マガ9学校やりました。

2011年6月4日(土)14:00〜17:00
@カタログハウス本社地下2階セミナーホール

町はなぜ原発を受け入れてきたのか? 原発の現場を歩いて

鎌田慧さん×雨宮処凛さん

『六ヶ所村の記録』をはじめ、35年にもわたり原発各地を歩いてまわったルポライターの鎌田慧さんと、プレカリアート運動、非正規労働の問題を積極的に取材、運動を進めてきた雨宮さんに登場いただき、「原発体制と労働者」の問題について、語っていただきました。戦後まもなくから今日まで「国策」として進められてきた「原発事業」が、どのようなやり方で、地域やそこに暮らす人々に押しつけられてきたのかを知る会となりました。

鎌田慧●かまた・さとし(ルポライター)1938年青森県生まれ。新聞、雑誌記者を経てフリーに。著書に『日本の原発危険地帯』(青志社)、『六ヶ所村の記録』『自動車絶望工場』(ともに講談社文庫)、『教育工場の子どもたち』『ぼくが世の中に学んだこと』(ともに岩波現代文庫)、『痛憤の現場を歩く』(金曜日)、『全記録炭鉱』(創森社)、『いま、連帯をもとめて』(大月書店)など著書多数。

雨宮処凛●あまみや・かりん(作家・活動家)1975年北海道生まれ。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。現在は新自由主義のもと、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材、執筆、運動中。『生きさせろ!難民化する若者たち』(太田出版)、『反撃カルチャープレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)など、著書多数。

トライチ●元原発の放射線管理員(派遣社員)。30代後半~40代前半にホームレス経験があり、その後介護職を経て現在求職中。

 第一部は、鎌田慧さんの講演会です。鎌田さんは、なぜご自身がずっと原発に反対してきたかというと、「原発は汚い。これほど非倫理的で、非人間的なものは無い」からだと断言されます。「原発はまず作る時からひどい。原発用の用地の買収は、うそとごまかしで行われ、漁業権の放棄も金と権力の圧力で強いる。そうして反対している住民も札束でほおを叩かれることによって、だんだんと声をあげられなくなっていく。『原発招致には反対』と言っていた志のある首長さんがいても、いつのまにか変節をしている場合もあります。福島原発でもそういうことがありました。『原発容認』するようになった裏には、娘さんが東電社員と結婚していたり、息子さんが東電に雇われていたりしているんですね。そのように原発推進派はあらゆる手段を使って原発を作る。そして出来てしまったらあとは『安心だ』を繰り返すだけなのです」と。またご自身の出身地である青森県に原発や核燃施設が増設されていった様についても詳細に語ってくれました。「青森の人の民度が低いから、ではないのです」という鎌田さんの言葉を、青森県知事選の結果だけを見て、決して批判はできない、そう思えるお話の内容でした。

 第二部は、雨宮処凛さんが入って、鎌田さんと対談スタイルで話を進めていきます。そこにスペシャルゲストとして、元原発労働者のトライチさんが登場。放射線管理員として4年間原発で働いた経験を持つトライチさんより、放射線管理員としてどんな仕事をしていたのかを、まず説明。しかし何よりびっくりしたのは、原子力発電所という場所は、ものすごくハイテクで最新技術を駆使した作業が行われている現場かと思いきや、いわゆる建設現場と同じでほとんどが労働者の手によって行われているローテクなことばかり。例えば、原発を一時停止して定期検査をするわけですが、その時、放射性物質を拭き取るために使われるのは、大量の「キムタオル」と呼ばれている紙ぞうきんだったりするわけです。また放射線の高い場所で作業するため、防護服を着て全面マスクを被るわけですが、それが暑くて息苦しくて、またトイレも管理区域にはないので(トライチさんが働いていた15年ほど前は)そこに垂れ流し、ということもあったそう。

 とにかく非人間的な労働環境で働かされているのは、90%が下請けや孫請けの人たちで、あとの10%がメーカーや電力会社の社員という構造になっているのだそう。日本の労働構造の一番深い底辺に原発労働がある、と鎌田さん。なぜ労働組合が原発推進派なのか、もこれによって理解ができます。

 第三部は、まずトライチさんから、「放射線管理区域」についての概念をみんなに知って欲しい、ということからそれについて簡単にレクチャー。「放射線管理区域のものは勝手に持ち出してはいけない、そのように法律で厳しく定められてきたはずのことなのに、福島を応援するというようなふれこみで【福島のものを食べて応援しよう】というキャンペーンもあるようですが、それは絶対にダメです。福島の農産物は、東電が全部買い取って補償をするべきなんです」と内部被爆のおそれを、訴えました。その後、会場からはたくさんの質問が寄せられ、時間いっぱいを使って、鎌田さん、雨宮さん、トライチさんが、答えられました。

 最後に、マガ9のボランティアスタッフのY子さんより、「下北半島プロジェクト」についてのアピールがありました。Y子さんの出身地である青森県・下北半島は、核燃料施設が集まっている場所であり、ここで脱原発の声を上げたい、鎌仲ひとみ監督の映画を下北半島で上映したい、という彼女の思いをみなさんにお伝えして、上映のためのカンパを募りました。この時集まった金額は、39,240円です。この場を借りて、Y子さんに代わってお礼申し上げます。

 そして「マガ9」では、Y子さんの思いをちゃんと実現するために「下北半島プロジェクト」を立ち上げます。詳細については、来週「マガ9」で発表します。

***

koe

アンケートに書いてくださった感想の一部を掲載いたします。(敬称略)

原発で働いていた方の生の貴重な声が聞けて良かった。「原発」はそこで作業する、その周りに住む「人間」を想定していない。命よりも金が優先される。放射線管理員が線量を計り、作業員が作業にいる。防護服が(暑くて息苦しくて)、作業員につめよられ、彼らの背中を開けた、という話。ため息が出た。道徳や美談、良心などでは解決できない現実があり、矛盾の中で翻弄されるのはいつも末端の国民(弱者)たちなのだということに憤りを感じる。
(藤澤裕子 舞台役者)

トライチさんのお話、すごくリアルで恐ろしさが倍増しました。本当にもうどうしたらいいのか全くわかりませんが、とにかく口惜しいので脱原発デモに参加し続けます。今後も鎌田さん、雨宮さんの本、ガッツで読ませていただきます!
(依田恭代 自由業)

原発の知識の一部を知ることが出来ました。非人間的な労働条件のもとに働く人のお陰で自分たちが安易な生活をむさぼっていたことに恐怖を感じます。
(柴垣喜子 主婦)

クリーンエネルギーを生むという原発は、極めて汚い仕組みと社会の弱みにつけ込む方法で広められてきたことを改めて理解しました。
(アダチマサアキ)

マスコミでは報道されない原発の裏事情が具体的にわかり「脱原発」は急務の課題であることをいっそう感じました。第二部の企画も大変興味深かった。実際に原発で作業していた方のお話は実に迫力があり、とても切なくなった。あまりに非人間的だ。看過できないと強く思った。
(匿名希望)

短時間でしたが、原発で作業されていた方の話を直接聞けたのは、貴重な体験でした。良心の人がひとりでも多くなりますように。
(匿名希望)

実際に原発で働かれている方のお話は大変興味深かったです。マスコミが決して報道しない証言を聞けて良かったです。政府やマスコミの誘導に乗る人が回りの大多数で、疑問を感じている人がいること知る意味でも参加して良かったです。
(匿名希望)

労働経験者のお話が直に聞けてすごくよかったです。
(樋口恵子 一般事務)

原発はその町に作る時点からごまかしがあり、維持する上での非人間的な労働などがあり、原発の恐ろしさを実感しました。そして実際に働いていた人の話を聞けたのは、貴重でした。
(吉永幸一郎 会社員)

原発は「きたない」。「非人間的で非倫理的である」という鎌田さんの言葉がよく響きました。「福島の野菜を食べて福島を支援しよう」というのは、間違えている、というトライチさんの言葉は、体験的であるだけに納得できました。また、現場での体験の話は、なかなか知り得ないものなので、参加して良かったです。とにかく廃炉にすべきです。
(匿名希望)

「原発事故が起きてから、言論が自由になった」と鎌田さんがお話されていました。電力会社のマスコミ対策には、かなりのお金をつぎ込んでいたんでしょうね。現在の果てしない海水注入みたいに。
(匿名希望)

参加できて本当に良かったです。とても有意義でした。さすが鎌田さん、雨宮さんです。原発の歴史や詳細など大変勉強になりました。トライチさんの現場を知るナマな声は、説得力があって、もっともっと聞きたい!!と思いました。
(匿名希望 会社員)

大変素晴らしかった、賛同できた。鎌田さんの長年のご苦労がしのばれました。私たちには聞こえてこない、現地や現場の声も聞くことができ、事の全容を理解する上で、大変参考になった。トライチさんもありがとう! もっと聞きたいです。
(匿名希望 主婦)

原発のある地域の問題と原発で働く労働者の問題は、どちらも構造的に底辺に矛盾をしわ寄せしていることがよくわかった。ただ、二部以降、鎌田さんの出番が少なくなってしまったことが残念だった。
(匿名希望 団体職員)

 

  

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