雨宮処凛がゆく!

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ガソリンスタンドユニオン連帯集会!

 前回の原稿で「ネグリが来る」と書いたのだが、御存知の通り、来日できなくなったようだ。報道によると「日本政府から入国できない可能性を示され」たとのこと。ちなみにそこに書かれたネグリの経歴がシビれる。「同氏は79年に反政府組織「赤い旅団」による元首相殺害事件への関与の疑いで逮捕されたあと、83年にフランスへ亡命。殺害事件は無罪となったが国家転覆罪で禁固刑が確定した」(朝日新聞 2007年3月20日)。
 残念だが、企画は予定通り行われるという。

 で、そんな報道がされた日、フリーター労組事務所にて、「ガソリンスタンドユニオン」の連帯集会が開催された。集会タイトルは「なめてくれやがった礼はたっぷりさせていただく F××K 関東礦油! GSU(ガソリンスタンドユニオン)連帯集会」。今年2月、フリーター労組内で「ガソリンスタンドユニオン」が立ち上げられたのだ。
 駆け付けたフリーター労組の事務所には、床一面にブルーシートが敷かれ、テレビカメラが何台も設置されている。狭い事務所内を熱気が漂う。この集会を呼びかけるメールには、以下のような言葉があった。

 「サブプライムローンの責任をとらされてバイトが解雇??ガソリンスタンドでバイトが組合つくっちゃいけないのか??ガソリンスタンドの兄ちゃんたちが、セルフ化によるスタンド閉鎖→解雇に抗議して立ち上がりました。ということで集会を持ちます。」

 集会では、まずユニオン結成までの顛末が語られる。昨年からのガソリン価格高騰と、経営難からガソリンスタンドに押し寄せる「セルフ化」の波。ガソリンスタンドでバイトするユニオン分会長のKさんも月の労働時間を50時間以上も減らされ、フリーター労組に相談。バイトといっても、このガソリンスタンドで働く11人中8人がバイトで、みんなバイトしたお金で1人暮らしをしたり、学校に通ったりと、バイトの収入で生活している。ちなみに3人の正社員は数店鋪を掛け持ち。バイトが現場を回しているようなものだ。ということで、Kさんは同じ職場の同僚たちと「ガソリンスタンドユニオン」を立ち上げる。そうして団体交渉を申し入れたところ、「解雇予告通知書」を送りつけられたのだ。しかも解雇予告は3月25日。解雇理由は「サブプライムローンの破綻による世界的な景気後退予測の強まり」・・・。ということで、連帯集会が開かれたのだ。

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まさにその通り・・・。

 分会長のKさんは、「自分だけの問題にするつもりも、バイトだけの問題にするつもりもない」と語る。この日事務所に掲げられた横断幕には「バイト首切り→社員過労死」の文字。そうなのだ。業績悪化でバイトは大幅に労働時間を減らされているわけだが、その分を正社員のサービス残業が補っている。30時間しか残業代がつかない正社員。朝から深夜まで働く正社員の中には、過労から作業中に大怪我した人もいるという。

 この日来られなかったガソリンスタンドユニオンの組合員からは「サブプライムローンの責任を末端の俺たちに押し付けるな!」というメッセージが届いた。

 この原稿がアップされる頃には、既に25日を迎えている。一体、どうなるのだろうか。不安は尽きない。

 が、Kさんは、今のこの状況を「めちゃめちゃ楽しんでいる」という。職を失うかもしれなくて、どうしようと思いつつも、楽しくて仕方ないのだそうだ。「やっと当事者になれた」とも語った彼は今、まさに闘いの最中にいて、なんだかとても輝いているのだ。

 ちょっと自慢だが、Kさんがフリーター労組などに関わるようになったのは、この「マガジン9条」の連載がきっかけだという。この連載で「自由と生存のメーデー」を知り、参加するようになり、そして今回、自らに労働問題が起こり、フリーター労組に相談したらしいのだ。

 それを彼から聞いた時は、無性に嬉しかった。20代の若者が、組合を結成して立ち上がった、そのきっかけのひとつになれたことが、本当に嬉しい。そしてそんな事実を伝えることで、また誰かが「自分にだってできるかも」という気持ちになってくれるのかもしれない。

 この原稿がアップされる頃、既に解雇予告の25日は過ぎている。そして同じ日、事業所も閉鎖されることになっているという。だけど、ただ黙って解雇される前に、彼らは立ち上がった。「バイトだって人間として扱ってほしい」と、団交で声を上げた。そして彼らの解雇予告日を前にして、たくさんの人たちが集会に集まった。

 こうして、「反撃」は増殖していくのだ。

 と、ここまで書いて緊急速報!! 3月25日、ガソリンスタンドユニオンがストライキを敢行!! 
現場の写真満載の詳細はこちらで!

 ※3月末から4月中旬まで、ピースボートに「水先案内人」として乗船するため、連載をお休みさせて頂きます。帰国後の報告をお楽しみに!

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集会では「激励三味線」も。フリーター労組には、
ブルーシートが似合う。

 

  

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雨宮処凛

あまみや・かりん: 1975年北海道生まれ。作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。若者の「生きづらさ」などについての著作を発表する一方、イラクや北朝鮮への渡航を重ねる。現在は新自由主義のもと、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材、執筆、運動中。『反撃カルチャープレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)など、著書多数。2007年に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、「週刊金曜日」編集委員、、フリーター全般労働組合組合員、「こわれ者の祭典」名誉会長、09年末より厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員。オフィシャルブログ「雨宮日記」

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