- 特別企画 -

【スタッフコラム】

福島原発さいたま訴訟報告(6)

福島原発さいたま訴訟を支援する会
北浦恵美

 福島原発さいたま訴訟の次回期日ですが、1月27日午後3時から第9回目の期日が開かれます。

 昨年12月の第8回期日では、裁判での原告本人陳述がありました。原告ご本人が裁判の場で、心の底からの想いを自らの言葉で語られるのを聞くとき、自分はなにも被害のことをわかっていない、と改めて気づかされ、その苦しみはどんなにか・・・と思うことになります。

 第8回の期日で語られた原告陳述は、自主避難を強いられているお母さんの陳述だったのですが、母としての想いが胸に迫りました。
 彼女は、子どもたちを守りたい一心で2011年3月15日に避難。でも、いつからか、避難指示区域からの避難と、「自主避難」とにわけられ、肩身の狭い思いから避難所を出ることになりました。

***

 (以下原告陳述より)

 「夫の会社は再開しましたが、私は自分の仕事よりも子どもを守ることを優先し、子どもと私だけ避難することにし、私たち家族はバラバラの生活が始まりました」

 そして二重生活が長くなり、すれ違いが続く中で離婚。生活は追い詰められていきます。

 「子どもたちも、環境の変化で知らず知らずのうちに色々な我慢をして負担になっていたのだと思いますが、ぜんそくの悪化、腹痛、発熱、鼻血など、度々体の不調を訴え、病院通いが増え、情緒も不安定になりました。私は仕事を終え、子どもたちを病院に連れて行き、お風呂に入れ、夕飯を食べさせ、寝かせる、それで精一杯でした。
 先の見えない不安感が襲い、仕事で疲れているはずなのに眠れない日々。突然襲われるめまいや浮遊感、精神的にも肉体的にもギリギリの生活の中、イライラして子どもに怒鳴ってしまうことが増え、子どもに優しくできない罪悪感にさいなまれました。
 私は子どもたちを守るために避難したはずなのに、親としてやっていいことと悪いこともわからなくなって、子どもを十分に守れない。そんな精神状態に陥ってしまいました。
 避難生活は家族の住む場所をバラバラにしただけでなく、家族の心までもバラバラにしてしまったのです。穏やかな日常、子育ての方針、誰にとっても当然の生活を、原発事故ですべて失いました。
 避難生活が2年になった平成25年6月に限界が来てしまい、仕事に行けなくなりました。周囲の全ての人から責められているような気がして、外に出るのが怖くなってしまいました。
 (自主避難とされたことで)自分の選択が世の中から否定され、いけないことをしているのだろうかとますます自分を責めました」

 「低線量被ばくについては、科学的にはまだまだ解明されていないことが沢山あります。健康被害を及ぼす可能性が少しでもあるならば、それを回避したいと考えるのは親としては当然のことだと思います。しかし、国が一方的に線引きした避難指示区域以外は『自主避難』と呼ばれ、何の補償もされません。『ホットスポット』と呼ばれる、現に空間線量の高い地域からの避難も『自主避難』です。
 私の心からの願いは、もちろん事故前の線量に戻してほしいということです。でも現実にはそれは不可能です。だからせめて、東電と国に対しては、きちんと謝って欲しいのです。今まで福島の住民に沢山の嘘をつき、情報を隠して、やるべき安全対策を怠った。その結果、福島の人たちを分断し、私たちが築いてきたささやかな幸せを全て奪った。その責任をきちんと認めて、正面から謝って欲しいのです」

***

 そして最後に、幼い娘さんの書いた作文を読んでくれました。

 (娘さんの作文より)

 私は地震と聞くと体が震えます。
 友達と別れなくちゃいけなくなった。
 ママの頭がおかしくなっちゃった。

 勇気をもって、被害の実態を真正面から語ってくださった言葉の一つひとつが、突き刺さるようにその場にいたすべての人へ投げかけられました。
 いつも無表情な裁判長の表情が変わっていました。

 彼女がここに立つまでに、どんなにつらい長い時を経たことか、そして、それを乗り越えることがどんなに大変なことか、そして、これからも、いくつもの壁が立ちはだかるのか。
 それは、心ない言葉だったり、住宅支援打ち切りだったり、「避難する必要はない」とする国や東電であり、その主張をうのみにする動きです。
 この裁判が、それらの壁を乗り越える助けとなることを願います。
 そして、彼女のこの日の陳述が、きっと、裁判所を動かすだろう、と思います。

 一緒に裁判所に来ていた子どもたちは、期日後の報告集会で皆から大きな拍手を受けたお母さんを見て、誇らしく思ったことだろう、と思います。

 どうぞ皆様、傍聴に足をお運びくださいますようお願いいたします。

 次回期日は
 ・1月27日(水)午後3時〜

 次々回以降も決まりました。
 ・4月13日(水)午後3時〜
 ・6月22日(水)午後3時〜

 孤軍奮闘する原告への何よりの励ましが満員の傍聴席。裁判所や被告への強いプレッシャーともなります。

 ぜひ、皆様、傍聴においでください。


〈福島原発さいたま訴訟第9回口頭弁論及び報告集会〉

とき:1月27日(水) 午後3時開廷  さいたま地裁101号法廷
※傍聴券が配られる予定です。午後2時半までにさいたま地裁B棟前においでください。

※裁判終了後弁護団主催の報告集会があります。
場所:埼玉総合法律事務所3階会議室
内容:口頭弁論期日の説明、原告側の主張の概要

〈これまでの関連コラム〉
→ 2017/03/15 福島原発さいたま訴訟報告(10)
→ 2016/08/03 福島原発さいたま訴訟報告(9)
→ 2016/04/06 福島原発さいたま訴訟報告(8)
→ 2016/04/06 福島原発さいたま訴訟報告(7)
→ 2016/01/20 福島原発さいたま訴訟報告(6)
→ 2015/11/18 福島原発さいたま訴訟報告(5)
→ 2015/06/24 福島原発さいたま訴訟報告(4)
→ 2015/06/24 福島原発さいたま訴訟報告(3)
→ 2015/04/15 福島原発さいたま訴訟報告(2)
→ 2015/02/11 福島原発さいたま訴訟報告(1)
→ 2014/11/26 福島原発さいたま訴訟に思うこと
→ 2014/05/28 福島原発さいたま訴訟、第1回期日とその支援のこと

 

  

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