今週の「マガジン9」

 5月1日付『朝日新聞』に「都内有名大、増える首都圏高卒 30年間で1.4倍に」との記事が掲載されました。それによると、東大、東工大、一橋大、早大、慶大の合格者(早大と慶大は一般入試のみ対象)の5大学における今春の入試合格者の75~55%を首都圏の高校出身者が占めたそうです。そして、その数は30年間で約1.4倍になったとのこと。

 背景には下宿生への仕送りが地方の家計に大きな負担となっていることが考えられます。毎年、大学合格者の出身高校ランキングを特集すると、週刊誌はよく売れるそうですが、上位を占める首都圏の私立校をみると、都市に住む富裕層の子息たちが増えているように思います。ステレオタイプな決めつけは要注意と自分に言い聞かせてはいるものの、同じような生活レベルで育ち、同じような進学校で学んだ若者たちが日本を背負うエリートになっていくとすれば、そうした集団から社会の多様性を求める政策は出にくくなるのではないかと懸念してしまうのです。

 その反面、これまで地元の秀才たちを東京の有名大学に一方的に送り込む立場にあった地方が変わるのではないかという期待もあります。東北に住む方がこんなことを言っていました。「わが県の親は子どもを育て上げるのに2000万円もかけているのに、一人前になったら東京にもっていかれてしまう」と。

 それを考えれば、「親子ともに地元志向が強まった(との指摘もある)」(上記記事)という傾向は悪いことではないでしょう。ネットの普及による中央と地方の情報格差の縮小も、大学進学の中央集権化を抑制しているのかもしれません。優秀な学生が地元にとどまり、誰も考えつかなかったアイデアをもって起業するといったケースが増えれば、地方の経済的自立は高まっていくでしょう。

 明治以降の「立身出世」を目的とした、先進国に追いつけ追い越せのキャッチアップ型の考え方が、高等教育においてもその終わりを見せ始めていると解釈できるのか。そう願いたい記事でした。

(芳地隆之)

 

  

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