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マガ9スポーツコラム No.001

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  みんなが大好きなスポーツ!「マガ9」スタッフだってそうです。
だから時々、メディアで報じられているスポーツネタのあれこれに、
突っ込みを入れたくなったり、持論を展開したくなったり・・・。
ということで、「マガ9スポーツコラム」がスタートです。不定期連載でお届けします。

なぜ朝青龍に
「品位」は伝わらないのか

 大相撲夏場所が両国国技館で始まる2日前、白鵬や朝青龍が他のモンゴル出身の力士らとゴルフコンペに参加したことが報じられ、日本相撲協会の武蔵川理事長が両横綱および2人の属する部屋の親方に厳重注意を与えるという一幕があった。朝青龍が朝稽古を休んでゴルフをしたこと、コンペのメンバーに初日の相手となる鶴竜が入っていたことが問題だという。

 だが、コンペ開催自体がペナルティの対象になるとはとても思えない。野球選手が相手チームの選手と一緒に食事もするのも珍しくない。

 「朝青龍と鶴竜のゴルフ」は世間で八百長疑惑が取りざたされているなか、あまりに軽率との批判だが、察するに、当の朝青龍は心のなかで「へっ」と一笑に付したのではないか。「格闘技をよく知りもしないくせに」と。

 格闘技は身体をぶつけあうコミュニケーションともいえる。組んだ瞬間、相手の体調やメンタルの微妙な部分までが伝わり、それによってかける技が違ってくる。そんな繊細な勝負のなかで、手心加えてころッと倒れる「いかさま」なんてありえないと私は思う。

 朝青龍にとって、相撲は純粋なプロスポーツなのだろう。朝青龍を巡るいろいろな騒動は、すべてそこから生じている気がしてならない。彼が疲労骨折で夏巡業を休んだにもかかわらず、モンゴルでサッカーイベントに参加した映像を見たとき、私が最初に思ったのは、 「さすが横綱、運動神経がいい。これでは他の力士は敵わない」だった。

 アスリート・朝青龍は「結果を出せば文句はないだろう」と考えていると思う。相手力士を睨みつける、敗者に駄目を押す、土俵上でガッツポーズをするといった行為は、彼のプロ意識の延長にあるのではないか。

 「自分は外国人だから横綱になれなかった」と発言して物議を醸したのは元大関、小錦だった。彼の相撲は、巨体にものをいわせる取り口から「黒船襲来」ともいわれたが、朝青龍の場合はどうだろう? 強いていえば、柔道における青い柔道着の導入を連想する。

 青い柔道着の採用が国際柔道連盟によって決められたのは10年ほど前だ。日本の柔道連盟は日本の伝統・文化に反するとして異議を申し立てたが、柔道を国際競技にする(ために色つき道着を導入する)という国際柔道連盟の意志を大方、呑まざるをえなかった。

 その分、柔道は世界に浸透した。フランス国民のなかでもっとも競技人口が多いのは「ジュードー」と言われている。現在、訪日中のロシアのプーチン首相は6段の腕前だ。

 彼のもっとも尊敬する日本人は山下泰裕氏である(らしい)。 青い柔道着でもいいじゃないかと考えている朝青龍に対し、日本相撲協会や横綱審議会が「横綱の品位」をもって説教しても、両者の意見はかみ合わないだろう。

 大相撲が国際化の波にさらされて久しい。日本相撲協会は今後、アスリートたる力士と向き合わなければならなくなる。寡黙さが美徳とされる相撲界だが、ここは日本相撲協会に、自らの言葉で相撲の未来を語ってほしい。

 たとえば、なぜ土俵上でのガッツポーズはいけないのか?

 ことは相撲だけの話ではない。世界における日本の立ち位置を確認できるくらい、それには意味があると私は思うのである。

(芳地隆之)

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