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2011-10-19up
おしどりマコ・ケンの「脱ってみる?」
第25回
いわき市のお母さまがたの生の声の件。
10月1日にいわき市の映画館、ポレポレいわきで映画『チェルノブイリ・ハート』の上映のあと、トークイベントがありました。いつもどおり走って行ってきました!
『チェルノブイリ・ハート』は以前観たことがあったのだけれど、いわきの方々はどのような思いでご覧になるのでしょうか? そしてポレポレいわきはこの映画を単発のイベントではなく、3週間+延長1週間で、なんと1ヶ月も上映していたのですよ! (ちなみにこのポレポレいわきは、8月におしどりが吉本のお仕事で一日映画館長をさせて頂いたご縁があるのです。「原発に一番近い映画館」がキャッチフレーズとおっしゃってて、こっそり連絡先を交換いたしました☆)
映画の上映のあいだ、ご覧になっているみなさんの表情を見ると、本当に真剣で、難しい顔の方ばかり、涙を流されている方もいらして。背中に背負った赤ちゃんをあやしながら立ってご覧になっている若いお母さまもいらっしゃいました。
そして、トークイベント。
パネラーはいわき子どもを守るネットワークのお母さま2人、3.11以降に福島で撮られた原発のドキュメンタリー映画『バベルの塔』の高垣博也監督、市議会議員の岩井孝治さん。
そして司会はポレポレいわきの福田さんです。福田さんご自身、活動的な女性で、20歳過ぎた2人のお子さんのお母さまで、司会も、母としての想いを話されるところから始まりました。
福田さんは事故後、お子さん2人を急いで逃がしたそうです。しかし自分自身は映画館で残っている子ども相手の仕事もしないといけない、その矛盾。そして逃がした2人のお子さんも、「上の子はもう戻らないと言うけれど、下の子は2年後戻ってきていわきで仕事を始めると。自分はいわきで生きると。『いわきから逃げて逃げて2年後交通事故で死んだらどうする? 私はいわきに戻る、子どもは作らない、決めたから』。そう言うのです。子どもでもそれぞれ判断が違うことに驚きました」。
なので、いろいろな判断、考えを知って、それぞれが判断をしましょう、いい考えを知って話し合える集いをいたしましょう、と、途中に何度も涙を流されながらのお話から会はスタートいたしました。
『バベルの塔』の高垣監督は、京都で時代劇の監督をしてらして、昔から原発にはご興味があったそう。京都も原発銀座の福井が目と鼻の先ですからね。
「震災の2日後、日テレで原子炉の爆発の映像を見ました。その後、テレビが安全だ、安全だと言うんです。映画人として、テレビはスポンサーの影響を受けて、そう言っていると思いました。僕は映画人としてこれでいいのか、報道じゃないんだけどこれでいいのかな、安全だ安全だと言うてる原発て何ぞのものだというものを映画にとらなければ、と思いました」
いわきの子どもネットワークは4月18日に立ち上がったそうです。1人のお母さまは「テレビを見てもラジオを聴いても、大丈夫なんだよ、安全なんだよ、という表現しかなかったんです。学校の校長先生に相談したら、返ってきたのは文科省の文書どおりの言葉でした。不安だと言うとバカにされます。これじゃどうしたらいいかわからないんです。
温度差がキツイんです。大丈夫だよ、というお父さんお母さんと、今すぐ逃げなきゃ、という方々。声を出せないんです。それが一番問題かもしれません。今は『避難』でなく『保養』という言葉を使います。避難というと、非難されるので。そういう差別がたくさんあります」
お父さまとしての岩井議員のお話も切ないものでした。
「原発に関する避難は3月15日の夕方から周りで始まりました。うちの子どもは15歳と24歳。とどまるべきか、避難するべきか。東京の親戚に避難しなさい、と伝えたが、お父さんがいるなら私たちはここにいると言ったんです。気持ちとしては避難させたかったがここにいました。あのとき、たとえ1週間でも2週間でもこの地にいなかったらそれが救いになったのに、その時点でそこまでの情報は無かったんです。ここにいたんです。この地を離れた人たち、その人たちをどうこう言うことはできない。水の確保のため、浄水場で長時間並んだこと、屋外で長時間、子どもと並んだこと父親として、そういう行為をさせてしまったことを悔やんでいます。…うちの他にも相当子どもが並んでいました」
ここで司会の福田さんが一言。
「情報不足という問題は大きいことでした。
実は、あの頃、人が入ってはいけない地域に子どもが盗みに入って、でも警察も捜査では入れないから証拠がとれない。盗みは悪いことだけれど、その地域に入ったことはとても問題。その子たちの将来の健康はどうでしょう? そのときに線量が高い、とても危険という情報を持ってたら、親御さんがきつく言ってたらどうだったのでしょう?」
さらに、情報関連でいわき子どもネットワークのお母さまが一言。
「活動を始め、だんだん時間がたつうちに、こういう情報がありますよ、とどんどん入ってきました。けど、たくさんの保養プログラムがあっても、仕事を休んでまで行けない方が多いんです。子どもたちだけのもありましたが、小さいお子さんは親も一緒、というものが多くて。保養休暇なり、保養手当なり、行政が何か対策をしてくれれば、親たちは自分を責めることなく、そういうプログラムを利用できたんです。」
今、一番重要なことは子どもたちの避難、子どもたちの積算量、ということで除染はどうなの? と岩井議員へ質問が。
「各学校は高圧洗浄機で除染活動をします。今後広く、生活空間改善事業をやっていきます」
通学路、公園はどうなんでしょう?
「最終的には地域を網羅します。いわきには行政区が746ありますが、上限50万で予算をつけます。具体的には被服、長靴、ほうきなどの備品です。地域の方々に除染活動をして頂きたい。一緒に活動していきましょう、行政区単位でそういう案内が行っています。できればそういう活動にご参加を。妊婦さん、乳幼児には線量計の貸与をします。妊婦さんには2000器ほど、乳幼児には8200ほど線量計があります。3週間5週間の計測になります(これ、ガラスバッジのことかしらね?)」
それは自治体の長に相談したらいいんですか?
「そうです。その方の申請でもって補助金が出る。しかしその方がもうひとつ協力的でない場合、自治会内のPTA、青年会などが自治会長の代わりに申請も可能です」
10年先は関係ないからよ、と年寄りが言うときは代わりのものが申請が可能ということですか?
「もちろん歓迎です。高圧洗浄機、性能の高いものから通販までいろいろある。5つの行政区が連携することも可能です。すると50万×5で250万の高圧洗浄機が買えるんです」
それぞれの地域で、例えばスポ小隊(スポーツ小学生隊かしらね?)でも可能ですか? 練習している場所がバラバラでもいい?
「可能です」
除染、高圧洗浄機に関して高垣監督が一言。
「ちょっと苦言的になってしまいますが…洗い流したものは、海に行き、海が汚染されます。下水にいけば汚泥になりますね。流すんではなく、剥ぎ取るようにしないと。そういう意見がある、と離れた地域にいると聞こえてきます。なんぼ除染しても汚れてしまったのは直らない。表土を剥ぎ取っても、農地は直らない。もっと計画的にやらないと。どっかに押し付けているんと違うかな、と。原発は押し付けられても、差別を受けている。補助金の出方も差別だし、いろんな差別構造が見える。京都も若狭のほうに原発が流れている。一発いかれたら、琵琶湖に流れていく。他人事にならないように映画を撮った。いろんな方に観て頂きたい」
ここでパネラーのトークは終わり、会場の方からの声です。
そこで、赤ちゃんを背負い、立ってあやしながら映画を観ていたお母さまが前へ。
「地震の3日前に子どもが生まれたんです。今回の映画を観る前にインターネットで前もって見ていました。ベラルーシの甲状腺ガン、子どもたちを見ていました。そのたびに気が気でなくなった。(涙)
今回、震災だけでもすごく怖い思いをしました。それが薄れてきた頃に4月11日また揺れて。津波の被害で車が1台ダメになりました。家も怖くて住めません。実家は川沿いで、水が怖い。地震がくるたびにどこかに逃げないと、と焦って。原発は大丈夫か、津波がこないかって。いつも原発が根底にあるんです。夜に余震がくるので、枕元に懐中電灯、車に非常食を積んで。日常が非日常になりました。(涙)
低線量という言葉自体、子どもに、赤ちゃんにあてはまるんですか? 小学生や幼稚園の親御さんは横のつながりがあるけれど、小さい子は何の団体にも属してないし、その親はどこにも誰にも相談できない。家族の中でもいろいろな意見の食い違いがあります。不安の中で話す機会が無いんです。大丈夫だ、という親御さんの前ではタブーで話せない。本音は保養したい、永住したい! でもそういうわけにはいかない。保養のプログラムは最大で三ヶ月なんです。
この子の、この子の被曝量を減らしてあげたい。細胞を休ませてあげたい! でも、震災から半年たって、だんだん援助も尻すぼみになって。行くなら今しかない、と思ってたときに、母親が手術をして動けなくなりました。行きたくても行けない人はいっぱいいる!
お金があって、機会がある人は避難できる。できないんだったら何とかしないと、と思い、毎日2時間掃除、水拭きをしています。でも、家の中が0.18μSV/hから下がらないんです!(涙)
苦しい日常ですが、口に出すと少しスッキリしました。」
実は私、メモをとりながら、号泣してしまいました。この方自身、本当に涙をまじえながら、いえ、嗚咽まじりのお話だったのです。
続いて、もう一人のお母さまが私の思いも、と立ち上がられました。
「うちは避難する場所がありませんでした。そして水との闘いでした。水を汲みにいくガソリンが水より大事になりました。……娘が8歳なんです。今、考えれば、集団疎開でもしてほしかった。町が真っ暗で、そのとき主人は仕事でいなくて、主人を待たなければいけなかったんです。知識が無かったんです! 原発に対する危機感をもっと持たなくてはいけませんでした。
……将来の十字架を背負って生きていかなくてはいけないんです。あのとき、自分が判断できなかったことを後悔しています。……強制でしてほしかった! 孫子の代まで、自分の決断に委ねられてしまいました。
今度のことはひとごとではないんです。報道もそう。後出しではなくしてほしい。
政治家は小出しにします、パニックになるからと。けど、福島県に住んでいる以上、私たちには知る権利があります。……(そう言うと)じゃ引っ越せば、と言われてしまう…。
ある程度娘は被曝してしまいました。気をつけてはいたけれど。3月12日、買出しで並んだ子どもさんはいっぱいいました! そのときの思いをこれからを話し合う場所がほしいんです! そしてメディアに対しても。真実を語ってほしい。」
そして司会の福田さんの「日本にいるかぎりは、マグマを枕に、原発と隣い合わせに生きています」という言葉で終わりました。と思ったら、私たちも一言! とマイクを渡され、急遽トークへ。
わー、ものっすごい泣いたあとで、ボロボロの顔なので大ピンチ! そしてこのイベントの最後に何を喋れるのか…まぁ思いつくまま、笑かし重視で喋ったあと、
マコ「みなさんに頑張って、じゃなく、私が頑張るから、私に甘えて! って言いたいです、っていうか言います! 私、頑張りますから私に甘えて!」
ケン「うん、僕、甘える!」
マコ「アホ、あんたちゃうわ! とにかく、みなさん、笑って前を向いて子どもたちを守っていきましょう!」
と言うと、それまで笑っていたお母さまがたが泣かれました。どうして!?
後からお聞きすると、「メディアは取材にきても、私たちに泣いたり怒ったりしてほしいんです。そう言われます。そんな段階はもう過ぎたし、私たちだって笑うこともある。あの言葉を聞いて、ああ、笑ってもいいんだ! って思ったらホッとして…」ですって。
ううん、どこの取材だよ、全く!
そしてイベントが終わったら、すぐに赤ちゃんを背負っているお母さまを探しました、というか待っててくださってました。
「震災から、思いを話せなくて、やっと話せました…」と泣かれて、抱き合ってまた泣きました。
それから涙はお互いおさまらないけれど、手を取り合ってお話をしました。
「この子は将来差別を受けるかもしれない、結婚も心配、生まれたばかりなのに…。低線量だから問題ないというけれど、赤ちゃんは感受性が100倍っていうから、本当に大丈夫なのかわからないんです。低線量でも100倍だと危険かもしれない…」
すっごくかわいい赤ちゃんで、私はこの赤ちゃんの写真を携帯の待ち受けにしちゃいました、本当にプロみたいにフォトジェニック! 電話を持つたび、いわきのこの赤ちゃんのことを考えられるようにです。
そして、このいわきのお母さまの声をみなさまにぜひ聞いて頂きたいな! ということで、マガ9学校にお呼びすることにしました。
直接、彼女のお話をお聞きください。
福島のお母さまがた、どうかご自分を責めないで!
そして被災地以外のお母さまがた、どうかおちからを貸して!
もちろん、お父さま、お姉さま、お兄さまがたもね!
***
子どもたちの未来のために、親御さんたち、特にお母さまが真剣な場面がとても多いです。
で、思いつきだけれど、子どもたちの未来を責任持って選ぶということで親御さんが子どもさんの分の選挙権を持つのも面白いかもね?
どうしてあの人が自治体の長、政治家なの? ていうことが多いし、それはもちろん選挙に行かない方のせいでもあるんだけれど。
第22回で経産省前でハンストしてた若者たちを取材したとき、10代の方々もいらして、そしてみんな20歳前後で、今、日本中に原発があって、今、老朽化した原発が福島で事故ったのは、確実に彼らのせいじゃないよ…と思ったもの。命のぶんだけ未来を決める権利、選挙権があってもいいと思うな。
まぁ、それはそれで、いろいろ誘導操作があるのかもしれないけど、でもそれは今だってあるしね!
それにさ、もともと女性には選挙権が無かったんだからさ!
「女子どもに選挙権はいらない」んだったんだから、そろそろ子どもも未来を選ぶ権利があってもいいよね?
そしてそれは親御さんが責任を持てばいいと思うんだけどな!
そうすれば、お年寄りの意思決定でものごとが決まっていくこの国も改善されるかもしれませんよ!
【今週の針金】
「お母さま方はどうして行動力があるの?」とマコちゃんにきいたら
「お母さま方は頭じゃなくて命で考えるからじゃない」と言ってましてん!
3.11の直後、何も情報がないままに、知らないままに、
子どもを危険な状況にさらしてしまった。
悲鳴のようなそんな声を、福島のあちこちから耳にします。
そして今も、とてつもない不安の中での日々が続く…。
その声に耳を傾けて、そして私たちこそが「頑張る」ために。
福島在住のお母さん、佐川晴香さんほかゲストをお呼びしての、
「マガ9学校」は10月29日。お申し込みはこちらから。
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おしどりの2人への「ご祝儀口座」はこちらから!
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おしどりプロフィール
マコとケンの夫婦コンビ。横山ホットブラザーズ、横山マコトの弟子。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2003年結成、芸歴は2005年から。
ケンは大阪生まれ、パントマイムや針金やテルミンをあやつる。パントマイムダンサーとしてヨーロッパの劇場をまわる。マコと出会い、ぞっこんになり、芸人に。
マコは神戸生まれ、鳥取大学医学部生命科学科を中退し、東西屋ちんどん通信社に入門。アコーディオン流しを経て芸人に。
ブログ:
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その他、news logでもコラムを連載中。