映画、テレビ、舞台と幅広く活躍してきた女優の木内みどりさん。
3・11以降は、脱原発についても積極的に活動しています。
脱原発への思いや憲法のこと、政治や社会参加についてなど、
日々の暮らしや活動のなかで感じていること、気になっていることを
「本音」で綴っていただきます。不定期連載でお届けします。
第34回
2016年3月26日
「NO NUKES DAY」@代々木公園
2016年3月26日― NO NUKES DAY。
『原発のない未来へ! ―つながろう福島! 守ろういのち! 3.26全国大集会』@代々木公園。35,000人が参加した大きな集会で、司会させていただきました。
いろんな方がスピーチをされ、いろんなことが起きました。
オープニングコンサートで「NAMBA69」というロックバンドが演奏してくれたのですが、英語の歌が続くことに不満を感じた作家・澤地久枝さんがステージの袖に上がり音響スタッフとバンドスタッフに提案しました。「英語の歌ばっかりじゃ心がひとつにならない」「ここにいるみんなが一緒に歌える唄はありませんか?」言われた方は困惑。短い時間を効果的に使う工夫をしてきたプログラムですし、いきなり練習もしていない曲を演奏したくもないでしょう。
気を利かせたスタッフが私に間に入るよう言いに来て、私は澤地さんを説得に行きました。「時間が限られてることですし、今回は無理ですが次回への提案として届けます」と。演奏終わりで音響機材全てをステージ上から撤収、しかも出来る限り短時間で、という進行なので「この場所は危険ですから下に移動しましょう」と言うと、澤地さん「分かっています」。毅然とおっしゃいました。澤地さんの真っ直ぐなお気持ちはわかるし、でも、言われた方の「今、僕ら演奏中なんですよ、勘弁してくださいよ」って気持ちもわかる。
このハプニングはいろんなことを教えてくれました。私たち日本人には、みんなが一緒に歌える唄がない。
例えばアメリカ人が唄う「We Shall Over Come」。
フランス人がデモや集会で唄う「On lâche rien(あきらめない)」。
2014年9月30日、豪雨の中、深夜2時まで抗議した香港の学生たちの唄声。
確かに「うさぎ追いし彼の山、小鮒釣りし彼の川~」や、「夕焼け小焼けの赤とんぼ~」はどなたもが唄えるし心が繋がれる歌だけれど、抗議集会には合わない。難しい。
集会は、「首都圏反原発連合」のミサオ・レッドウルフさんの主催者挨拶から始まり、スピーチが続いていきました。
- 澤地久枝さん(作家/「さよなら原発」)
- 鎌田慧さん(ルポライター/「さよなら原発」)
- 佐藤和良さん(福島原発告訴団)
- 吉田明子さん(電力自由化について/「FoE Japan」)
- ジャンナ・フィロメンコさん(チェルノブイリ原発事故被災者でベラルーシから来てくださった)
- 中村嘉孝さん(原水爆禁止愛媛県協議会事務局長)
- 宮下正一さん(原子力発電に反対する福井県民会議・「もんじゅは絶対に絶対に動かしてはいけない!」と強く強く仰っていた)
- 村上達也さん(脱原発首長会議・元東海村村長)
それから、3月12日の福島での抗議集会の後、14日間かけてこの集会まで抗議デモや集会を続けてやってきてくれた
- 福島キャラバン隊のみなさん
そして、そして、この方、沖縄から来てくださった
- 山城博治さん(沖縄平和運動センター議長)
【スピーチ動画】(撮影: 木内)
そして、唄ってくださった。
迫力があった。35,000人の心が繋がった。歌詞を知らなくてもみんな唄っていた。いつの間にかステージ上のみんなが肩を組んでリズムよく右に左に揺れる。会場の方々も両手を広げ右に左に揺れている。
動画を撮ってYouTubeに載せてくださった方がいました。この歌は1968年5月13日にパリで30万人がデモをした「五月革命」で唄われた歌。作詞・作曲者不明だそうです。
この曲、「美しき五月のパリ」に日本語歌詞をつけて加藤登紀子さんが唄ってヒットしました。それを山城博治さんが沖縄・辺野古での抗議に合わせた歌詞に替えたのだそうです。
歌詞は「辺野古の海を守り抜くために。圧政迫るが立ち止まりはしない。今こそ立ち上がろう。今こそ奮い立とう。沖縄の未来は沖縄が拓く。戦さ世を拒み、平和に生きるため――」
「辺野古の海」や「沖縄」をその時々の場所の名前に変化させていけばいいんじゃないかしら。この歌は唄っても唄わなくても体を揺らしたりできるし、隣りの人と方を組んだりもできる。調子がよくて元気が出る。
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記録のためにここに載せておきます。朝日新聞3月16日朝刊に取材記事が掲載されました。
「脱原発」「反体制」の人物をこの大きさで載せるのは異例、朝日新聞やるじゃないかという反応が多かったとききました。読んでみてください。
コラムで紹介されていた「沖縄 いまこそ立ち上がろう」を聴くと、いつでも気持ちが辺野古ゲート前に引き戻されるようです。音楽には、たしかにそんな力があるのだと思います。
この大集会では、木内さんが司会をつとめた「第1ステージ」以外にも2つのステージがあり、避難している方や原発労働者、インドやトルコからのゲスト、安保関連法案に反対するママの会やSEALDsメンバーからのスピーチもあり、国境も世代もイシューも超えての集会でした。これから、日本でもみんなが歌える歌ができていくのかもしれません。