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2011-12-07up

おしどりマコ・ケンの「脱ってみる?」

第33回

NNSAの生データその後、計4回の会見の件。

 DOE(アメリカエネルギー省)に属しているNNSA(国家核安全保障局)が、福島原発事故直後のモニタリング生データを10月21日にリリースしていたことについて、そして、それを国側が全くご存知なかったことについて、第29回「脱ってみる?」に書きましたね、その続報を。

***

 11月14日の統合対策室合同会見にて。

――前回、DOEのデータを文科省として手に入れられたかどうか、というのをお聞きしましたが、10月21日にNNSAのほうで恐らく DOE の生データをホームページ上で公開しておられます。それは入手されてご覧になっておられますでしょうか。
 それは本当に生データですのでものすごく見づらいものになってますが、それは何か分かり易く解析などはされてるのでしょうか。宜しくお願い致します。

文科省・伊藤審議官「おしどりさんからご指摘のDOE のホームページ確認させていただきました。あの、今回の公開されてるデータというのは一つは空間線量のデータ、もう一つはダストのデータ、それからあの、土壌のデータ、もう一つは画像データでして、いわゆる航空機モニタリングによってサーベイしたところを――まあ以前からホームページにも載ってたかと思いますけれども、ま、そういうようなデータがありました。で、それは全て文科省として入手していたものではありませんので、改めて今、原子力研究(開発)機構のほうでどういう活用ができるのか、内容についても精査していただいてるところであります」

――わかりました。それはDOE ではなく NNSA のホームページ上で10月21日にリリースされていたものでしょうか。

文科省・伊藤審議官「ええ、DOEの中のその NNSAのページからダウンロードできるものであります」

――ちなみに、そのデータは何日ぐらいに入手されたのでしょうか。

文科省・伊藤審議官「あの、前回の指摘を受けてから確認をしたので、ここ数日ということです」

――わかりました。
 では、現在福島県民の方が行動記録を書いて、その問診票(のデータ)で、外部被曝の線量評価をするソフトが放医研(放射線医学総合研究所)のほうで立ち上げられておりますが、それは、3月15日以降のデータは、文科省の2㎞メッシュのデータを使用することになっております。事故直後のデータは文科省はあまり詳細なデータがない、と仰ってましたので、この NNSA のデータは参考にされる、ということなんでしょうか。

文科省・伊藤審議官「放医研の方で作成して、外部被曝線量の推定プログラムについては、文科省の方でデータを取り始めて以降は実測値を基にして線量を推定すると。そして、事故直後から3月の――ちょっと忘れましたけど、数日間についてはSPEEDI を回して外部線量を評価するというシステムになってます。
 今回 DOE――NNSA の方で公開されてるデータについて、基本的にはさっき申し上げたような線量とか、土壌のデータ、ダストのサンプリングデータが含まれてるようですけれども、その内部被曝に使えるようなデータがあるのかどうかも含めて今確認しているところです。ただ、恐らくはですね、我が方で SPEEDI の推定に使ったような期間のデータでですね、十分な数があるのかどうか、そこは一度確認してみないと分からないと思います」

――その線量評価のソフトは、3月11日から13日迄が SPEEDIの試算結果、そして14日以降が文科省のモニタリングのデータを使用となっております。以前、まだ伊藤審議官がおられない頃に「安定ヨウ素剤の配布について文科省が、どれくらい初期のデータをどの段階で持っていたか」を繰り返し私は質疑していたのですが、ヨウ素のダストサンプリングは3月23日からの測定とのことでした。ですので明らかに文科省は、初期の事故直後のデータは数がなかった、と仰っておられましたので、このNNSA のデータは住民の方々の被曝線量を評価するのにものすごく有用だと思われるのですが、如何でしょうか。

文科省・伊藤審議官「あの、いつからのデータが入ってるのかも含めて――何種類かのデータが入っておりますので、どのようなものであるのか、使えるのかどうかを今、専門家の方々に検討していただいてるところです。
 で、実は前回の質問でですね、NHKの石川さんからも『例えば航空機モニタリングのスペクトルを分析すれば、当時のヨウ素の沈着とかが分かるのではないか』というようなお話もいただきました。それも含めてですね、専門家の方で検討をお願いしておりますけれども、今回公開された中には残念ながら、スペクトル、エネルギーまでは、入っておらなかったようで、そういったことについて必要であればアメリカ側にもデータの提供のお願いをしていきたいと思っております。
 それからあの、放射線医学総合研究所で SDEEDI で実測データを用いたのは14日ではなくてもう少し後だったかと思います。文科省がデータを取り始めたのは15日からで、16日から公表してたと思いますので」

――ありがとうございます。放医研の住民の方々の線量を評価するソフトは10月から運用段階になってまして、その線量を評価する線量評価委員会は7月22日に第1回が開催されたのみで、線量評価についての検討は以後行なわれておりません。で、これからも第2回の線量評価委員会が検討される予定はないとのことです。もしその(もとになる)データが替わる場合、その問診票からの線量被曝を返すということは10月から始まっておりますので、文科省として何らかのアナウンスを、放医研もしくは線量評価委員会にされるご予定はあるんでしょうか。

文科省・伊藤審議官「あの、放医研の方で開発したのは外部被曝線量の評価のプログラムで、それは実際県の健康管理調査の方で使われておりますので今後どうされていくかにもよりますけれども。仮に、そのDOEのデータの方がですね――ご質問の趣旨は『内部被曝(の評価)に使えないか』というふうに受け取ったんですけれども」

――あの、内部被曝と同時に外部被曝も過小評価されないように、できるだけ精度の高い詳細なデータがあるべきだと思うのですが。外部被曝も同様に評価してほしいということです。

文科省・伊藤審議官「そこについては、繰り返しになりますけれども新しく使えるデータがあるかどうかも含めて専門家の方で見ていただいてるところです」

***

 この日のぶら下がりで安全委員会の加藤審議官に「NNSAの生データ、ご覧になりました? いかがでした?」とお聞きしてみました。

加藤さん「実は、あんまりまだじっくり見てないんです」

――えぇー残念、ご見解をお聞きしたかったですのに!

加藤さん「ごめんなさいね、役所のパソコンでは見れないんですよ、家に帰ってからじゃないと見れないからなかなか見れなくって」

――は? どういうことですか? そんなに危ないサイトなんですか?

加藤さん「いや、そうではなくて、役所のパソコンはもともと、たくさん規制がかかってるんです。サボらないように、仕事だけするように、ってとこなんでしょうけど。ショッピングサイトやゲームサイトにはつながらないし、個人ブログも見れなかったり、警告が出たり」

――警告って何ですか?

加藤さん「警告、このサイトを見たことは形跡として残ります、それでも見ますか? という警告がバーン! と出るんです」

安全委員会の若い方「ショッピングサイトが見れない、ということは新幹線や飛行機のチケットも取れないので、急な出張で手配を頼まれたときとか本当に困るんですよ!」

加藤さん「ねー、ほんと、ブログ見にくいのは不便だよねぇ」

安全委員会の若い方「いまどき、市町村の自治体でブログで広報やっているところもありますからね、そこも見れないことがあるのです」

(ちなみに安全委員会の方々にぶら下がりをしていると、こうやって後ろに控えておられるみなさんが口々に会話に入ってこられるのです。なんか、みなさん和気藹々で、好きな感じ。そんな部署は安全委員会、加藤チームだけですよ!)

――じゃぁ、このNNSAのサイトも見れない、ということなんですか?

加藤さん「はい、ほんと日本の仕事用というわけで、海外のサイトは見れないんですよ」

――わーびっくり。どこの省庁でもそうですか? だから、DOEやNNSAのサイトはみなさんチェックしておられなかったってことですか?

加藤さん「そうかもしれません。少なくとも私は役所のパソコンでは見れませんでしたから。家のパソコンで見て、プリントアウトしてゆっくり見ようかと思ったけど、すごいデータ量でビックリしてあきらめちゃった」

安全委員会の通称、専門家「僕は半分プリントアウトしましたよ、すごい量でしたけどね!」

 むー、そうですか、国の原子力関係機関がどこもご存知なかった、ってことが本当にあるのかしら? と思ってましたが、あるのかもしれません。

 JAEA(原子力研究開発機構)や保安院などでもチェックしてなかったなんてね!

***

 11月21日の統合対策室合同会見にて。

――NNSA の生データによりますと、3月17日以降、ストロンチウムが見つかったところが59地点は読み取れるのですが、その NNSA のデータからの評価というのは、いつぐらいに公表されるのでしょうか。

文科省・伊藤審議官「アメリカのNNSAのほうで10月21日に公開したデータについては、原子力研究(開発)機構はじめ、放医研にも投げてですね、どういったデータが含まれているのか、現在精査中ですので、まあそれを見てからでないとそもそも活用できるものなのかどうかも含めてお答えするのは難しいのかな、もうしばらく時間がかかるのかなというふうに認識しております」

――わかりました、ありがとうございます…すいません、もう一度お願いします、放医研のほうに投げて、ということですか?

文科省・伊藤審議官「あ、失礼しました、原子力研究開発機構です」

――原研のほうに。わかりました。では、放医研のほうで外部線量を評価するソフトがもう立ち上がり、結果を返していますが、それはそれとして進行してよい、というお考えでしょうか。

文科省・伊藤審議官「あの、県民健康管理調査のほうで、外部被曝の線量評価をするのに放医研で開発したプログラムといいましょうか、そういう推定支援システムを使うということですので、それをまあ、どういうふうに使うかにつきましては――放医研のほうは研究機関として、プログラムの開発者でありますので、それをどういうふうに使っていくかは、まさに健康管理支援チームなり検討委員会のほうでのご判断によるものというふうに理解しております」

――前回もご説明しましたが、放医研はソフトを開発するのみで、外部被曝の線量データは、線量評価委員会というところが検討しております。そちらが3月16日以降は文科省の2㎞メッシュのデータを使うという回答ですので、もし文科省の、2㎞メッシュ3月16日以降のデータが、今回出ました神奈川県の定時降下物のデータのように上方修正されることが…NNSA のデータによってその可能性があるならば、何らかのアナウンスをされたほうがいいのではないかと思いますが、その可能性はない、という文科省のご認識でしょうか。

文科省・伊藤審議官「まあ、16日と言いましょうか、3月15日が一番最初のデータですので、それ以降については、放医研のほうのプログラムについてはモニタリングデータを、実測値を利用しております。で、それ以外のデータについて、信頼性に足るものがあればそれを採用するかどうか。まあ、これもそういう線量評価を行なう責任を有しております検討委員会支援チームのほうのご指示によって検討することになると思います。
 しかしながらまず今アメリカで、DOE のほうで公開されたデータがどんなものであるかについて事実確認を行なっているというのが現状であります。したがって、将来否定するものではありませんけれども、直ちに使えるものであるというふうには考えておりません」

――では11月10月から線量結果は福島県の住民の方々に返される予定だということですが、その NNSAの線量の原研のほうでの結果というのは、いつぐらいのスケジュールで上ってくるのでしょうか。

文科省・伊藤審議官「一番最初にお答えしたように、まだどんなデータが入っているのか、どんな条件で取られたのかについて、確認する必要があるというふうに思っております。
 それから、県民健康調査のほうに使うかどうか、これはあの原子力(研究開発)機構なり文科省の判断ではなくてですね、健康管理委員会、(県民)健康管理調査(検討)委員会なり支援チームのほうのご判断だというふうに思っております」

 NNSAのデータ利用については、原研のほうでの結果待ち、ということなのでした。

 ん、でも待って、原子力研究開発機構なら、私たちと同じように海外の原子力関連のHPもチェックしてなかったのかしらね? お役所のパソコンは規制が厳しいから海外のサイトはなかなか見られないらしいけど、研究機構なら海外の情報も気を配ってるものじゃない? そう思って、もう一度お聞きしてみました。

――NNSAの生データがホームページ上に上がりましたのは10月21日で、1ヶ月経ちましたが、まだ評価は済んでいないという事でしょうか。原研もご存じなかった、という事でしょうか。

文科省・伊藤審議官「あの2点お答えしたいと思うんですけれども。このNNSAが発表したデータと内部被曝の線量評価がリンクするかどうかについてはまだ何とも申し上げられないという事を先ほど来申し上げている所でございます。
 それから、10月21日のホームページに載ってるという件は、まさに先週の確か月曜日だったかと思いますけれどもおしどりさんからの指摘を受けて私どもで確認してまあ、原研機構についてもその時点で初めて知った、ということであります」

――わかりました、ありがとうございます。

 トホホ、残念、せっかくたくさんのきちんとした生データなので、どうか評価をしてくださいませよ!

***

 11月28日の統合対策室合同会見にて。

――先だってから聞いておりました NNSAのデータについてはJAEAのほうでいつ頃評価が出るでしょうか。地図に落としてみますと須賀川市やいわき市、北茨城のほうでもかなり高濃度、100Bq/m3以上のものが4月などでも発見されており、ストロンチウムも59ヵ所で見られているんですけれども、いつぐらいにこのNNSAの評価は出るのでしょうか。お願いします。

文科省・伊藤審議官「あの、質問の中でもストロンチウムの話ですとか、ダストモニタリング結果の数値について言及がありましたけれども、先ほどの、横浜のストロンチウムの話でも出ましたけれども、今後いわゆるマップ検討会(文科省の「放射線量等分布マップの作成等に係る検討会」)のほうでですね、第二次調査といいますかより広域の放射性物質の飛散状況も含めまして、年度末までにストロンチウムですとかあるいはヨウ素131のより詳細なマップと申しますか、分布状況について検討するというふうに検討会の中でも議論がされております。したがってそういった中で、このアメリカのデータもその一つとして、果たして使えるものがあるかどうか、まあ、原研機構のほうでも精査していただいて、最終的にはそういう検討委員会の場でご議論いただいて、放射性物質の拡散状況の状況把握に活用していきたい、というふうに聞いております」

――年度末といいますと来年3月までとなり、事故後1年経ってしまいますが、この全体的なマップではなく、NNSAが10月に発表した3月事故直後のデータについて、どのような評価を文科省として、モニタリングチームとしてするかのアナウンスは3月より早くはしていただけないのでしょうか。福島県の方々の問診票などによる線量評価のデータや、もしくは今福島県で行なわれている除染等にも役立つ情報かもしれませんので――年度末ですと今から4カ月は経ちますので、事故後1年ではなく、できるだけ早くアナウンスして頂ければと思うのですが。全体的なマップではなくNNSAのデータに特化して答えていただければと思います。

文科省・伊藤審議官「年度末と申しましたのは全体の報告書といいましょうか、その取りまとめがその時期ですので、その前にいろんなデータを検討会などにご紹介して議論していただくことになると思います。
 それからあの、NNSAデータだけを取り出してマップ化することは現在考えていないですし、それから公開されたデータの中でですね、測定条件とか、また数値の読み方について疑問な点もありますので、必要に応じてアメリカにも確認しながらこのデータが果たして活用できるかどうか見た上で判断していきたい、というふうに原研機構から聞いております」

――その、マップ化して欲しいのではなく、評価をお聞きしたいのですが。このNNSAのデータが文科省として、正当なものか、正しい検出、解析をしているものかどうか(という評価)などは如何なんでしょうか。

文科省・伊藤審議官「アメリカのほうで取ったデータですので、文科省はその、何といいましょうか、正しいかどうかを評価する立場にはないと思います」

 この日はこのあと、内閣府で行なわれた「低線量被曝に関するワーキンググループ」の傍聴に走って行ったので、ぶら下がりはできませんでした。
 あ、この低線量被曝のWGもちょっとひどかったから、また書かなきゃ!

***

 ツィッターのアカウント@xryos_kx、りょうさんがDOE/NNSA調査の大気分析結果をマップに落とし込んでくださいました。

 核種が選択可能になったり、どんどんバージョンアップしてとても見やすいんだよね。自分でシコシコ見て、地図に落としてたから本当にありがたいです。

 これをじっくり見ていると気になることがあります。
 239Np(ネプツニウム)と5月にチェック入れて表示すると、須賀川のあたりで黒(100Bq/m3以上)が出るよね…。
 239Npは「脱ってみる?」第16回でも書きましたが、半減期2.356日で239Pu(プルトニウム)になる手強いやつですよ…。半減期が数日のものが5月に大量に検出されるってどういうこと? 
 (あ、第16回のネプツの論文は時間がかかりましたが、結果は出ましたのでもうすぐお知らせできると思います☆)

 そして131I(ヨウ素)と132Iと3月にチェック入れて表示すると、いわきや北茨城に黒が出ちゃいます…。高濃度プルームが流れたという福島原発から北西方向よりも高い(実質、このデータは北西方向のデータはあまり無いんだけれど)。
南方向へヨウ素が流れていることは文科省が公表したヨウ素地図でも表れていました。けど、これほどまで? NNSAのデータだと北西方向より明らかに高いよね?

 飯舘の仲良しと電話で話し合いました。

――飯舘よりいわきのほうがヨウ素の量が多かったってこと?

飯舘「うーん、天候のせいということも考えられるよ。飯舘は雪が降って沈着したんだよね、いわきは天候は崩れなかった。だからあまり沈着しなかっただけで、高濃度のものが通り過ぎたのかもしれない」

――それが文科省の土壌のデータとNNSAの大気中の放射性物質のデータの違いかもね、わかった! そうしたら3月末の小児甲状腺サーベイが、なぜ、いわきで一番に行なわれたか、そしてなぜ最高値がいわきの4歳児だったか、説明がつくかもしれないね。

 小児甲状腺サーベイ関連は初期の「脱ってみる?」にアホほど書いています。コアな読者はもちのろんでご存知だよね☆
 第16回の最後に小児甲状腺サーベイの最高値について書いています。

***

 そして12月5日の統合対策室合同会見。

――すいません、しつこくて。NNSAのデータなんですけども、ネプツニウム239が5月の時点で、須賀川市などで100Bq/m3以上検出されてるのですが、ネプツニウム239は半減期が2.3日ですので、これがアメリカ軍の調査で5月の段階で提出されていた、という点で、文科省そしてJAEAではどういう評価をされているのでしょうか。
 この資料によりますと、3月の時点でいわきや北茨城などでも100Bq/m3以上汚染されていて、えー飯舘や福島市などよりかなり汚染が強いという結果が出ているのですが、3月末に小児甲状腺サーベイが行なわれまして、それにいわきの4歳児が汚染の最高値という結果が出ましたが、それの整合性、理由の説明などどこかが検討はされてるのでしょうか。お願い致します。

文科省・伊藤審議官「まず、その前提といたしまして文科省の役割として、いろいろな政府があるいは自治体が行なっておりますモニタリングデータの公表、取りまとめを行なっておりますけれども。今回アメリカが、DOEが公表したデータ、あるいは他の国内の研究機関が測定し公表したデータについてもですね、評価するような立場にはない、という事をまず申し上げておきたいと思います。
 まあその上で、ただかなりのデータが3月から4月、まあ一部5月にかけて出たという事もありますので、というご指摘がありましたので、原子力研究開発機構などに『こういったデータがあるけれども』という話でお示ししてるところであります。従って今はあの、その検討状況についてはまだご報告受けてございません。
 それからあの、いわき方面といいましょうか、南のほうでヨウ素の高い濃度が検出されたというデータが含まれているかというようなご指摘かと思いますけれども、これについては3月末に現地対策本部におきまして、北西方向とまさにいわきのほうで小児甲状腺のスクリーニング調査を行ないまして、その結果、外部被曝の線量調査において、健康に影響を及ぼすものではなかったというふうに聞いております。
 従って、南のほうにプルームと申しますか、3月の段階でですね、高い線量域が見られたということと、SPEEDIの計算結果によっても示されてるところですけれども、それと仰られたアメリカのデータというものはまあ、矛盾するものではないのかな、まあこれは個人的な観測ですけれども、思った次第であります。以上です」

(ところで、第32回「脱ってみる?」にも書いたけど、ぶら下がりで伊藤審議官としっかりお話ししてから、あ、違うわ、伊藤審議官にぶら下がりをされてから、少し伊藤審議官の当たりが変わったように思います。「個人的な観測」を回答の中でおっしゃって頂けるのはありがたいことです)

――では、その文科省はモニタリングなどを評価する機関にないということで、DOEのデータや各大学の研究機関などのデータを総合的に、沢山のデータを評価する機関というのは、部署はどちらになるのでしょうか。 

文科省・伊藤審議官「評価と申し上げましたけれども、各機関でいろんなデータが出ております。そういったデータについては測定条件も含めて、適切な形で公開されることが国内外の研究者にとって重要だと思います。
 まあ研究者と申しましたのは、政府として評価して避難とか除染に活用しなくちゃいけないデータについては文科省、あるいはそれぞれの機関、省庁においてですね、その評価なり、モニタリングデータの活用が行なわれてるところでありますけれども、一般に申し上げればそれ以外のデータについては広く、内外の研究者がアクセス可能な形で、事故直後の飛散状況の再現をしてみるとか、あるいはシミュレーションといった形でですね、国内外の大学が発表している例がありますけれど、まあそのような形で発表されていくのが望ましい姿ではないか、というふうに思っております。
 従いまして、まあ住民の方の健康の評価ですとか除染、こういったものに必要なモニタリングデータとその活用、評価については現在もそれぞれの省庁において行なっているところというふうに理解をしております」

――それぞれの省庁ということで、では例えば学会でアクセプトされた論文などや、適切に公開されたものを、統括して調べる部署はないということでしょうか。それぞれ在野でやるという事でしょうか。

文科省・伊藤審議官「まあ学会での評価、研究論文というのも、空間線量に関するものもあれば、内部被曝に関するものとか海洋汚染に関するものといろいろありますので、そういったデータが学会等で評価されて、適切なものであると評価されるのであれば、それぞれ例えば海のモニタリングについて、海産物について…を持っている省庁なり、あるいはその、県民の健康調査について実施しているところがそういった評価を活用しながら最新のものにアップデートしていただければ宜しいんではないかと。そういう意味で全てを一元的に網羅することはない、というふうに承知しております」

――事故直後の文科省のデータはかなり量が少なかったというふうに坪井審議官からもお聞きしていたのですが、では、全てを一元的に管理する部署はないということで、初期の文科省のデータを、DOEのデータや各学会などでアクセプトされた論文など活用して再検討するということもされないのでしょうか。

文科省・伊藤審議官「例えば今回DOEで発表されたデータ、ざーっと見てみますと、たとえばダストのサンプリングというのも福島県内で行なわれ始めたのは3月19日以降で、まあ文部科学省で空間線量率を測り始めたのが3月15日、それからダストのほうを計り始めたのが19日という事ですので、事故直後のですね、11日から18日辺りのデータをこのDOEのほうに期待をするというのはちょっと難しいのかな、というふうに思いました」

――文科省のダストサンプリングのデータは3月19日からですが、それはほぼ一日に数ヵ所ずつという事で、3月23日や3月25日に初めてダストのサンプリングを採ったという箇所もございました。ですのでできるだけ初期のデータを集めて再検討することが事故直後の被曝について必要なのではないか、と思ったのですが今のところは再検討はしないという感じでしょうか。

文科省・伊藤審議官「それは多分内部被曝の評価に関わってくると思いますので、一元的にはその健康管理調査に対して、責任あるところが更にどういうデータを数値化していく必要があるか判断をしていく事になるんだろうと思います。 但し、せっかくああいうデータがあるので関係機関には示して、使えるものなのかどうか、というのは引き続き検討をお願いしております。

(あ、なんかやっぱり伊藤審議官が少し住民側に寄ってくださった感じ?)

 その過程の中で、例えばデータの設定条件が分からないとか、あと細かい話ですけど、時刻っていうのが日本標準時刻なのか、アメリカの時刻なのかということも含めて、アメリカ側に幾つか聞かなくちゃいけないという話も聞いてますので、少し時間はかかりますけれども、そういった確認作業は引き続きさせていただきたいと思います」

***

 会見後、ぶら下がりで伊藤審議官とお話ししました。

伊藤さん「私もね、NNSAのデータを見て、239Npがなぜ5月に大量にあるのか、不思議だな、と思ったんですよ」

――ねー、半減期が数日なのに、5月にあれだけあるって不思議ですよね!

伊藤さん「そして1ヵ所だけでしょ?」

――そうです、ひょこっと須賀川の辺りだけなんで、何だろ、これ、解析ミス? どういうこと? と思いまして。

伊藤さん「わからないですけどねー、でも、NNSAのデータはマイナスベクレルとか表示されていて、ちょっと意味がわからない部分があるんですよね、だから今、問い合わせている部分もあるんです」

――なるほどー、よろしくお願いします。で、いわきや北茨城でヨウ素がとても高濃度あったのですが…

伊藤さん「そうですよね、でもそれは文科省が出したヨウ素地図も南方向に流れているので、文科省のデータとNNSAのデータは矛盾してませんよ」

――でも土壌の沈着より、大気中の量のほうがはるかに高いのですが、これは雨や雪などで沈着せずに、とても高濃度の放射性プルームが通り過ぎたということでしょうか?

伊藤さん「そうですね、そう考えています。なのでSPEEDIなどでも考慮して、いわきから小児甲状腺サーベイを行なったのではないでしょうか」

 やっぱり! 小児甲状腺サーベイは
   3月26〜27日:いわき市
   3月28〜30日:川俣町
   3月30日:飯舘村

という順番で行なわれたのです(ちなみに3月24日に川俣町で測定されかけたんだけど、スクリーニングレベルを0.2μSV/hではなく、2.0μSV/hと間違えて測定されたので含まれていないのです。この辺りは過去の「脱ってみる?」でアホほど書いておりまする)。

――わー、では事故直後の内部被曝、外部被曝の評価は本当に重要だと思うのですが、少しでもデータが多いほうがいいのでは?

伊藤さん「そうですね、ただ、NNSAのデータは、239Npなど不可解なところもあるので、文科省のデータと整合させる性質のものではない、と考えています」

――わかりました。アメリカと連携を取って、不可解な部分が解明できたらいいですね!

***

 秋以降、私たちはいわきにもお友達がいっぱい増えて、いわきの方々ともたくさん連絡を取るようになっていたのだけれど(「脱ってみる?」第25回第26回などなど!)、事故直後の線量、被曝について、飯舘村と同様、いや、無関心な方が多いぶん、いわきのほうが深刻なのかも、と心配しています。

 現在の慢性被曝ももちろん心配ですが、事故直後の一発被曝、特に内部被曝が葬り去られないよう、きちんと評価されるよう、急いで全力で追及しなければ!!

***

 今回もかなーり長くて、最後までお読みになった方、お疲れさまです!

 「もっと簡単にまとめてよーう」という声もたまーに聞くのですが、それこそが、安易な情報を求める気持ちこそが、ちょっと警戒したほうがいいことだと思います。
 それに、私がまとめた情報だと、私の意図が入るよ? 質疑の部分は、書き起こしの生情報なので、会見のアーカイブ映像や1ヶ月後くらいにあがる議事録をご覧頂くと、私の意図が入っていないことが確かめられます。そのまんまだからね。
 私の質疑応答でも、私と違う受け取り方、判断をされる方もいらっしゃるでしょうから、全部情報を出しているのです。つまり、長くてごめんよ!

【今週の針金】
文部科学省の伊藤審議官。
最近は会見後、伊藤審議官もマコちゃんと長くお話しして下さいますねん!

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会見での質疑応答のやりとりを読んでいると、
なかなか結論に辿り着かなかったり、たらい回しな回答だったりで、
ときにはじりじりしてしまうことも。
でも、その過程を追体験することも、実は重要だったりするのかも? 
時間をかけてじーっくり読んでいると、結論だけとはまた違う、
いろんなことが見えてきたりもするのです。


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おしどりプロフィール

マコとケンの夫婦コンビ。横山ホットブラザーズ、横山マコトの弟子。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2003年結成、芸歴は2005年から。
ケンは大阪生まれ、パントマイムや針金やテルミンをあやつる。パントマイムダンサーとしてヨーロッパの劇場をまわる。マコと出会い、ぞっこんになり、芸人に。
マコは神戸生まれ、鳥取大学医学部生命科学科を中退し、東西屋ちんどん通信社に入門。アコーディオン流しを経て芸人に。

ブログ:
 http://oshidori.laff.jp/
twitter:
 マコ:@makomelo
 ケン:@oshidori_ken
その他、news logでもコラムを連載中。

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