2011年3月11日に起きた東日本大震災の影響で、福島第一原子力発電所事故が発生。事故後、国会前や首相官邸前には、多くの人たちが集まり、抗議の声をあげました。一人ひとりが自分の意思で集まり、それぞれ独自のスタイルで行う抗議行動が生まれていったのです。事故から数年が経ったいまも、毎週金曜日には脱原発を求める人々が全国各地で集まっています。国会前「希望のエリア」も、そうした「金曜行動」のひとつ。「希望のエリア」のスタッフが、そこに集まる人々の思いを連載で伝えます。
第18回
1人という単位
1人からの行動
第2回の記事でも話題に上った横須賀のタクシー運転手さん。最近は、全国にある原発の核燃料棒を製造する、久里浜のGNF-J(グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン)工場前で、毎日時間帯を変えて、プラカードを持ってスタンディングをしているそうです。
時間帯を変えるのは、時には通勤中のサラリーマンに、時にはGNF-Jの社員に、時には下校時の学生さんにと幅広い層の人に見てもらうためだそうです。
そんな工夫をしながら「1人からの」行動を頑張る横須賀の運転手さん、毎日立っていると気持ちにも変化が出てきたと言います。
最初は、工場の社員の方々への抗議の敵対心が強かったそうですが、だんだん握手を求めて対話をしたくなってくるのだそうです。
1人という単位で行動することは心細くありますが、哲学的な気持ちが湧いてきて、大切なことを気づかせてもらえるのかもしれません。横須賀のお父さんのスピーチを聞いていると、いつも大切なことを教えてもらっているように思います。
築地豊洲移転問題も
今や、連日マスコミがこぞって築地豊洲移転問題をとりあげ、次から次へと問題が暴露されていますが、この移転問題反対運動も、最初はたった1人の反対行動から始まったと聞いています。その最初の1人が、反対運動の先頭に立っていらっしゃる築地の師匠こと中澤さんです。ドラム隊として希望のエリアにも参加していらっしゃるお仲間です。
大変なご苦労があったかと思いますが、今ようやく、長年の苦労が報われ始めたところなのだと思うと、私たちもあきらめずに頑張るぞと励まされます。
築地と原発、一見なんの関わりも無さそうですが、豊洲の地質汚染調査をした会社と、原発の活断層調査をした会社は同じ会社なんだとスピーチして下さったことがあります。
また、他の方のスピーチでは、 豊洲新市場に移転することで、卸・仲卸の仕組みという物流の流れが壊れて、それによってTPPを導入しやすくしようということなのだと教えて頂きました。このように、築地豊洲移転問題は「食の安全」の問題にとどまらず、原発問題そして、今国会で承認されようとしているTPP問題とも関わりがあるのです。
市民運動に参加していると、1つの問題が他の問題とも関わっているのだということを知ります。特に希望のエリアでは、様々なスピーチがされるので、抗議をしながらにしてそういうことを知る機会が多いと思います。
これが「民主主義の夜間学校」と言われる所以です。
そして、「1人から」行動する人達が集まる希望のエリアで学び、皆さんが手をつなぎ、協力しあって、政治を変えようとしているのです。
1+1を2より大きくするために
私たち、一人ひとりは、とても微力です。
「1人」という単位では動かすことができなくても、「1人から」という人達が行動し、手と手をとりあって繋がっていけば、一つひとつの結節点で1+1が2.5にも3にもなり、人数以上の力となって、動かなかったものを動かすことができるのだと思うのです。
1+1を2.5や3にするために必要なことはなんなのでしょうか?
そのヒントを横須賀のタクシー運転手さんが教えて下さったように思うのです。
「対話」を重ねていく、そのことがこれからの私たちに必要なことであり、大切なことなのかなと思います。
(国会前「希望のエリア」参加者/Mさん)
抗議から対話を求める心境に変化していくエピソードには、とても考えさせられました。さまざまな問題が起きている日本の社会ですが、立場の異なる者同士が互いの意見に耳を傾け合う「対話」こそが、いちばん欠けているもののように思います。