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2011-11-02up

マガ9レビュー

本、DVD、展覧会、イベント、芝居、などなど。マガ9的視点で批評、紹介いたします。

vol.180

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東京原発

(2002年/山川元監督)

 東京都知事がある日「東京に原発を誘致する」と宣言して都庁幹部は混乱をきたし、フランスから極秘裏に運ばれてきたプルトニウムを含むMOX燃料が国内輸送中にジャックされる――。そんなあらすじを聞いて、私はスタンリー・キューブリック監督の『博士の異常な愛情』を連想した。空軍司令官の独断でソ連への攻撃を命じられた核弾頭搭載米軍機が敵地へ向かうなか、ペンタゴンでは攻撃を中止させようとする大統領に、好戦的な将軍やナチの残党とおぼしきマッドサイエンティストが悪魔の囁きをする。ブラックユーモアに満ちたテイストを、この『東京原発』に期待したのである。役所広司がいかれた都知事を演じるのだろうと。

 でも、違った。本作品は原発問題に真正面から取り組む啓蒙映画であった。

 新宿中央公園に原発を建設し、熱電併給システムを駆使して東京の内部でエネルギーを循環させる、原発を誘致すれば国からの交付金が下りて都の財政は潤う、僻地に建設した原発から電力を首都圏に送るのはコストが高すぎる、都民が電力を消費するのだから、東京に立地するのは当たり前……。天馬知事の主張は、これが映画であることを忘れさせるほどアクチュアルだ。

 天馬知事に考えを改めさせるため、副知事が都庁に招いた専門家は、(まるで京大の小出裕章助教のように)原発の安全神話をひとつひとつ論破していく。しかし、天馬知事は東京への原発誘致の構想を曲げない。

 知事室での議論が中心となる前半とは打って変り、後半は「目立ちたいから」とMOX燃料を積んだトラックに爆弾を仕掛けてジャックする少年の登場で俄然、熱を帯びる。

 少年のテロは未遂に終わるのだが、破局の一歩手前を経験した天馬は、それでも「東京に原発を」という。なぜか。

 徐々に明らかになる彼の真意を前に、あなたはこの作品から挑戦状を受けとったような気分になるだろう。

 9年前に完成した、まるで現在を暗示するかのような映画である。ただ、当時はまだブラックコメディの類として見られていたのではないか。劇場公開時に見逃していた自分を責めたくなった。

(芳地隆之)

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