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こども医者毛利子来の『狸穴から』:バックナンバーへ

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「マガジン9条」の発起人の1人でもある小児科医、「たぬき先生」こと毛利子来先生。
お仕事や暮らしの中で感じた諸々、文化のあり方や人間の生き方について、
ちょっぴり辛口に綴るエッセイです。

こども医者毛利子来の『狸穴から』

もうり・たねき(小児科医) 1929年生まれ.岡山医科大学卒業。東京の原宿で小児科医院開業。子どもと親の立場からの社会的な発言・活動も多い。「ワクチントーク全国」元代表、「ダイオキシン環境ホルモン対策国民会議」元副代表などを経て、現在は雑誌「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」編集代表、『マガジン9条』発起人などを務める。著書に『ひとりひとりのお産と育児の本』(1987,毎日出版文化賞)、『赤ちゃんのいる暮らし』、『幼い子のいる暮らし』などがある。最近は、友人でもある小児科医・山田真氏との共著である『育育児典』(岩波書店)が、評判を読んでいる。HP「たぬき先生のお部屋」

テレビ大好き

 「テレビでいっていた」と、よく聞かされる。
 そうおっしゃる顔は、ちょっぴり得意気だ。
 「どうだい、すごいことだろう」といった感じ。
 たまたま、そのテレビを見ていなかったほうは、「へぇ〜」と、感心してみせるほかはない。

 どうやら、それほどに、人々は、テレビにいかれている。
 話題のテレビを見ていないだけで、後れを取った気分になる。
 まるで、テレビなしでは、満足に暮らせないかのようだ。

 確かにテレビは面白い。情報源としても、新聞より、はるかに早い。動画だから、ラジオより、迫真性がある。
 ニュースなんかで現場の映像を見せられれば、もうイチコロだ。
 だが、「テレビでいっていた」ことは、常に、本当なのだろうか。そこで見せられる映像は、十分に、事実を物語っているのだろうか。
 さらには、テレビではいわないことや見せない事実さえあるのではないか。

 早い話、流行りの健康番組では、医学的に不確かなことや間違っていることまで、まことしやかに説かれている場面が目立つ。
 そのためだろう、多少は「自粛」する傾向にあるようだが、まだまだ大勢は変わっていない。

 ニュースの映像にしても、撮るときの意図と視角によって、相当に印象が異なってくるはずだ。
 いわゆるテロ事件では、それを起こす側と起こされる側の、どちらの立場で取材するかで、まったく逆の印象がもたらされるにちがいない。
 まして、国内外の政治と経済のあり方を根本から覆すような動きともなれば、テレビは腰を引かざるをえないだろう。

 やっぱり「テレビ大好き」には、ワナがしかけられている。
 そのことを知ったうえで、テレビは楽しみたいものではある。

テレビは面白い、便利、役に立つ。
そう思うことも多いからこそ「正しい付き合い方」を身につけたいもの。
皆さんは、どんなふうにテレビと付き合っていますか?
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