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2010-10-13up

政権交代から1年! 「記者会見フルオープン化はいつ?」座談会(大川豊さん×岩上安身さん×畠山理仁さん)
「記者クラブ」が、ない「普通の国」になる日はくるのか?
その7:「お金にならない」ことを、どうやり続けていくか?

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岩上 (記者会見に定期的に出席するフリーランスの記者が)なんで少ないかっていうとそこは簡単で、「記者会見の取材」っていうのは金にならないからなんですよ。これが最大の理由なんです。金がすべての価値だという地点に立てば、価値のないものなんですね。それからインターネットの情報や記事というのは基本無料でしょう? 書き手は、無料でコンテンツを提供し、読みたい人が読んでくれたらそれで結構、というぐらいの感じでやっているわけじゃないですか。それがヒットすれば何十万の人が見るようなコンテンツになるし、そうじゃなくて気がつかれないコンテンツもあるんだけど、そんなことは関係なしに、ほとんどの人たちはコンテンツを提供していくわけですよね。でもそういう状況からおもしろい現象が生まれてきた。

編集部 というのは?

岩上 これまで日本に暮らしてきた人たちはずっと、記者クラブメディアによってもたらされた情報空間の中で生きているから、「世界はそのようなものである」と、認知してるわけです。ところがそこに、「どうやら世界はそのようなものでない」という情報がもたらされると、ハレーション起こすわけですよ。「あれ?どっちなんだろう」みたいな。 例えば、テレビや新聞の報道では、「●●大臣はこういった」と、そこだけ切り取られて「いかがなものか」というようなコメントがつけられたりしている。しかしその会見を編集なしで見る事ができた時に、「あれ、実際と違うよ。それにすごくいいことも、この大臣は言っているし、面白い」という事に気付く。で、実際には長くて密度もある大臣の話が、その文脈のごく一部が切り取られて、悪意を駆り立てるように編集されているんだということに気づき始める。そうすると、テレビや新聞など既存メディアに対する信用が失なわれてゆく。
 ネットを見て良質の情報にアクセスしようとしている人たちに、ちゃんと提供できる状態がつくれたら、新聞を読むのを止める人たちが続出するわけですよ。ぼくのサポーターになってくれている人たちは、どんどん新聞を読むのを止めている。ぼくが別に不買を煽っているわけじゃないけどね。

編集部 つまらないと思った読者が新聞の購読料を支払うのを止めて、岩上さんのサポーターになって、岩上さんにカンパをする。というのは、読者としてとても真っ当な選択ですね。

岩上 消費者のできる最大の抵抗というのは、その商品を買わないことです。消費者としてみれば、不良品を提供されれば、買わないのは当たり前のこと。消費者運動の一環として、新聞を購読するのをやめても、文句を言われる筋合いは、本来はないわけです。それが嫌なら、新聞は、読者の不満や批判に正面から向き合わなきゃ。今の既存メディアは、批判に耳を貸そうとしているとは到底思えない。僕だって、毎日毎日いろんな所から文句言われていますよ。ツイッターのタイムラインなんかすごい。中傷や罵倒が毎日来る。でも、あるときから、ブロックはしないようにしている。批判の中には、耳を傾けるべきことが、やはりあります。

大川 それこそが、「総会屋」の使命です。

岩上 そうやって、(既存メディアが作ってきた世界は)「どこかおかしいな?」ということに気付いてもらうチャンスは作れていると思います。でもこれは、金にならないんですよ。

畠山 いわゆるブロガーの人も「記者会見」に入っていいと思うんですよ。でも入りたいんだったら自分たちで行動してもらわないと困る。困るというか、行動を起こして欲しい。だから僕は首相官邸での記者会見の申請書にも、必ず日本雑誌協会に加盟していない『週刊金曜日』とか、インターネット報道協会に加盟していない『マガジン9』の連載記事のコピーとかをわざわざ添付して送っています。なんでそんな面倒くさいことをするかというと、「お墨付きをもらえていない媒体にも書いている記者が入った」という実績を作るためです。「報じたい」と思う人は、向こうから権利が与えられるのを待つんじゃなくて、こっちから権利を取りに行ってほしい。僕、本当は活動家みたいなことするのが一番嫌いなんですけど、現状があまりにも異常。しかも記者クラブの情報だけが報道みたいに日本人は刷り込まれちゃっているから、仕方なくやっている。こんなくだらないこと、他の優秀な人達にさせられないじゃないですか。もったいなくて。

大川 僕は世界最大の家電見本市に毎年行ってるんですよプレスとして。で、昨年ぐらいから、パワーブロガーも「プレス登録」OKになったんですよ。パワーブロガーとして、「一日千人以上の人に読まれています」っていうデータをちゃんと送ったらOKなんですよ。で、彼らがなぜ良いかというと、いっさいスポンサーとの関係がないから。消費者が必要としている家電の本当のことが、分かるわけですよ。

岩上 マニアは大事ですよ。専門的知識を持っているということだから。さっきの「兼業ジャーナリスト」がいい、ということにつながります。で、新しいテクノロジーを使ったことがない、という人に言いたいのは、僕だって走りながら習得していった、ということ。Ustreamっていうのを知ったのは、畠山さんが中継してるのを見て、教えてもらった。それじゃ俺もiPhone持とうかな、と。ツイッターもそうだよね。ずっと年下の若い人たちに、現場で教えてもらってね。遅れて来たおじさんは、若い人から学べばいいんですよ。

畠山 岩上さん、去年までパソコン教室に行ってたんですよね。

編集部 ほんとですか? でも今すごいじゃないですかー。

大川 しかしどなたか、財団なんかでもいいけど、支援しないと無理ですよ。

岩上 「岩上さん、霞食って生きてるのかー?」とよく聞かれる。そんなわけないでしょ、と。今は形になるまで貯金を取り崩しながら、すべて持ち出しでやってきている。

大川 霞ヶ関を食って生きてる。

岩上 うまい!

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「記者会見はお金にならない」「ネットの情報や記事はタダである」
という「今の常識」がある限り、情報の提供者が増えることはなく、
結局は「記者クラブ」という既存メディアのスクラムが残ることになるでしょう。
そうならないためには、どうすればいいのでしょうか? 

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