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2012-07-11up

癒しの島・沖縄の深層

オカドメノート No.120

官僚の言いなりの野田政権は、解散総選挙で民意を問うべきだ

 永田町は一体どうなっているのか。消費税増税は、自民党、公明党との談合が成立して、衆議院では多数で可決されたが、参議院での可決はまだ見通せない状況だ。自民党の谷垣総裁は、野田政権の解散総選挙と引き換えに消費税増税法案を通過させる腹づもりだったが、野田政権が解散総選挙に応じない可能性もあるためだ。谷垣総裁としては、9月の自民党総裁選に出馬して勝ち残る必要性がある。しかし、9月総裁選までに解散総選挙に追い込めなかったら、谷垣総裁の出馬の目もなくなってしまう。谷垣総裁に政治的リーダーシップがないとして、谷垣下ろしを画策する党内勢力がいるからだ。

 民主党幹部たちの本音は11月総選挙という見方が強い。少なくとも赤字国債発行のための特例公債法案を通過させないと予算の執行が出来なくなる。そのためには自民党の協力が必要だが、それを取り付けないと民主党本体も危うくなる。周知のように、衆議院の消費税増税法案採決において、民主党内から57人が反対票を投じ、棄権・欠席は16名に及んだ。民主党は分裂したも同然だ。3年前に、国民の期待を一身に背負って政権交代を成し遂げた民主党が遂に崩壊したのだ。同時に、「国民の生活が第一」という民主党の政権交代の公約はことごとく、切り捨てられた。消費税増税が悲願だった財務省は、自民党、公明党、野田民主党を巧妙に操り、霞が関の帝王に君臨する道筋をつけた。笑いが止まらないのは財務官僚である。

 国難を抱える中、野田政権は永田町で消費税増税に政治生命を賭けている場合なのか。緊急の課題としては、大飯原発の再稼働問題であり、オスプレイの日本への配備ではないのか。大飯原発の見切り発車の再稼働に対して、反原発デモが盛り上がっている。国会を取り巻くデモ隊は20万人という声も聞かれた。いくら、政府や電力会社が安全を強調しても、今や国民は信じていないのだ。福島第一原発の事故処理も遅々として進まない。原発の中心地は人が住める環境にはなく、最低でも5年間は人が住めない無人の町だ。周辺地域の瓦礫処理も汚染除去も進んでいない。せっかくとれた魚も放射性物質が基準値以上の場合は海にもどすという虚しい作業をやっている。むろん、被災者の生活再建も原発事故による被害の保障も不十分なままに放置されているのが現状だ。
 原発推進派は、いわゆる「原子力ムラ」の住人や原発利権にありつく、財界、経済界、地元自治体が中心である。大飯原発で言えば、おおい町の町長は賛成だが、周辺自治体の滋賀県知事や大阪市長などは再稼働に反対していた。しかし、原発推進の政府に押し切られて、今夏の電力不足を理由に妥協を強いられた。

 しかし、一般の国民からすれば、メルトダウンに至った福島第一原発の惨状を思えば、もはや原発の安全神話は崩壊しており、再生可能エネルギーへの転換を国策として早急に進めるべきというのが、当然の民意だろう。東日本大震災で発生した瓦礫は米国の西海岸まで漂着しており、もはや、日本一国だけの問題ではないのだ。いくら、シロウトの牧野経済産業副大臣が大飯原発の臨界やフル稼働に立ち会ったからと言って何の役にも立たないことは目に見えている。むろん、責任をとる気も一切ない。ミズクラゲの大量出現で、出力をセーブせざるを得なかったなどとメディアは報じているが、大飯原発の地下には活断層がある事をきちんと調査したのか。免震棟もなく、放射性物質放出の際のフィルター設置もやらず、まして周辺自治体の避難経路も決まらないままに、夏場の電力不足という財界筋の意向や電力会社の既得権益を守るための「恫喝」による再稼働なんて認める方がバカげていないか。

 バカげているといえば、オスプレイの配備のやりかたである。いまだ、モロッコやフロリダでの墜落事故の原因も究明されない段階で、米軍はオスプレイ12機を搭載した運搬船をサンディエゴから出発させ、ハワイ、グアム経由で山口県岩国基地に向けて搬送中だ。安全確認のための時間など関係なく、最初から日本への配備ありきの計画である事を暴露したも同然である。すでに、普天間基地に配備されてきたCH46の旧型機を那覇軍港に運び込み、解体の準備を進めたとの情報もある。米軍は何が何でもオスプレイを岩国基地で訓練した後、沖縄全島で飛行訓練するつもりなのだ。いや、沖縄だけではない。日本本島でも複数個所で山間部での訓練飛行する意向を打ちだしている。

 沖縄では普天間基地の辺野古への移設が完全に行き詰まっている。そうした中で、欠陥機であるオスプレイを沖縄全島で飛ばす計画に賛成する県民はいない。米軍があくまでも強行すれば、沖縄は島ぐるみの反米闘争が盛り上がるに違いない。8月5日には全島規模のオスプレイ反対の県民大会が開かれる予定だ。「復帰40年」の間、微動だにしなかった米軍基地に対して、県民の怒りは沸点に達しようとしている。官僚の言いなりでしかない野田政権は、消費税増税も含めて解散総選挙で民意を問うべきである。確実に少数政党に転落するだろうが、それも民意を無視した野田政権の自業自得である。

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オスプレイ配備の問題については、こちらの記事なども参考になります。
沖縄での県民集会は、8月5日(日)に予定されており、
すでに普天間基地前での座り込み抗議行動などもはじまっています。
また、本土での飛行訓練計画もあることから、
「県外と手を結び、反対の声を全国に広げたいとの思いも強い(7月10日沖縄タイムス)」とのこと。
原発が、原発立地の人たちだけの問題ではないように、
これもまた、沖縄に住む人たちだけの問題ではないのです。

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岡留安則さんプロフィール

おかどめ やすのり1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。 HP「ポスト・噂の真相」

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