今週末の3月6日(日)、東京・銀座でまたもヘイトスピーチ(差別煽動)デモが行なわれようとしている。
これに抗議するカウンターの今回の対応は一風変わっている。いつもならば、ヘイトスピーチを撒き散らすレイシストとそれを叱りつけ抗議するカウンターとで騒然となってしまうが、地元との協議のうえ、あえて声を上げずにプラカードや横断幕による抗議をしようというのだ。
筆者も驚いたのだが、昨年行なわれた関東でのヘイトデモ27件のうち、日本を代表する繁華街である銀座でのそれは14回。半数以上という異常な多さだ(東京都中央区ではほかに日本橋で2回)。
こうした状況を憂いたのが、「2015年夏、国会前に集うプロテスターに水を配るために集った野良あざらし集団」を名乗るTQC(東京給水クルー)の方々。銀座の地元である中央区、中央区議会議員、地元の商店会などと話し合ってきたという。
中央区で頻発する現況、ブランドイメージの毀損、困惑する商店会や地元住民、さらに表現の自由との兼ね合い…。資料を作成し、昨年秋から何度も話し合って出た結論が、声を上げない「サイレントカウンター」だ。その代わりにプラカードや横断幕などで抗議する。
3年前の新大久保でヘイトスピーチに対抗する手段として、沿道を差別反対のプラカードで埋める平和的な意思表示アクションとして生まれた「プラカ隊」が、場所を移して銀座で復活するのだ。
大声で叱りつける抗議スタイルが下品だ、という人も、これなら参加しやすいだろう。むしろ、ヘイトのあまりの酷さに、そういう人こそ声を荒らげて抗議したくなるかもしれないが、今回は地元商店会や観光客、買物客に配慮して封印しよう。
目をつぶっていても、耳を塞いでいても、プラカードを掲げその場に立っているだけで力になるカウンター。大勢が集まることで「ヘイトを許さない街・銀座」を可視化させよう。多くの人の参加を、心から望まずにはいられない。
そして、このように地道な手続きを踏んで地元の皆さんとの共通認識を醸成し、街全体でのカウンターに広げる努力を惜しまないTQCの方々に心からの敬意を表する。
(中津十三)
※ カウンターへの参加ご希望の方は、TQCのこちらのページをご覧ください。呼びかけや注意事項が書いてあります。