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その41
今週のネタ というより
2005年話題総集編 (後半戦!)

冷たい風が吹き抜ける師走です。忘年会帰りのおじさんやおねえさんたちが、さざめきながら、でも肩をすくめて通ります。忘れたいことの多かった今年でしたね。そんな言葉をかけたい気分になりました。
九の鐘が、旧の鐘、にならないよう、新しい年も乗り越えていかなければなりませんよね。
一年間、このコラムにつきあってくださって、本当にありがとうございました。もう少し、もうしばらく、頑張りたいと思っています。

では元気を出して、総集編・後半戦に突入しましょう!

「小泉選挙」
先週の前半戦は「郵政民営化」で終わった。となれば、当然、後半戦は9月11日の衆議院議員選挙、ここから始めるしかない。しかしこの話題、ホントーに気が重い。人命ということを抜きに考えれば、もしかしたら、ニッポンの9.11は、アメリカの9.11よりも悲惨な結果をもたらすかもしれない。

だって、こんなデタラメな選挙は、いまだかつてなかったぜ。 「これは郵政民営化是か非かの国民投票である」と雄叫びをあげる小泉サン。これ、誰がどう考えてもおかしい。
あの参議院での郵政民営化案否決は、つまるところ、自民党内のゴタゴタ、権力争いに過ぎなかったじゃないか。自民党という一つの党内の争いを、まんまと国民投票にすり替えた政治的詐欺だ。その詐欺に、マスコミも国民もまんまとひっかかった。
郵政民営化は、絶対に、国民投票になるようなテーマじゃなかったのだ。もっと大事なテーマは置き忘れられたまま。

特に、テレビはひどかった。 刺客マドンナ小泉劇場除名聖子カリスマ主婦元舛添妻の官僚経済評論家美女ユカリするくノ一ホリエモン抵抗勢力新党なんじゃらかんじゃらしっちゃかめっちゃかもうどうにでもなれだ、と蜂の巣をつついたような大騒ぎ。
肝心の政策はどっかへ吹っ飛んだ。

年金増税景気回復靖国問題憲法改定自民草案孤立外交反中嫌韓拉致問題六者協議国連安保理常任理事国対米追随米軍再編沖縄基地移転普天間辺野古福祉切捨国債発行借金予算自衛隊海外派兵代議士汚職環境問題京都議定書道路公団官僚天国社会保険庁その他いっぱいいっぱい!

どーお? ちょっと考えただけで、こんなにも問題山積なのに、みーんなほっぽらかしの見ない振り、どっかおかしくないか?
なのにテレビは、政治茶番劇の大盤振る舞い。結果、自民党圧勝296議席。そして出てきた小泉チルドレン。この方たち、言葉の本当の意味での、チルドレン。つまり、ただのガキ! 
見てごらんよ杉村大蔵。もう名前も思い出せないピンクジャケットの舞い上がりオバサン。不倫報道のユカリする? 野党党首罵倒の元ミス東大(ウッソーッ?)。キンキラドレスで福助笑顔の元国連軍縮大使、その他大勢。
呆れ果てて怒る気も失せる。
「国家はその国民の民度に応じた程度の政治家しか持てない」というが、「国家はその国のマスコミの程度ぐらいの政府しか持てない」というのもまた、真実かもしれない。

「靖国参拝」

選挙圧勝の余裕をもって、小泉サン、10月17日に靖国参拝。今度は背広でポケットから小銭をポイッ。
「首相だからってどこへ参拝しようが自由だろっ! 彼には思想信条の自由は認めないのか」と威丈高な方もいるけれど、首相だからこそ問題なのだ。公用車を使い、多数の機動隊員を配備しての参拝が、一般人の参拝と同じであるわけがない。政権を握る者、彼は政教分離の原則を誰よりも厳格に守らねばならないのだ。
とまあ、これは原則論。

ただ、私がどうにも納得できないのは、二点。
[1]「二度と戦争を起こしてはならないという不戦の気持ちを込めて参拝してきた」というのが、小泉流のいつもの釈明。しかし、世界中のどこの国よりも素早く「ブッシュ大統領のテロとの戦争を全面的に支持する」と表明したのは小泉首相だった。不戦の気持ちとブッシュの戦争支持とが、矛盾なくつながるというこの人の頭の中身に、なぜみんな疑問を感じないのか。
[2]「心ならずも戦場に散った多くの人たちの御霊を慰めるために参拝してきた」と、これもまたお決まりのセリフ。「心ならずも」ということは、「行きたくはなかったが強制的に戦場に送り込まれた」ということだろう。では「送り込んだ」のは誰だったのか。それこそ、A級戦犯に代表されるような、戦争指導者たちではなかったか。
つまり、ここには戦場に駆り出されたものと駆り出したものとが、一緒に祀られているのだ。それを一緒に拝んでしまう。「心ならずも戦場で散った若き兵士たち」は、それで喜ぶのだろうか?
どうしても参拝したいというのなら、まず、この合祀を解消してから訪れるのが筋ではないのか。

「小さな政府」  
このところ、しきりに政府が口にする言葉だ。公務員削減や歳出カットで政府の規模を小さくして、国民負担の軽減を図る、ということだろう。  
しかし、それはいい、と単純に乗ってしまってはいけない。美味しい話には当然、裏がある。福祉サービスの切り下げ、健康保険や介護保険の負担増、さらには消費税を含む増税路線(大企業への法人税は引き下げの方向らしい)。  
障害者団体の人たちが泣いて抗議した障害者自立支援法。実は障害者たちに食費などの負担増を押し付けるものだった。それが、「小さな政府」の本当のところもしれない。  
郵政民営化で20万人以上の公務員削減が実現され、歳出が減った、なんてのもマヤカシ。郵便局はしっかりと稼いで黒字であり、税金なんか投入されていなかった。だから、それで我々国民の税金が浮いた、という事実はない。  
まやかしとごまかしで口当たりのいい言葉を並べて見せたのが、現政府の小さい政府論だ。史上いまだかつてない低金利政策(普通預金の金利は限りなくゼロに近い)で年金生活者たちを痛めつけながら、それでもまだ足りなくて福祉切捨て増税路線をひた走る、小泉&竹中の小さい政府論など、少しも国民のためになどならないと思うのだ。

「下流社会」
で、今年の流行語にもなったのが、新書のこのタイトル。日本にはっきりと下流社会が生まれているという。
つまり、去年あたりから流行りだした勝ち組・負け組のうちの負け組層の大増加。リストラで仕事を失くした者たち、正社員への道を閉ざされた派遣やフリーター、そして働く気力さえ失いつつあるニートと呼ばれる若年層。
これは、明らかに現政府の政策的結果なのだ。日本社会の二層分化。富裕層と、それを支える(役目を負わされた)貧困層。新自由主義とか新資本主義市場第一主義などという言葉で飾られた、経済的な支配層と被支配層の新たな出現。もちろん、支配層はほんの一握り、あとの絶対的多数は被支配側の貧困層、すなわち下流社会である。
これが、小泉・竹中改革の実態なのだ。事実、竹中ヘイゾー大臣は「賃上げはまだ早い」とインタビューで述べている。

「前原民主党代表」
自民圧勝のあとを受けた9月17日の民主党代表選。二票差で菅直人氏を破ったのが、松下政経塾出身の右派の若手・前原誠司氏。その後のこの方の言動は、先週も書いたからもういいや、ウンザリだ。
ああ、もう好き勝手におやんなさい、民主党さま。 一縷の望みをかけて民主党に投票していたリベラルな国民は、次はどこへ漂流するのか。

「米国産牛肉解禁」
暮れも押しつまって、ついに決定。やっぱ、国民の命よりもアメリカのご意向のほうが大切なのね、とシミジミ。
でもね、日本産の牛肉をアメリカが輸入禁止にしたままだってこと、アンタ、知ってた? 理由? それは、日本でBSEが発生したときの措置がまだ取られたままってことよ。

「自民党新憲法案」

これについては、このコラムでもその問題点を何回かにわたって指摘してきたから、今回は繰り返さない。しかしそれでも、最後にこれだけは書いておかなければならない点がある。

第九章 改正(自民党案)
第九十六条 この憲法の改正は衆議院、又は参議院の議員の発議に基づき、各議院の総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票において、その
過半数の賛成を必要とする。(二項省略)

どう、アブナイだろ? 何がって、「総議員の過半数」だよ、過半数。
ちなみに現行憲法ではこの条項は次のようになっている。

第九章 改正(現行憲法)
第九十六条(1)この憲法の改正は、各議院の総議員の
三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はわれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。(二項省略)

比べてみれば一目瞭然。憲法改定への発議(変えようぜぇ、と国会が国民に呼びかけること。改憲国民投票の前提となる)の条件が、大幅に緩和されるということ。  
今は、全国会議員の三分の二が賛成しなければ、国民投票そのものが実施できないのに、自民案ではそれが過半数になっちまってる。もうお分かりね。
選挙で過半数を取れば、いつでもいくらでも「憲法を変えましょうよぉ」と言い出せるのだ。簡単じゃん。  
つまり、一回ではあまり露骨な改定はできなくても、少しずつ国民を馴らしていって、最後にはドスーンッと軍国主義的な国家を作り上げるってことも可能なわけだ。  
「心配しすぎだろ、バーカ」という声が聞こえてきそうだが、いつだって悪魔は天使の笑顔で近づいてくる。忘れないほうがいい。
ほんの60年前の日本が犯した過ちを、ペラペラ首相やヘラヘラ幹事長に繰り返させてはならないんだ、ホントに。

だいたい、改憲が、今の日本のような平時の国で行われるってことは、世界的に見ても殆ど例がない。本来、改憲は「革命」「クーデター」「建国」「政体移行」「侵略」「征服」などの非常時に行われるのが普通なのだ。
たとえば、フランス革命での君主制から共和制への移行時や、今回のイラク政権崩壊と新政府発足による改憲などがその例だ。今の日本に、差し迫ったどんな必要があるというのか。  
政治家の個人的な名誉欲で憲法が変えられるなど、絶対にあってはならないことだ。

「事件多発」
自民党新憲法案批判で、このコラムは本年終了にしようと思ったのだが、年末に来て、やたらと切ない事件が続く。
姉歯(こんな珍しい姓は初めてだ)偽造データに端を発した政官民ごっちゃ混ぜの大疑惑。またもや泣くのは、必死にお金を貯めて我が家の夢を見た庶民たち。
幼女が狙われる犯罪が相次いでいる。また、母親に毒薬を飲ませその状況をネットで公開したという少女、同級生を殺害した町田の高校一年生---。
なんだか、私たち国民の心そのものが、崩壊し始めているんじゃないかと、いささか肌寒くなる。
しかし、ここで確認しておかなければならないことは、この数年、日本での凶悪犯罪の件数は確実に減少傾向にあるということだ。ひとつひとつの犯罪は許しがたいが、どこかの知事が吠え立てるような、治安が激しく悪化しているという状況にはない。ところが犯罪の防止を理由に、私たちのプライバシーを抑圧するような法律や施策が目白押しなのだ。
住民基本台帳法、国民保護法、盗聴法、人権保護法(に名を借りた人権抑圧法)、共謀罪などなど、次々と私たちのプライバシーに踏み込んで思想や内心の自由を縛ろうとする。また、いまや街中の監視カメラや通行車両を記録するオービスなる装置の増加は、凄まじい勢い。
どこにいても私たちは監視されている。いつの間にか私たちは、安全という錦の御旗の前に、プライバシーを放棄させられてしまったのだ。これでいいのか。どこかで歯止めをかけなければ、本当に危ない。
さらに、豪雪----。

山形県の羽越本線では強風のため列車脱線事故、死者まで出た。新潟の地震被災地にも容赦なく雪は降り積む。ここでも多数の死者。
また、ニュースとしては大きく報道されなかったけれど、政治の届かぬ場所で貧困やそれが引き起こした心の崩壊で死んでいった人たちが、例年以上に多い年だった。辛い一年だったと、心底、思う。

だから、祈りつつ、今年はここで筆を擱きます(いや、筆ではなく、キーボードですけどね)。
書きたいこと、書いておかなければならないこと、もっと沢山あるのですが、私も、年末の仕事の忙しさに戻らなければなりません。
言い古されたセリフですけど、来年こそは明るい希望を書き込んで終わりたい、本当にそう思います。
それではみなさん、良いお年を。
(一年間のご愛読の感謝を込めて、ツッコミ人)

イラスト
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