B級記者どん・わんたろうが「ちょっと吠えてみました」

 5月30日、「沖縄を裏切るな! 新宿怒真ん中デモ」に参加してきた。仕事柄もあって、ふだんはデモを横から見ていることが多いが、今回ばかりは何らかの意思表示をしないではいられなかった。
 鳴り物を奏でプラカードを掲げながらの一団が、日曜日の新宿の目抜き通りで注目を集めたのは確かだ。でも、1時間ほど車道を歩く間、歩道との「段差」が気になって仕方なかった。ほんの数十センチなんだけど、こちらを眺めている人たちとの距離は、けっこうあるように感じた。
 そんな中、マイクで「沖縄を裏切るな」に続けて、「私たちは裏切らないぞ」と訴えていたのに共感した。そう、首相が代わる今、何より大事なのは、本土の私たちが無関心に戻らないこと。怒りを行動に変え、より多くの人たちに輪を広げて、今後につないでいく術を模索したい。
 先日聞いた講演で、多摩自治体問題研究所の池上洋通さんが、こんな話をしていた。
 日米安保条約が結ばれた時、沖縄の施政権は米国にあった。しかし、1972年に日本に復帰すると同時に、無条件でそれは沖縄にも適用された。つまり、沖縄の人たちは、参政権がない時に決められた負担を問答無用で押しつけられている。明らかな差別ではないか、と。
 まぎれもなく、当時、主権者として、選挙を通じた選択をしたのは本土の人間である。その結果として、基地のほとんどを沖縄に引き受けさせてきた責任は、本土が取るべきだろう。安保条約をやめるか、安保の必要性を認めるならば自分たちが痛みを担うか、どちらかである。そこをウヤムヤにしないことでしか、今回の「鳩山騒動」の教訓は生かせない。
 今後につながりそうな材料を探してみた。逆説的な意味も含めて、「良かったこと」を挙げてみる。
 その1。大臣を罷免された、社民党の福島党首の対応だ。
 「沖縄を裏切ることはできない」。記者会見でのセリフは、お世辞や皮肉抜きでカッコ良かった。参院選の損得で政権にこだわるちっぽけな議員が社民党内にも多いらしいから、おそらく党内では有形・無形の圧力が多々あったことだろう。それでも、最後までブレなかったのは立派だった。欲を言えば、もっと早くから政権内でがっつり動いてほしかったけれど。
 筋を通すこと、の重みを思い返した。1996年の沖縄県民投票。時の県知事・大田昌秀氏は「米軍基地の整理・縮小」への賛成が多数を占めた投票のわずか5日後に、政府との「手打ち」を表明する。苦渋の決断だったであろうが、「50億円の振興策と引き換えに取引した」との批判も浴び、県民に燃えさかっていた反基地のムードは一気にしぼんだ。普天間の移設先として、沖縄県内の海上航空基地案が出てきたのは、その直後だった。
 ちなみに、大田氏は次の知事選で敗れる。筋を通した社民党。参院選で有権者に見捨てられることはないはずだ(と思う)。
 その2。5月27日の全国知事会議も「良かったこと」に当たるだろう。
 沖縄で行われている米軍の訓練の受け入れ要請に、大阪府の橋下知事を除いて、反発が相次いだという。それだけ今の沖縄の状況が危険だと、どの知事も認識していることが明確になった。47都道府県みんながイヤなものを、じゃあ、どうするの? 引き受け手がいないのならば、根本にある日米安保条約に真剣に向き合わなければならない。
 やはり沖縄県民投票の頃の話。沖縄の基地負担を軽減する方法として、こんな提案があった。本土で、安保条約の是非を問う住民投票をする。そして、「安保賛成」の比率を都道府県ごとに集計し、高かった順で米軍基地を移設する。もちろん、賛成の比率が全体の半分に満たなければ、安保は見直しだ。改めて、真剣に検討すべきアイデアかもしれない。
 その3。心から「良かった」と思っているのが、「日米同盟・命」の論文を書かれた朝日新聞の主筆氏ではないだろうか。拙稿でも触れたが、アメリカ政府の「要人」「高官」の話をもとに、「中国に対する日米同盟の抑止力を保つために、沖縄への海兵隊駐留が必要だ」との趣旨を1面につづっていた。主張通りの展開に、さぞご満悦のことだろう。今ごろ、ワインで乾杯しているのかな、アメリカ政府高官と。
 権力と一体化した報道が幅を利かせていると、はしなくも「辺野古移設」の結論が証明してしまった。それが市民にはっきり見えたことは、悲しいけれど、今後のマスコミとの付き合い方を考えるうえで有益ではあった。

 

  

※コメントは承認制です。
第4回 沖縄を裏切らないために
〜今後へ向けて
」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    ついに「辺野古移設」を明記した日米共同声明が発表に。
    それでも「まだあきらめるわけにはいかない」との声が聞こえてきます。
    これ以上「沖縄を裏切らない」ために、何をすべきなのか?
    1人ひとりが、改めて考えてみるべきときでは。

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どん・わんたろう

どん・わんたろう:約20年間、現場一筋で幅広いジャンルを地道に取材し、「B級記者」を自認する。 派手なスクープや社内の出世には縁がないが、どんな原稿にも、きっちり気持ちを込めるのを身上にしている。関心のあるテーマは、憲法を中心に、基地問題や地方自治、冤罪など。 「犬になること」にあこがれ、ペンネームは仲良しだった犬の名にちなむ。「しごと」募集中。

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