」と語る。悲しいけれど、それは今のところ一面では現実なのだ。だからこそ、それをなんとか防ぎたいと、ひきこもり当事者たちも行動を始めている。病んでる上に金がなくて対人恐怖で働けない、こんな人って絶対に多いはずだ。ああ、みんなで集まって「どうやって生きのびるか」の作戦会議を立てたい。公園とかで。そしたら無料。家から出られない人はネットや携帯で参加。こういうのを定期的にやるだけでも防げる自殺って多いはずだ。

 と、『「生きづらさ」について』は、そんなことを語り合ったのだった。

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※アマゾンにリンクしています。

 さて、もうひとつ、自分の本でもなんでもないが、ぜひ観て欲しい映画がある。それは「アメリカばんざい」。現在、ポレポレ東中野で公開中のこのドキュメンタリー映画は本当に凄い。凄まじい。堤未果さんとの対談でも話した「貧困と戦争」の問題が、その現実があますところなく描かれている。貧困から、そして様々な事情から「生きるために」米軍兵士となり、イラクに送られて人を殺し、仲間の死体を片付け、帰国後はPTSDに苦しみ、ホームレスとなってしまう若者たち。アメリカのホームレスの3人に1人は元兵士と言われているという。貧困地域の学校は補助金欲しさに高校生の携帯番号を軍に売り渡し、リクルーターは「軍に入れば大学に行ける」と吹き込み、そうしてイラクに送られていく貧しい若者たち。8歳の子どもを殺してしまった元兵士、友達の脳みそや血を片付けた女性兵士、「撃て」と言われてメチャクチャに撃ちまくった若い兵士。貧しい者が戦場に送られ、より貧しいイラクの人々を殺すことを強いられる。この映画を観ると、イラクに送り込まれる米軍兵士が「経済的徴兵制」の被害者であることが痛いほど伝わってくる。で、戦争を始めたブッシュは痛くも痒くもないわけだ。

 ぜひ、多くの人に観て欲しい。と、勝手に宣伝させてもらう。

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反G8キャンプの集会所に張られていたポスター

 

  

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雨宮処凛

あまみや・かりん: 1975年北海道生まれ。作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。若者の「生きづらさ」などについての著作を発表する一方、イラクや北朝鮮への渡航を重ねる。現在は新自由主義のもと、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材、執筆、運動中。『反撃カルチャープレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)など、著書多数。2007年に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、「週刊金曜日」編集委員、、フリーター全般労働組合組合員、「こわれ者の祭典」名誉会長、09年末より厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員。オフィシャルブログ「雨宮日記」

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