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マガ9レビュー

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本、DVD、展覧会、イベント、芝居、などなど。マガ9的視点で批評、紹介いたします。

vol.18
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カラシニコフ I・II

松本仁一著/朝日新聞社

7月6日、モスクワの軍中央博物館で、カラシニコフ銃の名で知られる自動小銃「AK47」の完成60周年式典が開催された。

カラシニコフは、たった八個の部品でできている。手入れは「油をしみこませた布でガスシリンダーと薬室を拭く」だけ。「分解に2分、掃除に10分、組み立てに3分」と計15分で終わる。部品間に隙間をつくることで火薬や泥による目詰まりを防ぎ、雨露にも強く、故障が少ない。そんな小銃を発明したミハイル・カラシニコフ氏の功績が称えられたのである。

カラシニコフはソ連軍だけでなく、アフリカや中南米の革命勢力を支援する役割を果たしたが、いったん出回ったカラシニコフは容易に回収できなかった。簡単な操作は、少年(少女)を兵士にすることも可能にし、第三世界においては、人殺しのできる年齢層を一気に引き下げた。

ダイヤモンド利権の争いが生じたシエラレオネ、政府機能が麻痺したソマリア、あるいは麻薬シンジケートのはびこるコロンビア、外国軍の侵攻によって国土を蹂躙されたアフガニスタンやイラク……。国家による武器の一元的管理が不可能となった紛争地の主役はカラシニコフであった。

著者である朝日新聞編集委員の松本仁一氏には、『アフリカを食べる』『アフリカで寝る』(ともに朝日文庫)という名エッセイがある。「食う」「眠る」という人間の本能から、アフリカの歴史と現在を見事に切り取った松本氏だけあって、カラシニコフを追う姿勢も等身大だ。地に足の着いた各国での取材から発せられる「戦争とは?」「国家とは?」との問いかけは、大上段に構えたところがないだけに、複雑である。

最底辺の生活から抜け出すため、あるいは暴力によって強制的に兵士とさせられた少年から銃口を突きつけられる自分を想像してほしい。

マガジン9条に「15歳からの国際平和学」を連載中の伊勢崎賢治さんも、そんな修羅場のなかで仕事をされてきたのだろう。本書を読めば、伊勢崎さんのコラムの臨場感がさらに増す。

最後に本書から一文を引用しておこう。

「1976年いらい約30年、日本の自動小銃は、世界のどこでも、誰一人殺していない。それは武器を輸出していないからだ」

武器の輸出を全面的に禁止する方針(武器輸出3原則)を表明したのは、当時の三木首相だった。
ところが、財界ではときおり、その緩和を求める声が聞かれる。

自動車やAV家電、事務用機器など、「メイド・イン・ジャパン」は平和な社会でこそ映えるブランドである。長年かけて築いてきた世界の消費者の信頼を、地に落とすような行為はしないほうがよい。

(芳地隆之)

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