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マガ9レビュー

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本、DVD、展覧会、イベント、芝居、などなど。マガ9的視点で批評、紹介いたします。

vol.8
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官僚とメディア

魚住昭著/角川oneテーマ21

ジャーナリズムから逸脱し、国家権力の中枢で政治工作をすることに執着する大手新聞社の社主を描いた『渡邉恒雄 メディアと権力』、被差別部落出身者として注ぐ弱者への視線と権謀術数で政敵を追い落とす冷徹さを併せもつ政治家の伝記『野中広弘務 差別と権力』などの著書がある魚住昭氏の新刊である。

痛烈なメディア批判の書だ。たとえば昨年、日本中を騒然とさせた耐震データ偽造事件。あれは、マスコミが糾弾したような、構造設計者の姉歯秀次、デベロッパー会社ヒューザーの小嶋社長、ゼネコン木村建設の木村社長や篠塚東京支店長らによる共謀ではなかった。あくまで姉歯個人による犯罪であり、それを許した責任は、建設確認システムにまで「官から民へ」を適用し、同システムを破綻させた国土交通省にある。にもかかわらず、国交省の巧みな情報操作によって、データ偽装の被害者ともいえる小嶋氏や木村氏は「悪のトライアングル」の一味にされた。

当時、ある民放のニュース・キャスターは「この問題を徹底的に追及する」と宣言したが、その後、何もフォローはない。メディアが一連の報道姿勢に対して自己批判していれば、後の新聞社によるやらせ事件は起こらなかっただろう。最高裁の広告予算(つまり税金)二十七億円のついた新しい裁判員制度導入のキャンペーンを、広告代理店、電通と組んで請け負った産経新聞社は、タウンミーティングの人集めにサクラを雇ったのだった。

本書では、NHKの女性国際戦犯法廷の特集番組の放映に際して、中川昭一経済産業相(当時)から圧力がかかったこと、その事実が曖昧にされていったことも詳細に書かれている。

権力に擦り寄るメディアの荒廃ぶりは目を覆うばかりだが、これらの事実を読者に提供する魚住氏は自身のコラムで、「新聞記事の7割くらいは官庁発の情報。それを無批判に受け入れ、伝えることが新聞やテレビ局といった大手メディアの本質的な役割」と身も蓋もなく言う。そして、だからこそ「民間情報を扱う残りの3割を活用して、商品価値の高い情報を発信する」ことの大切さを説く。

9条改定を巡っても、力と金と知恵を駆使したメディア攻勢が行われるだろう。心しておくべし。

(芳地隆之)

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