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2011-03-02up

ぼくらのリアル☆ピース

沖縄本島北部、やんばるの森に囲まれた東村高江で進む、
米軍ヘリパッド建設計画。
昨年末には、長く中断されていた工事が住民の反対を押し切って再開され、
緊迫した状況が続いています。
その高江の状況をもっと多くの人に知ってもらおうと、
東京でイベントなどを開催してきたグループが「ゆんたく高江」。
メンバーのひとり、大学院生の村上陽子さんにお話を聞きました。

沖縄・高江について「ゆんたく」しよう

村上陽子さん
■その1■
村上陽子 (むらかみ ようこ) 広島県出身。高校卒業後、琉球大学法文学部に進学。広告代理店勤務を経て琉球大学大学院人文社会科学研究科に進学し、修士号を取得。2008年より東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程に所属。専門は沖縄および日本の戦後文学研究。沖縄・高江について「みんなでゆんたく(おしゃべり)しよう!」を掲げるグループ「ゆんたく高江」の活動に携わっている。

◆高校卒業後、「住んでみたかった」沖縄の大学へ

──村上さんは今、東京で沖縄・高江の問題を考えよう、というグループ「ゆんたく高江」の活動にかかわられていますが、もともとは広島のご出身なんですよね。沖縄とのかかわりのきっかけは?

 高校卒業後に、琉球大学に進学したんです。高校時代、沖縄出身の友達と仲良くなったりしたこともあって、沖縄にすごく興味があったんですね。それで「沖縄のことを勉強する学部に行きたい」と思っていたら、琉球大学に沖縄の歴史と言語と文学をやる学部があると聞いて…。「じゃあまずはそこに行って、沖縄に住んで、やりたいことを考えてみよう」と思ったんです。

──具体的には、どんな勉強を?

 最初は特に歴史に関心が強かったんですけど、実際に大学に入ってからは文学の勉強が面白くなって。当時の法文学部国際言語文化学科というところで、戦後の沖縄文学を中心にやっていました。今も大学院でその研究を続けています。

──「戦後の沖縄文学」というのは、日本の他の戦後文学とはまた、違うものですか?

 うーん。私は特に目取真俊さんの作品を中心に、「沖縄戦の記憶が現代作家の作品においてどのように描かれているか」という研究をしてきたんですけど…もちろん沖縄以外の戦後文学にも、戦争体験が作品に表れるという現象はあると思います。ただ沖縄の場合、直面している現状が「本土」とはまったく違うので、普通に「日常」を描こうとしたり、私小説的なものを書こうとしても、そこには否応なく「占領」とか「戦争」といった「沖縄的」なものが入り込んでくる、という面はあるので、そこが独特だとは言えるかもしれませんね。

◆「何が問題か」を伝える「言葉」を手に入れたかった

──さて、「住んで考えてみたい」と思って、実際に住んでみた沖縄、いかがでした?

 もともと近代史に興味があったし、高校時代に戦跡や米軍基地をめぐるツアーに参加したりしたこともあったので、やっぱり沖縄については「沖縄戦」「基地問題」のイメージが強かったんですよ。「観光じゃない沖縄」というと、今度はそういうイメージ一辺倒になりがちですよね。
 でも、実際に住んでみると――琉球大学は普天間基地からも近いところにあるので、上空を米軍ヘリがたくさん飛んでいたりするんですが、最初はすごくびっくりしたそういうことにも、暮らしているとだんだん「慣れて」いくんですね。大学の友達と街に遊びに行っても、そこにも米兵が遊びに来ていたりもするし。基地とか米兵の姿とかが日常的なものとしてある、「観光」でも「基地」や「戦争」だけでもない、生活の場としての沖縄、というものを感じました。

──でも、そのころは特に基地反対の運動などにかかわられていたわけではないんですか?

 関心はありましたけど、例えば辺野古の座り込みに参加するとか、そういうことはなかったです。大学で勉強して、その周辺で遊んで、というのが基本的には生活のすべてでしたね。

──それがちょっと変わってきたのは、卒業してから?

 卒業後に、那覇の広告代理店に就職したんですね。沖縄でもっと生活したいなと思って仕事を探したら、そこしか通らなかったというだけなんですけど(笑)、職種はコピーライターだったし、「言葉を書く」仕事はしたかったので、それもいいかな、と。
 でも、沖縄の代理店でコピーライターというと、回ってくる仕事って、リゾートホテルやリゾートウエディングのコピーを書く、みたいなものばかりなんです。それがすごく嫌になって。

──自分の関心とあまりにもギャップが大きい、ということ?

 というよりは、観光やリゾートの島として消費される「沖縄」のイメージ像を、まさに「つくる」側にいるわけでしょう。それが嫌だなと。あと、那覇に住んでいると、琉球大学のような中部にいるのと違って、ほとんど米軍基地の存在を感じないんですね。それも何か、私には居心地が悪かった。

──基地は「ある」のに、それがまったく見えないという違和感?

 そういう感じでしたね。それと、その代理店にいた2年間は、ちょうど沖縄ですごくいろいろな動きがあった時期だったんです。沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事件があったり、東村高江のヘリパッド建設問題が持ち上がってきたり、辺野古での基地建設反対運動も緊迫した状況になっていて…。だけど、県外メディアはもちろん、沖縄県内のマスコミでさえ、それをちゃんと報じたり、何が問題なのかを伝えたりする「言葉」にすごく乏しい、と感じたんですね。それで、自分自身もそういう言葉を持てるようにもう1回勉強しようと思って、会社をやめて琉球大学の大学院に進むことにしたんです。

──高江のことなどにかかわりだしたのは、そのころですか?

 代理店での仕事が嫌だな、つらいなと思いはじめたころに、大学時代の先生や友人と集まって、基地問題などについて話をするようになったんです。そこから「合意してないプロジェクト」の立ち上げにかかわって…。

──「合意してないプロジェクト」?

 2005年に、辺野古への普天間基地移設に関して、いわゆる「L字型沿岸案(*)」で日米が合意、という報道があって。だけど、合意合意っていうけど、私たちそんなこと合意してないよね、おかしいよ、と考える人たちが集まって「合意してないプロジェクト」というネットワークを立ち上げたんです。メーリングリストで情報共有をして、大学などでトークイベントをやったりもしました。
 そういう活動の中で高江の人たちとも知り合って、イベントにも来てもらったりして。大学院時代には、半年くらい週末ごとに高江へ通って座り込みに参加してたこともあります。

(*)L字型沿岸案…普天間基地の代替施設を、辺野古沿岸部に滑走路をL字型に配置する形で建設するという案。2005年10月の日米安全保障協議委員会で「合意」された。さらに翌06年には、2本の滑走路をV字型に配置する「V字案」が「合意」され、これが現在まで「現行案」」となっている。

◆高江のことを、もっと多くの人に知らせたい

──それが東京での「ゆんたく高江」での活動につながっていくんですね。その「ゆんたく高江」は、もともとはどのように始まったグループなんですか?

 立ち上げは2008年くらい。高江に友達のいる人たちが中心になって、まずは「高江」という場所をたくさんの人たちに知ってもらおうというので、賛同してくれるミュージシャンなんかを呼んで音楽イベントというか、お祭りのようなことをやったのが最初だそうです。私はそのころ沖縄にいて、「東京で面白いことをやってる人たちがいる」っていう話だけを聞いていたんですけど。
 その後、私も大学院で修士課程を終えて、もう少し「沖縄」から幅を広げた研究をしたくて、東京の大学院の博士課程に進学して。それで東京でも、高江の友達から頼まれて、高江に関するイベントに現地の話をしに行ったりするようになったんですね。その中でゆんたく高江のメンバーとも知り合いになって、自然に一緒にやるようになった、という感じです。

──今も定期的にイベントを?

 毎年「ゆんたく高江」という、音楽とトークを主体にしたイベントをやっています。あと、高江の映像の上映会や高江に行って帰ってきた人からの報告会、という感じで不定期に集まりを開いています。最近は現地の状況が動いていることもあって、月1回くらいは集まってるかな。音楽や現地で撮影された映像をまじえながら、高江について話し合う「ゆんたく(おしゃべり)」イベントです。デモに行ったり街頭アピールをやったりもしてます。
 上映会や報告会は、いつもは参加者が20人程度の小さなイベントだったんですけど、高江の状況が本当に緊迫しているからか、今年の初めくらいからは50人以上が集まってくれています。

──みなさん、ツイッターなどで情報を得ているんでしょうか。

 そうだと思います。いつもはほとんどが「友達の友達」みたいな顔の見える範囲で、自己紹介もいらないくらいだったのに、その日は「初めての人いますかー」って聞いたら「はーい」ってたくさん手が挙がって、びっくりしました(笑)。
 ちなみに「合意してないプロジェクト」もそうだったんですけど、ゆんたく高江ってすごく「ゆるい」グループなんですよね。がちがちに組織化されていなくて、代表とかもいないし、やりたい人が言い出しっぺになって何かやって、やりたい人は一緒にやるし、それは参加したくないからしないという人ももちろんいていいし…そういう空気感が私はすごく楽ちんなんです。

その2へつづきます→

高江の最新状況は、
ブログ「やんばる東村 高江の現状」でレポートされています。
次回、現在の高江について、
そして村上さんたちの活動について、さらにお話を聞いていきます。

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