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2012-06-08up

おしどりマコ・ケンの「脱ってみる?」

第44回

有害化学物質も原発事故で環境中に放出されたかも? の件、その2。

 前々回の原発事故で放出された化学物質の件、の続きです! 復習はこちら!

 被災者生活支援チームの医療班長とお話ししていたとき、別件で化学物質のこともお聞きしてみました。

――あのー、放射性物質以外にも、今、化学物質がどれくらい出ているか、というのを環境省や、東京電力のほうで、私が調べているのですが…

被災者生活支援チーム医療班「はい、存じております。マガジン9で見てますから」

――びっくりしました! あのー、医療班では特に、化学物質などは評価対象にはなってないのでしょうか?

被災者生活支援チーム医療班「一応私どものですね、担当ですが放射線の健康影響というところなのですね。そこについては評価対象にはしていません」

――そうですね、原子力災害対策本部の被災者生活支援チームですものね。
 でも、その、原子力発電所の事故で、化学物質がひょっとすると、環境中に放出された可能性があるということで、これはどこの部署が担当になるのでしょうか? 放射性物質にしろ、原発事故で放出されたということで…。

被災者生活支援チーム医療班「だからそこがよくわからなくて難しいのですがね、放射性物質じゃなくて、その重金属というとらえ方をすれば… まぁ重金属というとらえ方はできると思うのですけれども、そうなれば、環境省が考えるべき問題か、とも思いますが。ただそこはですね、環境省にも問い合わせをされたのも拝見しましたが、

 (前々回のやりとりですね!)

 多分、ああいう感じで答えるんだろうな、と思いますけど、

 (少し苦笑いをされてました!)

 まぁ正直言いまして、まず法規制がかかっているかどうか、という問題からするとですね、規制がかかっていないものについて、どこまでがそれぞれが所管としうるか、というところの問題があると思います」

 (ひゃー!やっぱり法律がないと野放し状態!? 通常時の法律を事故時に適用できるかどうか検討する、と環境省はおっしゃっていたけれど、なんていうか、適用せいや!!)

――なるほど、わかりました。東京電力のぶら下がりの状況では、『おそらく放射性物質とともに、まぁ爆発の影響でも、出るとしたら、少しは出ていると思う』というような回答でしたので、それをどう評価していくのかな、と思ったのですけれども、わかりました、ありがとうございます。

被災者生活支援チーム医療班「あの、はい、すいません我々も担当じゃないものですから申し訳ないです」

******

 化学物質を評価する必要性はありそうだけれど、いったいどこが!? そして法規制がされてない可能性も!? 環境省がなー、「法律は通常時のもので事故時に適用できるかどうか…」などなどおっしゃるものなー。安全神話で「事故は起きない!」前提だったから、法は網羅されてないんじゃない? もう過去のことは言ってもしょうがないから、今、なんとかしましょうよー。

 法規制なー、「PRTR制度」でいろいろ調べると、興味深いことが出てきました。
 事業者別のデータを探すと、福島第二原発のデータはありました。化学物質の全排出量、全移動量を事業者が届け出たものです(グラフはすべてPRTRインフォメーション広場より。こちらのページから検索・表示できます)。

 ん? 福島第一原発のものはないのかな? と思いついて、過去のものを探すとありました。平成21年度のデータのところにあったのです。

 あら? 福島第一原発は「最終処分場」という別の名前のものと、2つ事業者としての届け出のデータがありましたよ? それはこちら。

 福島第一原発が環境省に平成22年度のデータを届け出ていないのは、事故の収束作業でてんてこまいだったから手がまわらなかったのでしょうか? 平成22年度のデータを届け出るのは、平成23年度の4月から6月30日までですからね、それが平成24年の3月に公表されるはずだったのだけれど。

 しかし、やっぱりけっこう有害化学物質を使用しているようですね! 以前も書いたけど、単体で発がん性が認められているものもたくさんあるよ! 事故でいったいどれだけ放出されたんでしょう……!?
 東京電力の会見でも重ねて聞いてみました。(6月1日)

東電会見で質問中。※眼の表面に傷がついてしまい、涙がしみて痛かったので眼帯姿。今はすっかり治りました!

――以前に質問させていただいた質問の回収が出来ればと思うのですが、タービン制御油に使用している添加物、九州電力はリン酸トリスなどをお使いですが、東京電力はオイル会社に確認して頂くということで。いったいどのようなものをお使いなのでしょうか。

東京電力松本さん「まだ確認ができておりませんので、もう少しお待ち下さい」

――わかりました。では、PRTR制度・化学物質排出移動量届出制度に関してですが、福島第二原発は22年度まで届け度をしていますが、福島第一原発の方は21年度までしか届出をしておらず、22年度の届出をしていないのですがそれはどういった理由でしょうか。

東京電力松本さん「先日質問がありましたので、その確認がまだとれておりませんので、もう少しお待ちいただければと思います」

――全部に関して、環境中に出た化学物質総量の評価中ということに関してもそうでしょうか。

東京電力松本さん「評価に対しては行なっておりません。いわゆる化学物質に関しましては、今のところ、まだ行う計画はありませんので今後、どういった形で進めるかについてはまだ検討中です」

 (評価を行う計画が無い、とな! ぬぉー!)

――21年度までの福島第一原発のPRTRのデータを見ますと、原子力発電所と最終処分場と2ヶ所の事業所分での申告がありますが、それの全排出量、移動量は、キシレン、スチレン、トルエン、水銀、亜鉛など様々なものを使って排出されておりますが、原発事故でこういった物質が環境中に放出された可能性というのはあるのでしょうか。

東京電力松本さん「その辺はまだわかっておりません。建屋がああいった状況ですので、引き続きまだ、建屋の中にあるのか、あるいはどういった形で保管されていたのかについて確認する必要があると思っています」

――大体どれぐらい迄にご解答いただけるでしょうか。

東京電力松本さん「まだ現場の作業の方がそういった既にございました化学物質の特定の所まで、まだ至ってませんので、少しこちらの方、確認は時間がかかろうかと思っております」

(放射性物質で手一杯、ということで、化学物質は後回しですか、そうですか… つまり、事故で放出されたこと自体は否定しておらず、放出された可能性はあるのですよね…)

――では22年度のデータ届出がされていない理由というのも、また、そちらは出来る…

東京電力松本さん「そちらは急いで確認します」

******

 この日、ぶら下がりで別の方、小林さんにも化学物質についてお聞きしてみました。

――以前、松本さんにお聞きしたとき、タービン制御油などは津波で流出した可能性はある、とのことだったのですが…

東電小林さん「そうですね、津波でいったん建屋は浸かっておりますので、引き波で海に持っていかれたか、建屋内にたまっている可能性はあると思います」

――津波だけでしょうか、爆発で放出された可能性はありませんか?

東電小林さん「ある、とも、ない、とも今のところ言えません。今のところ言えるのは、わからない、ということだけなのです」

――3月15日に飯舘村の方々が、寒い時期なのにもかかわらず、顔がオイリーになり、何度も顔を洗った、ということを伺いました。その日に村を放射性物質のプルームが覆ったのですが、放射性物質とともに、化学物質も覆った可能性はありませんか?

東電小林さん「そうですね、油が気化したり、粒子状になったりして、それが放出された、という可能性も含め、否定はできませんが、本当に何ともいえないのです」

――そうですか、まったくわからないのですか…。
 では、福島第一原発では、どのような化学物質が放出された可能性がありますか? 事故前に使用していて、ここの場所のこの物質は放出されたかも、というような推定はできますか? PRTR制度に届け出ていたような、事故前に使用していた化学物質は放出された可能性はどこまであるのでしょうか? そうですね、例えば…九州電力では、機器塗装にスチレン、キシレンなどを使用しているのですが…そういうものは推定しにくいのでしょうか?

東電小林さん「うちでは古い使い方ではなく、随時バケツで運ぶ、という使用方法もしていましたので(バケツも十分古くない?)、その管理を見れば、わかると思います。しかし、まだ中を十分調査できていませんので、そのバケツ、溶剤を入れていたものがどうなっているのか全くわからない、というのが現状なのです。そのままかもしれませんし、まったく形がなくなってどうなっているかわからないのかもしれませんし、建屋内にだけ放出されたのかもわかりませんし…」

――わー、ほんとに想像がつかない、ということなんですね! 化学物質がどれくらい放出されたかは、東京電力では評価されないのですか?

東電小林さん「まず、放射性物質が先、という判断ですね…」

 むむむむむ! そうですか! これじゃラチがあかないねぇ。
 勝手に研究したり測定したりされてる研究者さまはいらっしゃらないかしら? 探さなくては!

会見後のぶら下がりにて。

******

 最近、原発のことや、いろいろな社会問題を考えるのだけれど、バランスの良い食事や運動が自分の健康のためになるように、社会のことを考えることが自分の人生のためになる、と思います。
 以前は「社会問題を考える」なんて、なにか特別な人がやることだと思ってたんだけれどね、そうじゃなかったね!

 「好きな音楽はシャンソンで、好きな作家はミヒャエル・エンデで、関心のある社会問題は、薬害と押し紙と記者クラブ問題でーす!」
 というような自己紹介がスタンダードになると、面白い世の中になると思うよ!!

【今週の針金】
6/1の東京電力記者会見で発表された、魚介類核種分析の結果ではイシガレイが最高値でしてん、海底土に高濃度の放射性物質があるそうですねん。

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政治のことを考えたり、原発のことを話したり。
そう、それって全然「特別」なことじゃない、
自分や周りの人たちにもすごーく身近なことのはずなのです。
皆さんもマコさん的自己紹介、どうでしょう?

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おしどりプロフィール

マコとケンの夫婦コンビ。横山ホットブラザーズ、横山マコトの弟子。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2003年結成、芸歴は2005年から。
ケンは大阪生まれ、パントマイムや針金やテルミンをあやつる。パントマイムダンサーとしてヨーロッパの劇場をまわる。マコと出会い、ぞっこんになり、芸人に。
マコは神戸生まれ、鳥取大学医学部生命科学科を中退し、東西屋ちんどん通信社に入門。アコーディオン流しを経て芸人に。

ブログ:
 http://oshidori.laff.jp/
twitter:
 マコ:@makomelo
 ケン:@oshidori_ken
その他、news logでもコラムを連載中。

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