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2011-07-27up

おしどりマコ・ケンの「脱ってみる?」

第13回

情報とは、どの言葉を使うかから
洗脳が始まっている件。
子ども健康調査、経産省の780億の内訳、
加藤審議官のNHK番組の感想、昼夜を問わず10億Bq/h!

 ウトウトしていた今週の月曜日(7月25日)の早朝、テレビから流れるニュースでパッと目が覚めて飛び起きました! 

 「福島県は18歳以下の子ども全員、36万人に健康調査をすることを決めました…」

 なんですって! 初耳だ! どんな調査なの? 詳しい情報はない? 内部被曝をきちんと評価してくださる気分になったのかしら? 甲状腺検査とか言ってるけど、今さら甲状腺サーベイしてもしょうがないし、どういうこと? 

 そしてネットでいろいろな媒体のニュースを調べ続けました。

 7月24日に山下俊一教授が座長の検討委員会が開かれ、0歳から18歳以下の子どもに2年ごとに甲状腺検査を、警戒区域や特定避難勧奨区域などの住民に尿・血液検査を、ということ。

 25日朝の段階では、河北新報がいちばん詳細でしたね。それによると、1次検査施設で超音波検査のあと、しこりなどが認められた場合、2次施設で細胞診や採血・尿検査とのこと。

 は? これって単なるガン検診ですよね…。そして、36万人には甲状腺エコー検査するだけで、血液検査を全員にするわけではないの? だったらガン検診としても精度低いよね?

 いろいろなニュースを見比べて、大体概要をつかみました。

 で、まだ出てきてない情報を知りたかったら、お聞きするしかないよね、福島県庁にお聞きしました。

——河北新報の記事によりますと、24日に決まった健康調査の概要は1次で超音波検査、しこりがあるときのみ、2次で血液・尿検査となっていますが、この認識でまちがいないでしょうか?
「はい、血液・尿検査は避難区域の希望者や妊婦さんです。子どもは超音波検査です。」

——36万人の子ども全員に血液検査をするということではないですね?
「はい、全員にするのは超音波検査のみです。」

——この避難区域の方々への血液検査はどのような検査ですか? 詳細をご存知でしたら教えてください。
「一般的な血液検査に白血球の分画を見る程度です。」

——腫瘍マーカーを見たりとかはしないのですか?
「そういう意見もあったのですが、今回は見送り、次回に検討が持ち越されました。」

——次回の委員会はいつですか?
「9月です」

——子どもの検査では、これだと甲状腺ガンしか見れませんが、FT3やFT4(甲状腺ホルモン)、TSH(甲状腺刺激ホルモン)なども調べる血液検査をしたら、甲状腺機能障害も調べられるのでは?
「今のところ決定はこれだけなんです」

——あと、この健康調査にかかる費用は政府が1000億円規模の基金を検討と毎日新聞の記事にありますが?
「いえ、政府じゃないです、経産省です」
(?! 原発推進の経産省が住民被曝の健康調査のお金出すの!?)

——ちなみにおいくらくらい出ているのですか?
「780億ときいています。内閣府からは180億くらいだったかな、これはあやふやですが」

——780億、まるまる健康調査の費用なのですか? 
「いえ、県民健康調査と、WBC(ホールボディカウンター)の購入費用と、線量計やサーベイメーターを買って自治体に貸し出したりとかです」

——では、780億は県民の健康問題の費用ということですか?
「そうです」

——WBCを搭載した検診車を5台購入して県内をまわる、と地域医療課に以前お聞きしましたが、それもこちらからの費用ですか?
「そうです」

——据付型のWBCは購入しないのですか?
「もともと2台ありますので…」

——それは大熊町の原子力施設にあったWBCですか?
「そうです、それです」
(やった! 以前に園田政務官にお聞きしていてまだ回答無いやつだ!)

——あの2台は5月に移動して修理中ということで、その後のことがわからないのですが…
「あー私もよく知らないのですが、WBCは地域医療課なので」

——では地域医療課のどなたにお聞きしたらいいでしょう?
「○○さんが担当ですよ」

 ということで地域医療課にお電話しましたが、○○さんはその日不在でした。またかけなおそっと。

 (翌26日に掛け直してお話できました。大熊町の原子力センターにもともとあったWBC2台は修理して、なんと数日前に南相馬の市立総合病院に移送されたとのこと。稼動はまだ、調整中で、具体的な稼動日は検討中ですって。

 あら? 南相馬の市立総合病院にはもともと移動式のWBCがありましたよね? 6月末に鳥取からきてますよね? と聞くと、そうです、とのこと。計3台? ちなみに全国のWBCの稼働率と総数を調べたときに、鳥取は日本交通の倉吉営業所に可動式が1台、とあったからそれがきたのだと思うんだけど)

 (ちなみにこの市立総合病院にWBC2台きた件は、すぐに飯舘の仲良しに連絡して、市立総合病院のツテに確認したけど、未確認ですって。まぁ最近すぎるのかな? 鳥取からの可動式WBCは正確な値が出ないということなので、新たに入れたのかもしれないし、市立総合病院は福島県立医科大の系列病院で、でも、郡山やいわきや福島市に1台持っていってもいいよね? どうして2台とも行ったのかな? などなどこの件はまだまだ調査中です)

 (そしてこの福島県がもともと所有していた据付型のWBCのメーカーは富士電機とのこと)

***

 あああ、話がそれた、何でしたっけ? 子どもの36万人の健康調査でした! みなさんついてきてね、この間に福島大学の副学長ともJAEA(日本原子力研究開発機構)との提携について長電話してたから、そっち書いちゃうとこでしたよ、支離滅裂!

 で、18歳以下の(正確にいうと92年4月2日~今年4月1日に生まれた、事故当時に福島県内の居住者)36万人の健康調査に関しての件。7月25日の共同会見でもいろいろお聞きしました。

 まず経産省から出ている780億のうちわけ。

 ①基本調査、12億
 ②長期健康調査、583億
 ③データベース、15億
 ④子どもガン検診、80億
 (ちなみにこれが36万人の検査ですって、やっぱりガン検診よね、そして正確に言えば甲状腺ガン検診でしょ?)
 ⑤WBC、17億
 (WBC搭載の検診車を5台購入して11月から検診と聞いてたので、ここに入るのね。だいたい1台3億らしいから、3億×5台で15億、残りの2億は、もともと所有していた据付型WBC2台の修理や移動などの予算かしらね?)
 ⑥積算線量計、43億
 ⑦子どもの心身確保事業、32億
 (は? これなにするの? 調べてあらためて、突っこみ直すか!)

 ということでした。

 そして、細野大臣が以前、IAEAへの報告書を作成してた頃に、IAEAから監視機関についての不備の指摘があったので、その件をお聞きしたら、「原発推進の経産省の同じ屋根の下に(ほんとこういう言い方なさったの!)原発を監視する保安院があるのはおかしいので、外に出さなくてはいけない」という回答を頂いたことがあったの。

 で、それを踏まえると、原発推進の経産省が、県民の被曝調査のお金を出すのって怖くない? それを細野大臣がいらっしゃらなかったから、園田政務官にお聞きしてみたけど「別に疑問は感じない」。

 まぁ、そうおっしゃることは分かっていたから、また細野大臣にもお聞きしてみよ。

 あと、子どもの健康調査は単なる簡易ガン検診なので、本当に詳細な調査をするなら、1次検査に血液検査を含めるべきではないか? 腫瘍マーカー検査をしたり、そもそも甲状腺を調べるにしても、FT3、FT4、TSHなどの値を調べて、甲状腺機能障害は調べるべきではないか? と園田政務官と安全委員会加藤審議官にお聞きしましたが、

 「県にまかせてるので…」

——県の検討委員会の座長、山下教授は河北新報にはっきりと「検査を安心につなげたい」とコメントしているが、単なる安心のための検査に予算を使うのはどうかと思うが?(内部被曝を考慮しない問診表の行動記録調査もひどいしね!)
 園田政務官「安心のためだけではない、と県の専門家を信じているので…」

 ま、ここで話してもラチが明かないよね、そうか、山下教授に共同会見に来て頂ければいいのかもね、ひらめいた☆ 被災者生活支援チームがいくら会見に来られても、結局オブザーバーで県の検討委員会の報告を受けるだけ、っておっしゃってたしね!
 ところで、この日、安全委員会の加藤審議官にこんな質問もしてみました。けっこう安全委員会の見解として、しっかりおっしゃってくださったんで、ほぼ、まるごと書いておきます。長いけどご覧になって! これはね、あまり要約せず、1次情報のままのほうがいいと思って。

——7月23日に放映されたNHKの番組(NHKスペシャル「飯舘村~人間と放射能の記録」)で、長崎大学の高村昇教授が、福島県放射線健康リスク管理アドバイザーとして飯舘村で説明会をおこないました。その中ではっきりと、10μSV/h迄は子どもが外で遊べる、普通に生活できる、と仰っていました。この値は外で8時間、木造建屋の中で16時間で計算しますと、年58.4mSVになるんですけれども、このような値で本当に子どもが外でふつうに遊んで生活できるものか、加藤さんのお考えを教えて下さい。

加藤審議官「NHKの番組での高村先生の発言ですが、私も見ておりまして10μSV/hまでなら大丈夫という所については、何を根拠に仰ってるのかなあという感想を持ちました」

——7月19日の会見で被災者生活支援チームの方が来られまして、内部被曝の過去推計をどうするのか再三お尋ねしましたが、検討するという事で、県民健康管理調査にかかわらず、被災者生活支援チームで現時点で内部被曝の過去推計に関する統一した見解は無いとお答えをいただきました。そして問診票に関係する内部被曝の過去推計も有識者会議で決めるのみで、被災者生活支援チームはオブザーバー報告を受けるのみだと、はっきりおっしゃいました。
 ですので内部被曝の過去推計を安全委員会として助言されるおつもりがあるのか、見解が有ればお聞かせ下さい。

加藤審議官「内部被曝の過去推計ですけれども、昨日健康管理調査の委員会でセシウムによる内部被曝の推算値は報告があったんですけども、安全委員会の中でも、委員も含めて『ヨウ素についてはどうするおつもりなのかなあ』と、いうようなお話が今朝もあったところでして。被災者生活支援チームの方では、県の行う健康調査に協力する立場と承知しておりますので、生活支援チームとしての見方等も踏まえて安全委員会として対応していきたいと思います」

——6月30日に福島県の子どもたちの内部被曝の管理をする為の政府と市民との交渉がありまして、そこで出た質問への回答として7月1日に安全委員会から「内部被曝を避難基準に含める」という文書が、被災者生活支援チームからは7月6日に「外部被曝量で判断している」という文書が出ております。このように安全委員会と被災者生活支援チームで見解が違うようですが、その点は如何でしょうか。

加藤審議官「4月の時点で計画的避難区域の設定などを行った際には、外部被曝線量から行った訳ですけども、ただICRP(国際放射線防護委員会)で言っております目安とする値は、外部被曝だけでなく内部被曝も考慮して決めるべきものであります。しかし、当時は内部被曝の状況というのを計測しての値は無かった訳でありまして、再浮遊係数などから試算してみて非常に高く見積もっても1割程度だろうと。その時点では20mSVまで余裕のある状況だったので、基本的に外部被曝線量を持って判断していくという事で良いだろうと考えた訳であります。
 実際の現在、今後の状況を見ていく中では被曝線量というのは、外部だけではなく内部被曝線量というのも評価していく事が必要だと考えております」

——先ほど仰っていた、10μSV/hで子どもが普通に外で遊べると仰っていた高村先生などが、有識者会議で内部被曝の健康調査を中心になって進めていく事について、福島県民の方では非常に危惧を抱いてる訳ですけども、安全委員会として何か助言をされるおつもりはありますでしょうか。

加藤さん「健康管理委員会の委員については県の方で委嘱されてますので、個別の委嘱について安全委員会から意見をいうのは差し控えさせていただきたいと思います。」

 そして、会見終わりで加藤さんとお話ししてましたら、NHKの番組で高村教授が10μSV/hまで大丈夫、と発言されたあと、ビックリして、「大急ぎで計算機探して、年の総量を出しましたよ!」とのこと。そうですよねぇ。

 「年100mSV以下だから大丈夫、という考え方なのですかね、確かあの頃そういう考え方がありましたからねぇ」

 そして、NHKの番組の感想をいろいろ話し合ったあと、安全委員会の後ろに座ってらっしゃる方々も、加藤さんも「いまだに県民の方々が自分たちの線量を知らず、内部被曝の量もわからず、というのは、本当に不安ですよねぇ、どうなってるんですかねぇ…」とのこと。

 安全委員会が助言だけでなく、もっと権力があったらいいのにな!

 けど、事故対応やプラント状況以外のことで、安全委員会の管轄外のことなのに、積極的にコメントしてくださる加藤さんは本当にありがたいです。

***

 長くなっちゃったんで、もう1つのトピックは簡単に書きます。

 4月19日から、原子炉から夜間出る水蒸気などのことを東京電力にお聞きしていました。たまにモクモク煙が出てて、心配じゃない? それにも放射性物質は含まれている、とはっきり回答を頂いてたから、じゃ、概算でいいので、どれくらいのベクレル数出ているの? と聞いてたのです。

 回答は「1号炉、2号炉、3号炉全部合わせて、昼夜を問わず毎日10億Bq/h出ている」とのこと。

 つまり毎日240億Bq放出されているのです。これでも事故直後に比べるとかなり少ないんだけどね、でも、余裕でINES(国際原子力事象評価尺度)の評価基準でレベル4規模の事故が継続中ってことです。

 これがなかなか出てこないので、6月から7月中旬にかけては毎週お聞きしてて、「建屋の上にモニタリング装置を置きますので、その評価がまだ」との回答をずっと頂いてたのですが、結局「福島第一原発の西門でのダストサンプリングで計算いたしました」とのこと。

 えぇ! それじゃ4月に質問した段階で概算出たじゃない?

 「おっしゃるとおりでございます」

 じゃ今じゃなくてそれで計算した4月の段階の放出量はどれくらい?

 「4月4~6日までで、概算で毎時2.9×10の11乗でございます」

 2.9×10の11乗? ちょっと待って、2900億Bq/hってこと? 1日に6兆9600億Bq出てたってこと? いや待ってよ、「値としてずっと横ばいが続いていてあまり変わりない」と抜かしてたけど、全然違うやん!

 ダストサンプリングということは核種の組成もわかるよね? あーあ、もう突っこみどころ満載だこと!

***

 「ガン検診」を「健康調査」と報じたり、10億Bqと言うくせに、同じ質疑の中で2900億Bqを「2.9×10の11乗Bq」と言ったり。

 そもそもチェルノブイリ事故のときは避難基準はμSV/h表示ではなく、kBq/㎡表示だったんですって。μSV/hは外部被曝の概念で、内部被曝にほとんど関係ないんですって。地面の汚染度を表すだけで。そこにいる人の呼吸による吸入被曝も考慮するには、SVでなくBqじゃないとわかんないものねぇ。

 そしてセシウムを想定した変換ルートとして、1μSV/h=300kBq/㎡というものがあるんですって。かなり重要なルートなのに、新聞などでは出てこないって、ECRR(放射線リスク欧州委員会)のバグビー博士がおっしゃってました。

 ちなみに、「1.5μSv/h≒500kBq/㎡」がチェルノブイリ当時のICRPの強制退却ゾーンの定義。μSVより、Bq表示のほうがずいぶん値が大きくなるうえ、そこにいてどれくらい放射線の影響を受けるかより(μSV/h)、その空間にどれくらい放射性物質があるか(kBq/m2)のほうがわかりやすいよね。

 なので、ニュース、情報が本当はどんな意味を持つのか、目を光らせとかないと、鵜呑みにするだけだったら、うっかりだまされてヒドイ目にあっちゃう。あ、もうあってるか。

 1次情報から2次情報になるときに、それを報じた方の意図が必ず入っちゃうと思うから(私もよ、もちろん!)、なので、できるだけ、私たち情報の受け手が賢くなって、ちゃんと知って考えて動いていきましょうぜ!

 今までそれをしてなかったから、こんなことになっちゃったんだな。どうせわかんないからごまかしとけばいいや、を横行させてしまったのでしょう。そして遠くのことを我がこととして考えてこなかったからね。

 今まで、ヒドイ目にあってきた方々、一緒に怒らなくて、本当にごめんなさい、と懺悔の毎日です。

【今週の針金】
バードウォッチングならぬ、ツイッターウォッチングですねん!
経済産業省資源エネルギー庁はこれから、ツイッターのモニタリングに力を入れるそうですねん!!

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おしどりプロフィール

マコとケンの夫婦コンビ。横山ホットブラザーズ、横山マコトの弟子。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2003年結成、芸歴は2005年から。
ケンは大阪生まれ、パントマイムや針金やテルミンをあやつる。パントマイムダンサーとしてヨーロッパの劇場をまわる。マコと出会い、ぞっこんになり、芸人に。
マコは神戸生まれ、鳥取大学医学部生命科学科を中退し、東西屋ちんどん通信社に入門。アコーディオン流しを経て芸人に。

ブログ:
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twitter:
 マコ:@makomelo
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その他、news logでもコラムを連載中。

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