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シムピース・フラッシュ版

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「シム・ピース」の作者、
蓑嶋陽さんにお聞きしました。

「シム・ピース」の原本は、美大の卒業制作のために作られた一冊のブックレットであり、作品です。作者の蓑嶋陽さんに、制作のプロセスや作品への思いについて、語っていただきました。

蓑嶋陽(みのしま よう) 1979年 北海道生まれ。2006年 多摩美術大学造形表現学部デザイン学科卒業。現在、都内の建築設計事務所にて勤務。店舗デザインの傍ら、日常生活の中でも、制作活動を続けている.

●この本を作ろうと思ったきっかけは?

 イラク戦争が起きたとき、自分でも何かしたいと思って、友達と二人でピースウォークに参加しました。初めてそういったデモに参加したのですが、翌日、学校や職場の仲間に、何の気なしにその話しをしたら、反応がとっても冷ややか。「デモ?そうなんだ〜」と言ったあとに、にが笑い。空気が引いて、それ以上、話しが続かなくなって。中には、「そんなことやって、何かになるの?」と言う人もいました。

 いろんな考え方があっていいと思いますが、不安をおぼえたのは、ほとんどの人が、戦争について深く考えていないんだな、とわかったこと。それでいて、デモに参加するなんて、なんだかおっかないことだというイメージを持っていること。それが、私と同世代の人たちだ、ということが残念でした。  私たちの世代は、小学校から中学校まで、戦争や平和の話について、学校で習ってきているはずなのに、大人になった時に、ほとんどの人にその経験が何も残っていない。どうしたら、この人たちに伝えることができるのか? 戦争反対とか言うもっと前の次元で、こういった問題に興味を持ってもらうには、どうしたらいいのか、って。そのためには、どんな方法があるのだろうか、と考えはじめました。

●ブックレットの形にした理由は?

 2005年、大学4年のとき、1年間をフルにつかって卒業制作に取り組むことになりました。普通の大学の卒論にあたるもので、これまで何を学んだか、これから何をしていきたいか、ということを考えながら、ひとつのものを作りなさいという課題が出されます。

 最初は、何かキャンペーン的なことをやろうかと考えていました。私は、空間デザインが専攻なので、街中にブースをつくって、9条に関する展示をするとか。しかしブースを見に来てくれた一部の人たちだけでなく、より多くの人に伝えたい。そのためには、本やwebといった形の方がいいのでは、と思うようになっていきました。その中でもブックレットタイプの本がいいんじゃないかなと思ったのです。

●苦労したところは?

 どういう構成にするか、についてはかなり悩みました。「戦争したくない」と思わせるには、戦争体験者の話をインタビューして載せる、ということの方が効果あるように思われましたが、今ある憲法がどのように出来上がってきたのかを、歴史の事実から知りまとめていくことが、最初にやるべきことかな、と思いました。私と同世代の人たちには、まずそこからかな、と考えたのです。

 それからいろいろな資料を読み、調べていくのですが、取りくみはじめた4月から、夏休みが明けた9月まで、ずっとただ考えているだけでした。実は、憲法9条と同列で考えていたテーマがあって、それは「選挙に行こう」というものでした。この二つは、どちらも絡まり合っているものだし、どっちも同世代の人たちに伝えたいし。

 考えているだけで、どんどん時間が経っていき、本当にできるのかなあ、もうやめようか、と思うこともありました。

 結局時間が足りなくて、追い込みの時期には、仕事も辞めました。不安でしたが、この制作に取り組めるのは、今しかないと決断して。9月に仕事を辞めてからは、3ヶ月間家にこもり、最終審査会の12月には、なんとか間に合わせました。

●シム・ピースというタイトルは?

 タイトルを決めたのは、最後です。デザインの見せ方をゲームっぽくしようと決めたのは、湾岸戦争の時、テレビに映し出された映像がゲームみたいだった、という記憶があったし、私たちの世代には、テレビゲームはとっても馴染みが深い。それで、タイトルもゲームのタイトル「シム・シティ」にならって、「シム・ピース」。「平和をつくる」という意味です。

 一人で煮詰まっている時に、制作を助けてくれたのが、デモに一緒に参加した友人です。実は、このタイトルを思いついてくれたのも、友人でした。キャッチコピーも一緒に徹夜して考えました。中に使った言葉にも、ひとつ一つ、けっこうこだわりましたので、最後、グラフィックに費やす時間が10日ぐらいしかなくなり、焦りました。

●発表した時の反応は?

 おおむね好評でした。「おもしろいね」と言われるのが一番うれしかったのですが、「えらいね」って言われたことが、「!?」とひっかかりました。

 学校の卒業展覧会では、ブースをつくり、表紙のグラフィックを入り口に飾り、自腹を切って印刷した1000部を、自由に持っていってもらうようにしました。3日間で900部がはけました。ミクシイでも、「こんな本を作りました」と発表して、個人の方に30部ほど送りました。

●制作してから1年経ちましたが?

 これからどうやっていこうかな、と思ってます。卒業制作として作ったけれども、この(9条についての)ことは、これから私が生きていく中でも、ずっとやっていきたいテーマですし、もっと何かできるんじゃないかと思ってます。今、まさに大変な時ですから。

●最後に「マガ9」読者の方にメッセージを

 読んでどう思ったのか、率直な感想や意見を聞かせてくれたらうれしいです。印刷した1000部は、すべて出払ってしまいましたが、機会があれば、少し加筆・補足したものを、また本の形で作りたいとも考えています。

蓑嶋さん、ありがとうございました!
みなさんからの感想もぜひお寄せください。

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