東京での暮らしを後にして、故郷である滋賀県米原市にUターンした渡部秀夫さんと優さんのご夫婦。自分たちの足もとを見つめながら、地域での新しい交友関係を作り、場づくりに挑戦しています。そんな暮らしの日々から考えたことを綴ったり、またそこで知り合った人たちや面白い試みについても紹介していくコラムです。不定期掲載でお送りします。
第2回
「アメリカ・柏原」
アメリカで、改めて感じた「食」と向き合い方
年末年始はマガ9コンテンツ「つながって考えよう」にも登場する今村登さんに介助者として付いて、アメリカで過ごしました。
訪れたバークレイの街の印象はスウェーデンで感じたものと似ていて、車椅子への配慮がゆき届いていました。ヨセミテやエヴァーグレイズといった国立公園でも同様の印象で、日本のように「車椅子だから無理」と諦めざるを得ないことがほとんどなく、車椅子利用者であっても選択の自由が尊重されていました。多様性を認め合える社会は居心地が良いなと感じます。
その反面「食」については、この国には住めないと思ったほど自分の食への向き合い方とは違っていました。ぼくにとっての「食」とは「いのちをいただくこと」に他ならず、ただ腹がふくれ、記号化された栄養を摂れたら良いというものではありません。
高カロリーな食べ物、ジャンクフード、栄養添加食品があふれる反面、無脂肪やダイエットを謳ったもの、サプリメントやGMOが並ぶ状況からは人間の傲りを垣間見ました。
アメリカ人は陽気で親切な人が多く、コミュニケイションに長けていると感じたのですが、食を通して見えてくるアメリカ社会は消費型で効率化を優先し、数量的価値で物事をとらえ、生命さえも産業化し、湯浅誠さんの言うところの「溜め」がないように見えました。We are 99%、オキュパイ運動とはその反動に思えます。
日本もこのままではアメリカのようになってしまうけれど今なら修正が利くと、そう感じた2週間強の滞在でした。
2/11におこなう「間#6 オキュパイ・ラブ上映会」(後述)では、映画をみた後にその辺のこともおりまぜながら話し合いたいと思っています。
ヨセミテにて
岐阜県郡上市と柏原の「まちづくり」
最後に、お隣の岐阜県にある郡上市でおこなわれた「レッテンバッハ村 村長講演会 自治と自立の村の物語――地域が生き返り、若者が戻ってきた――」に参加して感じたこと。
村の素晴らしい取り組みと成果のお話は大変参考になり良かったのですが、それにも増して会場を包む熱気に大いに刺激を受けました。
郡上市の明宝という山間の地でおこなわれた、まちづくりをテーマにした会合に300人弱の人が集まり、その大半は地元の方という状況に感心しました。
講演後のパネルディスカッションには地元で活躍されている方々四名が登壇ならぬ、ステージ上のコタツに「登暖」。「レッテンバッハ村より幸せなふるさとを郡上でつくろまいか!」をテーマに建設的な議論が交わされていました。
そこには、「誰がやるの? 無理なんじゃないの?」を禁句にするという、司会を担当する「NPOななしんぼ」がおこなう「MOSO塾」でのルールが課せられていました。これは僕たちの住む柏原で開かれて1年になる活性化懇話会にも取り入れてみたいと思います。
第1回目は70人ほどの参加者がいた懇話会。しかし、他の地域行事と同じく「しかたなく。頼まれて」という理由で来ている人も多く、二回目は20人弱、3回目からは地域住民の参加者はぼくたちを入れて5人ほどで、やめようかという声もでてきました。
そんな中、地域の女性たちが中心となって、地産の物で特産物を作って後世に渡せる産業にしようという集まりがうまれました。定期的にパン作りなどの勉強会を開き、わいわいと楽しみながら活動されています。しかめっ面をして「ここにはなにもない。できない」ばかりを言う男連中とは生命力が違います。たくましい!
そして、前回取り上げさせてもらった「ここや」さん。地域での知名度も上がり、住民主催のイベントが多くおこなわれるようになりました。2月からは、ゲストハウスオープンへ向けて2階部分の掃除が始まります。
同じく前回取り上げた伊吹山スロービレッジさんは、小水力発電の設置と利用を実現するため資源エネルギー庁のバックアップを得て精力的に取り組みを進めておられます。
その合間をぬって、「自然栽培米食べ比べ会」や「味噌作り」「餅つき」等、地域の風習を大切にし見直すような催しを開催されています。
僕たちもここで、イベントを開催します。
2月2日(日)
間#5.1 ZOURI WORK SHOP ――藁から作る手づくり草履―
2月11日(火・祝)
間#6 上映会の間 オキュパイ・ラブ
3月2日(日)
間#7 上映会の間 カンタ!ティモール
周りの人の支援あってこその活動なのでありがたいことだと思います。
米を育てたことで「いのちを育むことの豊かさ」を体感し、それによって、衣食住をお金ではなく自分の手でまかなえるようになりたいと強く思うようになりました。
そこにはオカネではなく、ヒトとヒトとの豊かな「間」があると思います。
一つひとつの「食」を、大事にすること。お金だけではない、人と人とのつながりを丁寧に紡いでいくこと。忙しく流れる毎日の中では、ついこぼれ落ちてしまいそうなことばかりですが…。なんとか少しでも、心がけたいな、と思います。寒い滋賀からの便り、皆さんのご感想もぜひ。