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2011-07-13up

おしどりマコ・ケンの「脱ってみる?」

第11回

飯舘を闇に葬らないで!
~住民の被曝関連の闘い、まだまだ!

 脱涙! 今週は途中で泣きが入っちゃいましたが、泣いてるヒマがないくらいおっそろしい事態になってるようです。住民の内部被曝が過小評価されないよう心配してたんだけれど、そもそも、内部被曝の調査をほとんどしないみたいですわよ! わーまさかの展開! あ、敵ってそっち? みたいな。それでは今週の闘いっぷりをどうぞ。

 特筆すべきは被災者生活支援チームの医療班長、福島氏が会見にいらっしゃったこと。もーうこの方を引っ張り出すのに苦労したのよね!
 月曜日のぶら下がりで安全委員会の加藤氏に

マコ:「私の質問は必ず、担当は被災者生活支援チームだから…と言われちゃうんですけど、そちらの方もときどき会見にいらっしゃって頂きたいんですけど? 加藤さんが私の質問に回答してくださることも多いですけど、それって明らかに管轄外ですよね?」

加藤氏:「そうですね、私も被災者生活支援チームの方が会見に来られたほうがいいと思いますよ。記者のみなさんの要望があれば、助言いたしましょう」

 そっかー。記者さんがたをとりまとめか… ま、やってみましょう。
 くるっと振り向いて、会見場の記者さんがたに「あの…」と近づくと、目をそらして逃げる方多し! トホホ。予想ついてたけど。
 そこを話しかけてくださったブルームバーグニュースO氏!

ブルームバーグ:「どうかしましたか? あなたの質問いつも専門的で素晴らしいですね! とても勉強してらっしゃいますね」

マコ:「ありがとう存じます! あの、お願いがあるんですけど!」

 そうして、被災者生活支援チームの方に共同会見に出てきて頂けるよう、協力してもらえないか、とお願いしました。

ブルームバーグ:「わかりました。では細野原発担当大臣の朝の定例会見に私はよく行くので、そこで聞いてみましょう。」

 やったね☆ それが月曜日のこと。
 火曜日は細野大臣が会見にいらっしゃらなかったんだけど、こんな質問をしてみました。

「原発事故対応の共同会見として、被災者生活支援チームの方が会見においでになったほうがいいと思うんですけど、安全委員会として助言されるお考えはありますか?」

 そうすると加藤氏、その場で同意と助言を! ナイスアシスト!
 水曜日に細野大臣への質問の中にこの件も混ぜました。

細野大臣:「検討します」

 なんでかその日に帰って号泣しちゃったんだけど(まぁときどきウェットベントする、ということで)、数十秒後に飯舘から電話がかかってきて、すかさずシャキッとしました☆

 でも、木曜日もなんかフルパワーでなくって、やだわーと思ってたら、金曜日の朝にブルームバーグO氏からメール。

 「朝の定例会見で細野大臣に共同会見に被災者生活支援チームを送り込んでくれ、と質問しました。重要性は認識されているが、なかなか難しいので、要所で送り込む、解決策として園田政務官に聞いてほしい、とのことでした」

 むむ、そうですか、やっぱり厳しいね、と思っていたら! 金曜日の会見に被災者生活支援チームの福島氏がいらっしゃいましたよ! 加藤氏、細野大臣、ブルームバーグO氏、ありがとう存じます☆
 というわけで、今週は少し状況が進みました。 

①安定ヨウ素剤の配布。
 やっとお日にちを出して頂きました。飯舘村に届けたのは3月16日(私が調べた日にちと微妙に違いますが、ヨウ素剤配布を認めて頂けたからまぁいいや)。
 3月15日の晩に、福島第一原発から北西方向に放射性プルームが流れたのですが、ヨウ素剤の投与の判断基準となる、ヨウ素のダストモニタリングが始められたのは3月20日なのです。ヨウ素剤を16日に届けた根拠となるデータは何? とお聞きしてるのですが、法律上の根拠ばかりおっしゃいます。 
 そうではなく、空間線量かダストモニタリングのデータを教えてください、としつこくお聞きしてましたら(まっさか、イメージで出すわけないものね!)、びっくり発言がありました。
 福島氏「初期は空間線量のデータが少なく(うんうん知ってる知ってる)、ですのでDOEなどや文科省のデータなど、できるだけのデータを参考にし…」
 DOE!? DOEっておっしゃいましたね!? DOEとはDepartment of Energy、アメリカのエネルギー省のことなのです。
 そしてその日の会見中にUSエネルギー省のサイトの福島原発事故の調査のページを見つけ、熟読。
 そうしたら、3月15日に33名、NNSA(National Nuclear Security Administration=国家核安全保障局)のメンバーが来日して、もともと日本にいた6名のDOEメンバーと合流して、3月15日~22日までに40時間の航空モニタリングと1000箇所以上の地上モニタリングをしたんだってさ!
 初期のデータが無い無いっておっしゃってたのに、あるじゃん、ここに!
 ご丁寧に「人々の健康や安全に関係する重要な情報をシェアする」という大統領のコミットメント(約束)まで載ってますぜ。そしてフランスのIRSNとかはこのデータをもとに解析をしてたそうです。
 そういえば、ときどき、米軍の航空モニタリングのマップが1枚ぺラッと公表されてたけど、こんなに詳細なデータがあったのね…。航空モニタリングの他に、アセスとサーベイと、そして monitor and sample areas for radiation。こ、こ、これは、英語の論文ではよく、空間線量とダストモニタリングを指してるよね…
 というわけで、これを公開してくださいませよ☆ とお願い中です。

②飯舘に駐屯していた自衛隊や警官のデータ。
 飯舘に野営! していた自衛隊は独自で線量を測っていたのね。で、あまりにも線量が高すぎて、野営ではなく、体育館を使わせてほしい、という要望があったんですって。
 で、福島の他の地域の自衛隊はだいたい1ヶ月で交代してたらしいんだけど、飯舘は1週間で交代してたんですって。
 ひょっとして、相当に個人の積算線量が高かったことを認識していたのでは? 15日以降の飯舘に野営をしていたのもとんでもないし、自衛隊の方々も心配!
 というわけで、自衛隊や警官の方々の線量データも教えてください、そしてその方々はWBC(ホールボディカウンター)を受けたのですか? と質問中。自衛隊の方々の健康状態も心配なのと、そのデータが初期の住民被曝の参考データになるかもしれないのです。

③事故直後、全国の原発から福島に立ち寄った作業員の方々のデータ。
 事故後、全国の原発から約5000名の方が福島原発に立ち寄り、作業をし、そしてWBCを受けているのです! その方々の健康状態も気になるうえ、初期の福島のデータとして住民被曝の参考になるかもしれません。特に、約5000名の方がWBCを受けていらっしゃるということで、初期の放射性プルームの核種の組成の推定に役立つ可能性があるのです!
 つまりね、セシウムとヨウ素の割合を知りたいの! 生体半減期をとっくに過ぎたヨウ素は、今から内部被曝を測定しても全く検出されないので、過去のヨウ素被曝を推定するときに過小評価されないよう(初期の放射性プルームはほとんどヨウ素だったらしいから)、初期の核種の組成のデータをできるだけ集めないといけないのです!
 というわけでずっと質問してるんだけど、預託線量しか出してくれないのさ…。核種のベクレル数を教えてって言ってるの!!

***

 現在の追いかけているメインはこんなとこですが、すさまじい事実が出てきました。
 「過去の内部被曝はどう評価するのか?」と、5月から質問し続けてましたが、その回答として安全委員会も文科省も「福島県が県民の行動記録を取り、その問診表から推定する」。で、その問診表から内部被曝を推定するのに過小評価されないよう、どのダストモニタリングのデータを使うのか、しつこく聞いていたのね。
 で、それは有識者会議で検討中、ということだったので、会見ではラチがあかないから、福島県庁に問い合わせてみました。
 災害対策本部の救援班、県民健康管理チーム。まぁ、問診表がホームページからプリントアウトして使うしかない、というとこからツッコミどこ満載なんだけれど、それはおいといて、内部被曝の推定式をお聞きしました。
 たらい回しにされたすえの回答。

 「問診表は外部被曝を出すものであって、内部被曝は一切出さない」

――ええええええ!?
 いや、文科相の坪井審議官や安全委員会の加藤審議官が、内部被曝は問診表から出す、っておっしゃってたんですけど?
 「問診表からは外部被曝しか出せません」

――じゃ、なんで食べたものとか記入する欄があるの?
 「行動記録からは外部被曝しか出せません」

――まぁ、食物からの経口被曝は出しにくいと思うけど、でも行動記録から、吸入被曝の内部被曝はある程度出せるよね?
 「県民健康管理チームは外部被曝しか関与しません」

――………じゃ内部被曝はどこが関与するんですかっっっ!
 「地域医療課です」

 そうですか…。そしてすぐ地域医療課に問い合わせ。地域医療課では確かにWBC関連を扱っていました。11月に福島県でWBCを搭載した検診車を5台! 購入して県をまわるんですって。いやーあれけっこう高価だよ? ポンと5台も買えちゃったの? 
 しつこくお聞きしたら県の予算からだけど、国の基金でまかなったのですって。そして、8月からJAEAで2800人、福島の市町村から抽出された住民がWBCを受ける、ということで。

——では、そのWBCの結果から過去の内部被曝はどうやって推定するんですか?
「セシウムが大量に出た方のみ、そういった考慮をするのではないかと…」

——いえいえ、ヨウ素はもちろん出ないし、セシウムの生体半減期も過ぎた今となってはセシウムもあまり検出されないですよね?
 「詳しいことはわかりません。専門家にまかせています」

——そもそもその抽出される住民、というのはどんな方々?
 「子供とか妊婦とか若者とか…」

——いやいや、子供の生体半減期はもともと大人よりずっと早いですよね(セシウムの子供の生体半減期は44日、大人は50~150日)? なので、代謝の早い方々ばかり検査しては、やはり、セシウムが出にくいのでは?
 「詳しいことはわかりません。専門家にまかせています。」

——その専門家は放医研?
 「はい、そうです」

——では放医研が過去の内部被曝を推定するの?
 「いえ、放医研はデータを扱うだけで、判断するのは県です」

 県の有識者会議ね…。また出てきたか…。お聞きしたいのは内部被曝をどうやって推定するかなんですよね。

——それはどこがどうやってやるの?
 「県民健康管理チームの問診表です」

——え、そこは外部被曝のみだって、内部被曝はこちらだって聞いたけど?
 「違います、問診表でWBCの値が高かった方は内部被曝を考慮します。おつなぎします」

 そうして、無理やり県民健康管理チームにつながれ、よくお話ししてる方とまた喋るはめに!

——問診表は外部被曝のみなんですよねぇ…?
 「そうですよ、地域医療課が間違っています。なにぶん難しいことなので、きちんと理解せず混乱している者も多いんです。おつなぎします」

 そうして地域医療課につながれ返され…ま、福島県庁の保留音はすさまじく聞いてますぜ☆

 そして、気になる福島県の有識者会議の全メンバーの名前もお聞きしました☆
 まず座長、山下教授!(ミスター100ミリシーベルト、という芸人顔負けの通り名をお持ちです。初期に放射線を大丈夫、大丈夫、と言い続け、こっそり訂正を入れているのは有名ですね☆)

※この件↓です。
「福島県公式HP/福島市講演会  質疑応答 動画」
訂正:質疑応答の「100マイクロシーベルト/hを超さなければ健康に影響を及ぼさない」旨の発言は、「10マイクロシーベルト/hを超さなければ」の誤りであり、訂正し、お詫びを申し上げます。ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありません」

 そして他のメンバー。
 広島大学、神谷研二教授(原爆放射線医科学研究所)
 放医研、明石真言理事!
 放射線影響研究所、児玉和紀先生(主席研究員)
 福島県医師会、星先生、(財団法人星総合病院の先生かしらね?)
 福島県立医科大、アベ先生、ヤスハラ先生
 福島県庁保健福祉部部長
 以上が県民健康調査の問診表に関わる有識者会議のメンバーです。

 そんでさ、会見のぶら下がりで安全委員会の加藤さんとこ行って、問診表の件をお聞きしてたら、文科省の坪井さんも突然加わってお話ししました。

——問診表は外部被曝のみって断言されちゃいましたよ?
「変ですねぇ…まぁ、これから検討されるらしいから…」

——そもそも、県民の被曝調査はどこが責任持つんですか?
 「県です。県の主体です」

——だから、責任はどこ? 国は?
 「国はあくまで協力のみで、県の責任です」

——それっておかしくない? こんな大きいことを県の責任のみでやるの? チェルノブイリのとき、ベラルーシもウクライナも、ヨーロッパ各国も国が主導して健康調査やってましたけど?
 「………」

——本当に、県だけで、健康調査は充分だとお思いですか?
 「…県の主体、なんです…」

——じゃあさ、内部被曝の過去推定も県の責任になる?
 「それは専門家が、放医県や福島県立医科大が入っているでしょう」

——いや、放医県はデータを扱うだけ、福島県立医科大もデータと検査だけですってよ?
 「…では有識者会議が…」

——有識者会議は今、検討中なんでしょ? 県民健康管理チームは外部被曝だけだと言うし、地域医療課は内部被曝の検査を受けさせるだけだ、判断は県民健康管理チームと言うし、放医県や福島医大はデータと検査だけだと言うし、内部被曝の過去推定を責任を持ってやるところはどこですか?
 「………有識者会議?」

 なんで疑問形やねーーーーん!!!

 そして、ミスター100ミリシーベルト、山下教授には現在、広瀬隆さんらによって刑事告発がなされ(福島県の放射線健康リスクアドバイザーとしての不備)、佐藤福島県知事には低線量被曝を無視することについて福島大学から要望書が提出されています。

***

 別ルートの調査で気になることも聞いています。
 行動記録の問診表による県民健康調査の第一の目的は、「県民を安心させること」だそうですよ! ワオ! じゃ、血眼になって内部被曝出したりしないね☆ あんまり検査せず、大丈夫大丈夫って言うよね! けっこう固いルートでこのことを聞いてしまったので恐れおののいています。
 いやー内部被曝の過小評価どころか、内部被曝を調べないおつもりとはね!

 あのね、すさまじく汚染された飯舘をここまで踏みにじるということは、私たちも簡単に踏みにじられるよ? もう、飯舘の、福島だけの問題では全く無いんです。実際に被曝した住民を無視するということは、全国の農産物や水産物の厳しい食品規制なんてするわけないよね!
 飯舘の、福島の住民の方々の健康調査の道筋をきちんと作ることは、この後の日本の体制、何十年の日本の体制の道筋を作ることと同じだと思うのです。そして、私たち一人一人が、そのことを考えられるかどうかにかかってきています。
 クラスの中にいじめがあったとき、みんなで声を上げれるクラスにしようぜ! そうでないと、いつ自分がいじめられるかわかんないしね、みんなで楽しくするほうがよっぽどいいよ、きっと。

【今週の針金】
原発なんて、イルカ!
かわいいイルカちゃんがnukeボールを軽々飛び越えています。
マコちゃんが夢でみましてん!

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相も変わらぬ「たらい回し」っぷりと、
あまりにあからさまな責任逃れ。
「3・11」が私たちに見せつけたのは、
「自分たちだけは安全」なんて場所は、
実はどこにもないのだ、ということでもあったかもしれません。
これはもう、この国に、この社会に生きる私たちすべての問題なのです。

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おしどりプロフィール

マコとケンの夫婦コンビ。横山ホットブラザーズ、横山マコトの弟子。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2003年結成、芸歴は2005年から。
ケンは大阪生まれ、パントマイムや針金やテルミンをあやつる。パントマイムダンサーとしてヨーロッパの劇場をまわる。マコと出会い、ぞっこんになり、芸人に。
マコは神戸生まれ、鳥取大学医学部生命科学科を中退し、東西屋ちんどん通信社に入門。アコーディオン流しを経て芸人に。

ブログ:
 http://oshidori.laff.jp/
twitter:
 マコ:@makomelo
 ケン:@oshidori_ken
その他、news logでもコラムを連載中。

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