早稲田大学にて。堤未果さんと。
11月24日、早稲田大学で行われた「格差×戦争 若者のリアルと憲法」というイベントに出演した。出演したのは「報道が教えてくれないアメリカ弱者革命」の著者でジャーナリストの堤未果さんと、私。主催は「憲法カフェプロジェクトチーム」。「国民投票法案の成立を受けて発足した2007〜201X年の時限プロジェクトチーム」ということで、フリーター、学生、会社員などが中心だという。「毎月第4土曜日に自民党改憲案や改憲をめぐる社会の動きをテーマに」カフェでトークイベントなどをやってるそうだ。 で、どんなメンバーかというと、みんな恐ろしく若い。私が知る限り、ほぼ全員が年下で20代。そんな若者たちが国民投票法案の成立を受けて「憲法カフェ」を発足させちゃうなんて、つくづくすごいと思う。憲法のことを真剣に考えようという変態度の高い、いやあまりにも意識の高い若者たちだ。というか、最近あまりにも政治的意識が高くて知識も豊富で勉強してる若者にばかり会ってるため、たまーに政治とかに本気で興味がないという大人(同世代に多い)に会うと、思わず選挙権を剥奪したくなってしまう。
この日は堤未果さんの講演のあとに私と堤さんの対談だったのだが、堤さんの講演がめっちゃくちゃ面白い、というか、ものすごく勉強になった。アメリカで貧困層の若者が米軍のリクルーターにリクルートされる生々しい現実が切々と語られる。9・11テロ以降、「テロとの闘い」を掲げて一元化された個人情報。それが何をもたらしたか。高校は軍に個人情報を提出しなければならなくなった。そこには高校生の携帯番号まで含まれている。提出しなければ、助成金がカットされる。カットされても困らない高校ならいいが、貧困地域の高校は助成金をカットされると困る。ということで軍に高校生の個人情報が流れ、そうしてその中でもより「未来のない」貧困層の若者の携帯に、ある日、米軍のリクルーターから電話がかかってくる。「ジェントルマン同士ビジネスの話をしないか」と。そうしてリクルーターと会った若者は、「夢」という言葉をさんざんちらつかされて(例えば大学に行きたいという「夢」など)、軍隊に入れば大学に行けるなどという理由で契約書にサインしてしまう。
堤さんの本「報道が教えてくれないアメリカ弱者革命」には、そんなふうにしてイラクに行かされ、人殺しをさせられた果てにアルコール依存症になってしまった若者などが登場する。「経済的な徴兵制」はそうして広がり、戦地から生きて帰ってきても完全に精神が破壊され、ホームレスになってしまう帰還兵たち。
軍隊に入っても年収は200万以下。命賭けのワーキングプア。保険料もそこから天引きされた上、防弾チョッキもローンを組んで自腹で用意する。イラク戦争で死んでも国から出たお金は120万円程度という現実。詳しくは本をぜひ読んで欲しいが、あまりのことに驚愕した。ではリクルーターが加害者なのかというとそうではない。リクルーターのノルマは月に三人。ノルマをこなせないと自分がイラクに行かされる。
そうして「戦争の民営化」に話は及ぶ。例えば借金を抱えた人の個人情報を派遣会社が入手し、「年収1000万でトラックの運転手の仕事がある」などと仕事を紹介する。で、派遣先はイラク。戦地でのトラック運転手だ。もちろん、彼らは死んでも戦死者として数えられることもない。そういう形でイラクには180社ほどの企業が入っているという。
報道が教えてくれないアメリカ弱者革命
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あまりのことに呆然としながらも、なんだかそれが遠い話ではないように思えてくる。例えば、私の実家のある市には自衛隊の駐屯地があり、弟の友人などが自衛隊に入っている。で、単純に、自分を含むロストジェネレーションのうち、周りで仕事が「安定」した状態で続いている人は、自衛隊だったり警察だったりする。それ以外はフリーターを繰り返していたり、正社員層でも過労で辞めてしまっていたり。最低賃金も低く、若年失業率も高い地域の若者にとって、ある種自衛隊が「優良な就職先」として機能しているという現実。そこに行かないとどうなるかというと、製造派遣で全国を転々とした果てにネットカフェ難民、なんてことになっているかもしれない。
「生存権」を脅かし、貧困層を作り出せると戦地に行く人を増やしやすくなる。25条と9条の繋がりについて、そうして堤さんと語れたことは、あまりにも刺激的な体験となった。
反貧困たすけあいネットワークのイベントにて。
首都圏青年ユニオンの河添誠さんと、川田龍平さんと。