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こども医者毛利子来の『狸穴から』:バックナンバーへ

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「マガジン9条」の発起人の1人でもある小児科医、「たぬき先生」こと毛利子来先生。
お仕事や暮らしの中で感じた諸々、文化のあり方や人間の生き方について、
ちょっぴり辛口に綴るエッセイです。

こども医者毛利子来の『狸穴から』(1)

もうり・たねき(小児科医) 1929年生まれ.岡山医科大学卒業。東京の原宿で小児科医院開業。子どもと親の立場からの社会的な発言・活動も多い。「ワクチントーク全国」元代表、「ダイオキシン環境ホルモン対策国民会議」元副代表などを経て、現在は雑誌「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」編集代表、『マガジン9条』発起人など務める。著書に『ひとりひとりのお産と育児の本』(1987,毎日出版文化賞)、『赤ちゃんのいる暮らし』、『幼い子のいる暮らし』などがある。最近は、友人でもある小児科医・山田真氏との共著である『育育児典』(岩波書店)が、評判を読んでいる。HP「たぬき先生のお部屋」

薬害で免責されていること

 血液製剤によるC型肝炎に苦しむ人たちへの補償が、ようやく決着した。
 政府は責任を認めて謝り、メーカーも補償金を分担することになった。
 被害者のねばり強い抗議運動が実ったものだ。あらためて、運動の持つ底力を知る。

 だが、それにしても、釈然としない思いが残らざるをえない。

 どうして、そんな血液製剤を投与した医者が問われないのか。

 もちろん、血液製剤が必要な場合は少なくないだろう。そして、政府に認可された製剤である以上、有害とは考えにくかったろう。
 けれど、はたして、使い過ぎてはいなかったか。安易に使ってはいなかったか。
 大量の出血がなくても、また大量の出血が予想されない場合でも、ただただ「念のため」の輸血をしてはいなかったか。
 この国の医者の薬剤の使い方を見ていると、そんな疑念が鎌首をもたげてくる。
 それが、あられもない勘ぐりなら、詫びなければならないが。

 しかし、だからといって、医者を、頭から、免責しているのはどんなものか。
 今回の薬害では、くだんの血液製剤の使われかたは、詳細に調べられてしかるべきだろう。
 そして、この際、血液製剤にかぎらず、全ての薬剤の使いかたについて、きびしい調査を始めるべきだと思う。

 というのは、これまでも、医者の安易な薬の使いかたによる薬害が多く発生しているからだ。
 薬害エイズをはじめとして、MMRに端的に露呈された予防接種の害、そして最近では世界で最も使用量の多いタミフルの副作用など、その例に事欠かない。

 だからこそ、医者を免責してはならない。薬の使いかた全般にわたって、反省してもらわなければならないのだ。

 ぼくも医者だから、辛いことではあるけれど、その試練を経なければ、このまま威張りつづけてはいられなくなると覚悟している。

お医者さんに言われれば、疑いもなく投薬を受けてしまうのが患者側の常。
果たしてその薬、本当に必要なものなのでしょうか。
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