沖縄タイムス・新沖縄通信 別冊

 会員制市民ネット「デモクラTV」では「沖縄タイムス・新沖縄通信」という1時間番組を毎月最終月曜日午後8時からオンエアしています(以降はアーカイブでいつでも視聴可能です)。これは「沖縄タイムス」と「デモクラTV」の共同企画で、毎月の沖縄での出来事や、沖縄基地問題などを分かりやすく解説する番組です。さらに「別冊」として、テーマごとに短くまとめた30分間の解説番組を10本制作しました。このコーナーでは、その「別冊」を解説とともにご紹介していきます。

(第2回)

沖縄の基地負担

負担は面積だけなのか?
日本における在日米軍基地面積の沖縄に占める割合が実に74%であれば、当然のことながら、さまざまな問題が派生します。航空機事故や環境問題、米兵らによる事件・事故はあとを絶たず、基地を取り囲むフェンスを越えて住民の生活を脅かしています。
戦後71年経っても被害はなくならず、2016年には女性が米軍属の男によって無残にも殺される事件も起きました。またか! 多くの県民は「基地がある故の問題」と認識しており、繰り返される事件事故に「我慢は限界を超えた」と怒っているのです。
「6・30」「11・19」「8・13」など、沖縄の人たちは大事な日の日付を憶えています。順に、宮森小学校米軍機墜落事故、B52米戦略爆撃機墜落事故、沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故の日です。
1972年の復帰以後だけでも45件のも米軍機墜落事故が起きています。沖縄タイムスの調べでは、戦後、米軍機事故による死者が32人、負傷者は234人です。沖縄の戦後は、軍用機墜落などの基地被害の歴史そのものといっていいでしょう。
米軍機が昼夜、空を飛び回るので、騒音やそれに伴う健康、暮らしへの被害も大きいのです。嘉手納基地や普天間飛行場周辺では、爆音訴訟も次々に起こされています。ジェット戦闘機が主力の嘉手納基地では、2015年に4万7千回以上の騒音が発生、早朝でも目の前で車のクラクションを鳴らされるほどの爆音をまき散らしながら離発着を繰り返しています。早朝深夜は飛ばないという取り決めが一応はあるのですが、守られていないのが現状です。
騒音だけではなく、土壌汚染などの環境問題も深刻です。米軍への情報公開請求で、1998年から2015年までに、嘉手納基地から汚染水が48万リットル、ジェット燃料4万リットルの流出があったことが分かりました。汚染水が川から海に流れ出たことも分かっています。普天間でも2016年6月に約7千リットルの航空機燃料が漏れだす事故がありました。
基地内ではどんな汚染が進んでいるか、つまびらかにはされません。米軍が公表するかどうかを、まず判断するからです。日本側に通報したとしても、その通報と受けた件数が日米で食い違うというようなおかしなことも起こっています。
沖縄だけではなく、最近では神奈川県の相模原総合補給廠での爆発火災事故も記憶に新しいのですが、日本側は調査もできなければ、原因究明を求めても米側から何の報告もありません。
なぜそういうことになるのか。あの日米地位協定の壁が立ちはだかっているのです。施設の管理権は米側にあり、自国の領土内でも主権が及ばない土地があるのです。
日本以外の諸外国での地位協定では、自治体の基地への立ち入り調査を認めたり、米側に環境浄化を義務付けたり、原状回復費を米側が負担するなど、その国の主権を認めるような改善がなされています、しかし、なぜか日本政府は協定の改定には踏み出そうとしません。原状回復も日本国民の税金で行われることになっています。汚染した側ではなく、なぜ日本国民が負担しなければならないのでしょうか。
そして県民が常日頃、憤りを感じているのが、米兵らによる事件事故があとを絶たないことです。
復帰後だけでも、米兵らの犯罪件数は約5900件もあり、凶悪犯罪(殺人、強盗、強姦、放火)は574件、女性に対する性犯罪は130件以上です。復帰前の件数はすべて分かってはいないのですが、膨大な数にのぼるでしょう。凶悪犯罪については、米兵が起こす割合が県民より高いことは、統計データが示しています。
事故や犯罪に巻き込まれるたびに、県民の心は傷つきます。犯罪が繰り返されると、傷を覆いかけたかさぶたが引き剝がされ、痛みがぶり返すのです。これ以上の痛みには耐えられない、許せない、というのが切実な訴えです。
犯罪の温床には、米兵・軍属らの特権的取り扱いを定めた日米地位協定があるのだと、多くの県民は考えています。この協定は、やはり抜本改定が必要です。基地が集中する沖縄だからこそ、よく問題点が見えるのですが、県外で米兵らが事件事故を起こしても同じように協定は適用されます。日本全体の主権の問題と捉えることが大事です。
日米政府が繰り返す「再発防止」「教育の強化」という口約束は、県民はもう何百回何千回と聞かされ、信用していません。そもそも根本は、過重負担なのですから、その解消がなければ目に見えた改善はないでしょう。
事件事故が起こると日米の安全保障体制が揺るがされること自体、安全保障の脆弱性といえるでしょう。現状で日本の安全は保たれるだろうか、考えてみればすぐ分かることです。

(宮城栄作/沖縄タイムス東京支社編集部長)

 

  

※コメントは承認制です。
沖縄のことをもっと知ろう「沖縄タイムス・新沖縄通信 別冊」第2回」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    今年4月、まだ20歳の女性が米軍属の男性に殺されるという痛ましい事件がありました。このときの県民大会に集まったのは、主催者発表で6万5千人。「もう被害者を出したくない」という思いで集まった人たちです。こうした事件や事故は、やはり米軍基地があるから起こること。その上さらに、真相究明に立ちふさがるのが、不平等な日米地位協定の壁です。そしてこれは、沖縄だけに限ったことではありません。こうした状況は本当に変えられないのでしょうか?

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