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2011-06-15up

癒しの島・沖縄の深層

オカドメノート No.102

北沢防衛大臣は、陸軍大臣気取りなのか?

 歴史的な原発事故から3か月。いまだに危機状態にある福島第一原発も民主党菅政権の総辞職の行方も先行き不透明な中で、ここぞとばかり火事場ドロボーのような動きを見せているのが、北沢防衛大臣と防衛省だ。
 北沢大臣は、13日にも県庁を訪ねて仲井真知事に、「辺野古新基地建設はV字型の二本の滑走路で行きたい」「普天間基地には来年からオスプレイを配備したい」と要請した。むろん、知事も反対、宜野湾市長も大反対で座り込み抗議行動までやった。
 いまどき、辺野古に新基地ができると信じている沖縄県民はほとんどいない。かつて、辺野古基地推進派だった前名護市長・島袋吉和と名護防衛協会、地元や本土の大手土建業者、地元の一握りの地元利益誘導派の住民だけである。米国議会の方でも、上院のレビン軍事委員長ですら、辺野古新基地建設は非現実的であるとしている。これまで国防長官だったゲーツ氏の退任に伴い、CIA長官で次期国防長官が内定しているバネッタ氏も辺野古案の見直しを示唆している。 

 北沢防衛大臣の訪沖直前に海上自衛隊のイージス艦「ちょうかい」と潜水艦「わかしお」が那覇市の新港埠頭に接岸するという動きもあった。海上自衛隊の潜水艦が県内の民間港に入港するのは初めての事態である。一方のイージス艦が県内の民間港に入るのは今年3月の石垣港沖合入港以来で、接岸するのは今回が初めてである。防衛省としては、有事の際には沖縄の民間港も海自が自由に使用するための布石づくりのデモンストレーションなのだろう。
 同じことを米軍も昨年あたりから県内の民間港で露骨にやり始めている。日米が合同で有事のための軍事訓練をすることを狙って、着々と県民の軍アレルギーを除去しようという魂胆なのだろう。
 この動きは北沢防衛大臣の沖縄入りにあわせたものらしく、北沢氏もちゃっかり艦艇を表敬訪問していた。この男、何かと勘違いが多いため、ひょっとしたら陸軍大臣気取りなのかもしれない。 

 最近は、鹿児島の馬毛島を米軍の艦載機の練習場にする計画や鳥島の米軍射爆場を硫黄鳥島に移す案も出ている。さらに、現在は民間航空会社がパイロットの訓練場として使っている下地島空港を緊急災害支援センターに向けて日米共同で訓練場に使う案も浮上している。いずれも、防衛省の戦略で、官僚と米国の下僕となり下がった北沢防衛大臣が旗振り役となっている。
 辺野古新基地にしても、いったいどこの誰がV字型滑走路がいいと判断したのか。この問題は辺野古反対派の稲嶺名護市長が当選し、市議会でも新基地反対派が過半数を占めてからというもの、完全に凍結されていたはずだ。名護市だけではない。県知事もかつての容認派から今や反対派に回った。北沢は誰と相談して辺野古の海上にV字型滑走路と一方的に決めたのか。多分、防衛省だろうが、米国でも辺野古新基地には疑問を持ち始めた議員が多い。以前から、筆者は指摘してきたが、辺野古基地を一番欲しがっているのは米軍ではなく日本の自衛隊なのだ。相も変わらず、県民の意思を無視して、上からの官僚目線で沖縄に新基地を押し付ける「安保マフィア」連中の魂胆にはうんざりだ。

 それだけではない。地元選出議員の下地幹郎氏は、辺野古よりも北部に位置する名護市国頭村の安波地区に2500メートルの滑走路をつくり、普天間基地の代替基地にしようという案を画策している。その手口が薄汚いのだ。この案が浮上したのはここ一か月くらいの事だが、手回しがよすぎて怪しいのだ。滑走路の空撮地図や地元の有力者の署名を政府にこっそりと持ち込み、そのあとで安波地区の区民たちに公開した。寝耳に水の区民たちは口々に怒りの声をあげた。一回目の区民集会は、結局大荒れで流会となり、これでこの案は消え去るものと思われた。 

 しかし、6月10日開かれた区民総会で、委任状を含めた賛成派が多数となり、今後、国と交渉することになったという。説得と根回しが功を奏したのだろう。賛成派の頭目は下地氏の後援会幹部で元県議の比嘉勝秀氏。今月21日に予定される2+2の前に下地議員が訪米し、区の同意を得たとして米政府に説明し、2+2を政府案として議題に乗せる作戦なのだという。
 確かに、米国の議員の中にも辺野古案は実現性がないと考えている向きも少なくない。その意味では下地議員を支持する米国議員もいるだろうが、なによりも身内の北沢防衛大臣が「俺の利権を横取りするな」と怒鳴り上げるのではないか。むろん、地元の名護市長も国頭村の村長も反対である。実現性は低いといわざるを得ない。

 しかし、この下地―比嘉ラインの発想は過疎の村の弱みに付け込んで、「沖縄自動車道路の延伸、軍民共用空港で北部振興につながる。土地の値段が何倍にも跳ね上がり、振興策でお金も入る」といいことずくめのアメ話を持ち込む。まるで、過疎の街に原発を誘致する時のようなやり口ではないか。確かに過疎や少子化の問題はある。しかし、それは全国どの地方でも抱えている問題であり、政治や行政、地元自治体が知恵を絞る問題ではないのか。原発も米軍基地も一度決めたら末代まで地元に危険性と犠牲を強いることになることを忘れてはなるまい。基地が決まれば、安波には欠陥機の見方もあるオスプレイが飛び交うだろうし、騒音も多いだろう。最初はゴールドラッシュのように浮かれていても、いずれ福島第一原発のある双葉町のような悲劇の村と化す可能性を忘れてはなるまい。

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住民の頭越しに進められる交渉、
そして「アメとムチ」による押し付け…
まったくの相似形ともいえる「基地」と「原発」。
誰かの私腹を肥やすために、
一部の地域に危険や負担が押し付けられる、
そんな構図にはもう、決別するときでは?

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岡留安則さんプロフィール

おかどめ やすのり1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。 HP「ポスト・噂の真相」

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